クラウドインテグレーション事業部の小谷です。

2025年10月13日〜16日の4日間で開催される「Oracle AI World 2025」に現地参加しています。最新情報を皆さんにお届けするために随時ブログをアップしていきますので、よろしければご覧ください。

今回ご紹介するセッションは、Red Hat OpenShift on Oracle Cloud Infrastructure (OCI) という一貫性のある基盤に、IBMのスケーラブルなAIとインテリジェントな自動化技術を組み合わせることで、企業がイノベーションを加速させつつ、いかにしてレジリエンスを構築できるかが語られました。

セッション名:Ensuring Enterprise Resiliency with Robust Tech Ecosystems

本記事では、このセッションで何が語られたのか、その要点をレポートします。

セッションの概要

このセッションは、Red Hat社のコンテナ基盤「Red Hat OpenShift」をOracle社のクラウド「OCI」上で利用し、そこにIBM社のAIや自動化ソリューションを組み合わせることで、現代の複雑なIT環境における課題をどのように解決できるかを解説するものでした。

インフラ基盤の統一から、具体的なアプリケーションのモダナイゼーション、AI活用まで、3社の技術連携によるメリットが具体的な事例を交えて紹介されました。

本セッションの最も重要なポイントは以下の通りです。

  1. 一貫性のある基盤の提供:Red Hat OpenShiftをOCI上で利用することで、オンプレミスや他のクラウドなど、場所を問わず一貫した開発・運用環境を構築できます 。これにより、スキルの再教育コストを削減し、開発を効率化します 。
  2. コスト効率とパフォーマンス:OCIは、他の主要クラウドと比較して低価格な上、高いパフォーマンスとセキュリティを提供します 。特にデータ転送コストが安価な点は、多くの企業にとって大きなメリットです 。
  3. AIと自動化によるイノベーション:上記の安定した基盤の上で、IBMのAIプラットフォーム「watsonx」などを活用することで、企業のデータに基づいたイノベーションや業務自動化を推進できます 。

セッション内容の詳細

内容は大きく分けて3部構成で紹介されておりました。

第1部:なぜ今、「Red Hat OpenShift」なのか? (Red Hatパート)

セッションの冒頭、Red HatのMark Longwell氏が語ったのは、現代の企業が抱えるIT環境の複雑さでした。

  • 多くの企業では、古くからある「モノリシックなアプリ」と、新しい「マイクロサービス」が混在しています。
  • そこにAI/MLの活用も加わり、システムはますます複雑化しています。
  • 結果として、意図せずオンプレミスとクラウドが混在する「ハイブリッドクラウド」状態になっているのが実情です。
  • この複雑な環境をシンプルにし、どこでも同じようにアプリケーションを開発・運用できるようにする共通基盤、それがRed Hat OpenShiftです。

Red Hat OpenShiftが選ばれる3つの理由

  1. 稼働場所を選ばない:オンプレミス、AWS、Google Cloud、そしてOCIなど、どこで動かしても全く同じ開発・運用を提供します。これにより、開発者はインフラの違いを気にすることなく、アプリケーション開発に集中できます。
  2. VMとコンテナの共存:「KubeVirt」という技術を使うことで、既存の仮想マシン(VM)をコンテナと一緒にRed Hat OpenShift上で管理できます。これにより、「まだコンテナ化できないけれど、管理は一元化したい」というニーズに応えることができます。最近では、Oracle WebLogic ServerもこのOpenShift Virtualizationに対応したそうです 。
  3. オールインワンのプラットフォーム:Red Hat OpenShiftは単なるコンテナ実行環境ではありません。アプリケーションのビルド、管理、ライフサイクル全体をサポートする機能がすべて詰まっています 。

OCI上でOpenShiftを利用する顧客数は、この1年で約7倍に増加しているとのこと 。

第2部:なぜ「OCI上」でOpenShiftを動かすのか? (IBM/Oracleパート)

次に登壇したIBMのKankaya Sengupta氏は、なぜOpenShiftの稼働基盤としてOCIが優れているのかを、具体的な強みを挙げて解説しました。

  1. 圧倒的なコストパフォーマンス:OCIは、コンピューティングやストレージなどの基本的なサービスが非常に低価格です。さらに、多くの企業が頭を悩ませるデータ転送費用が、毎月最初の10TBまで無料という点も大きな魅力です。
  2. 高いパフォーマンスとセキュリティ:OCIは、後発のクラウドだからこそ、旧世代のクラウドの課題を克服すべくゼロから再設計されています。これにより、高いパフォーマンスとセキュリティを実現し 、可用性だけでなくパフォーマンスに関してもSLA(品質保証制度)を提供しています。
  3. ハイブリッドクラウド設計:パブリッククラウドだけでなく、顧客のデータセンター内でOCIを動かせる「Cloud@Customer」など、多彩なデプロイオプションが用意されており、まさにハイブリッドクラウドのために設計されています。

第3部:具体的なユースケース5選

セッションの後半では、この強力なタッグが実現する具体的な共同ソリューションが5つ紹介されました。

  1. watsonx Platform on OCI:IBMのエンタープライズ向けAIプラットフォーム「watsonx」をOCI上で提供します。これにより、OCIの高性能なインフラの上で、信頼性と透明性を備えたAI開発・運用が可能になります 。英国の政府機関での導入事例も進行中とのことです。
  2. watsonx Orchestrate:様々なアプリケーションやツールをAIエージェントとして連携させ、業務プロセスを自動化するプラットフォームです。これをOCI上で動かすことで、Oracleの各種サービスとシームレスに連携した自動化が実現できます。
  3. Intelligent Automation Platform:watsonxやOCIのAIサービスなどを組み合わせ、より柔軟で拡張性の高いAIソリューションを構築するための共通基盤です。これにより、特定のクラウドに縛られないAI開発が可能になります。
  4. VMwareワークロードのモダナイゼーション:近年、コストの問題が浮上しているVMware環境から、OpenShift Virtualization on OCIへワークロードを移行するソリューションです。これにより、コストを最適化しつつ、VMとコンテナを同じ基盤で管理し、クラウドネイティブな開発への道筋をつけることができます。
  5. MaximoアプリケーションのOCI移行事例:企業の資産管理システム「IBM Maximo」を、旧バージョンからコンテナ化された最新バージョンへアップグレードすると同時に、OCI上のOpenShiftへ移行した事例です。このプロジェクトでは、Ashburn(米国東海岸)とPhoenix(米国西海岸)のリージョンをまたいで災害対策(DR)構成を組むことで、極めて高い可用性と事業継続性を実現しています。

まとめ

オンプレ仮想基盤からの移行先としても、Red Hat OpenShift が選択肢として有り、コスト効率に優れたOCIとの相性も良いということが今回のセッションで分かりました。

更にIBMが加わることで、AIの活用や業務自動化といったシステムの効率化も可能となりそうです。

特に以下のような課題を持つ方にとって有効な解決策となりそうです。

  • オンプレミス仮想基盤のコスト増に悩み、クラウドへの移行を検討されている
  • 古い基幹システムをコンテナ化し、クラウドへ移行したい(セッションではMaximoの事例が紹介されました)
  • オンプレミスとクラウドにまたがるIT環境を、効率よく一元管理したい

改めて後日移行パターンについて整理したいと思います。