はじめに

2025年10月28日、アイレット株式会社は「iret tech labo with partners #27 AI とマルチクラウドが熱い!ラスベガスからの最新情報をお届け!Oracle AI World 2025 recap」をオンラインで開催しました。本イベントでは、ラスベガスで開催された「Oracle AI World 2025」の現地の熱気や最新情報を、日本オラクル株式会社の林 徹 様、そしてアイレットのエンジニア4名がお届けしました。本記事では、その模様をレポートします。

本イベントのアーカイブ動画はこちらからご視聴いただけます。

「AI changes everything」:Oracle AI World 2025の全貌

登壇者:日本オラクル株式会社 アライアンス統括 パートナー第四営業本部 本部長 林 徹 様

イベント冒頭、日本オラクル株式会社の林様より、「Oracle AI World 2025」のフィードバックが共有されました。本イベントのテーマは「AI changes everything」。AI がすべてを変えるという力強いメッセージとともに、AI に関する数多くの発表があったことが紹介されました。

特に、AI のフェーズが「トレーニング」から「推論(Reasoning)」へ移行している点が強調されました。その基盤として「Oracle AI Data Platform」が発表され、企業は自社のデータを安全に活用し、イノベーションを加速できると説明がありました。

また、データベース製品も「Oracle AI Database 26ai」へと進化。ベクトル検索をはじめとする AI 機能が強化されています。Oracle のテクノロジーは、オンプレミス、パブリッククラウド(OCI、AWS、Azure、Google Cloud)、「Cloud@Customer」など、あらゆる環境で利用できる「選択肢」を提供し、企業が最適な場所で最新技術を活用できる点が強調されました。

OCI とアイレット:マルチクラウド戦略と OCI 導入の背景

登壇者:執行役員 エンタープライズクラウド事業部 事業部長 服部 章平

続いて、アイレットの服部より、アイレットが描くマルチクラウド戦略と OCI 導入の背景について講演を行いました。

アイレットが OCI の取扱いを本格的に開始した背景として、1.「エンジニアが技術的に魅力を感じ、それによってお客様の課題を解決できること」、2. OCI の機能が拡充され、魅力的なサービスに進化したこと、3. AWS や Google Cloud で培った実績を基に、お客様へ新たな選択肢を提供すべく OCI をクラウド事業の「第3の軸」として採用したと述べました。

また、Oracle AI World でのマルチクラウド関連のアップデートとして、単一契約で複数クラウド上の Oracle サービスを利用できる「Multicloud Universal Credits」や、場所を問わず Oracle のデータを安全に活用できる「Oracle AI Data Platform」「Autonomous AI Lakehouse」を紹介しました。

最後に、アイレットが目指すのは、お客様のニーズにあわせて最適な環境を組み合わせ、システムの継続的な最適化を実現する「真のマルチクラウド」の世界観であると語りました。今後は、クラウド活用支援サービス「cloudpack」において OCI の導入・移行支援を本格化させ、他のプラットフォームと同等のサービス提供を目指します。

Oracle AIの「今」と「これから」:キーノートと最新 AI 技術

登壇者:エンタープライズクラウド事業部 クラウドインテグレーションセクション 磯部 未奈

現地参加した磯部より、Oracle AI の「今」と「これから」をテーマに、キーノートと最新 AI 技術について、現地の熱気と共に語りました。

Oracle CEO のマイク・シシリア氏が登壇したキーノート「Oracle AI: Powering Your Business」では、エネルギー、レンタカー、ホスピタリティ、バイオテクノロジーなど多様な業界での Oracle AI 導入事例が紹介されました。特に、バイオテクノロジー企業が Oracle Database のベクトル検索を活用し、抗生物質の耐性菌特定や検査時間短縮、感染症による死亡率低下まで実現した事例は、AI が人命に関わる社会問題解決に貢献する可能性を示しました。

さらに、専門知識がなくとも AI エージェントをカスタマイズ・新規作成できる開発プラットフォーム「Oracle AI Agent Studio」も紹介。AI が自律的にタスクを遂行するエージェントを容易に導入できるこのサービスは、AI 活用のハードルを大きく下げると期待されます。

OCI 活用術:レガシー脱却からモダンインフラ管理まで

登壇者:エンタープライズクラウド事業部 クラウドインテグレーションセクション チーフ 片山 健太郎

「アイレットが提供する OCI 活用術」と題し、3つの具体的な OCI 活用術を紹介しました。

レガシーの壁を破る「逆転のクラウド移行術」

多くの企業が課題とするレガシーシステムからの脱却について、世界的な通信大手の事例を基に解説。当初7年と予測された大規模移行プロジェクトを、データベース中心のアプローチ、ハイブリッド戦略、そして「移行しない」という積極的な選択により、1年未満で完了させた常識を覆す成果を紹介しました。

AI 時代をリードする「データ&エージェント戦略」

「データを AI ネイティブに」をコンセプトとする「AI Database 26ai」を紹介。類似オブジェクトを検索できる「AI Vector」の進化や、無償のセキュリティツール「Data Safe」による機密データの一元管理など、AI 活用におけるデータセキュリティの重要性を強調しました。

設計に集中できる「モダンインフラ管理術」

Excel の設計書から IaC (Infrastructure as Code) を自動生成する無償ツール「CD3ツールキット」を紹介。Excel テンプレートに設計仕様を入力するだけで、エンタープライズ品質の Terraform コードが自動生成され、エンジニアが本来注力すべき「設計」に集中できる環境を実現します。

Oracle AI Database 26ai:AI 時代のデータベース新標準

登壇者:エンタープライズクラウド事業部 クラウドインテグレーションセクション グループリーダー 髙橋 美沙輝

最後のセッションでは、アイレットの髙橋が「Oracle AI Database 26ai が拓く未来と AI 活用の新潮流」と題し、データベースと AI に関する最新アップデートを詳細に解説しました。

Oracle Database の名称が「Oracle AI Database 26ai」へ変更されたことが発表されました。これは、Oracle が AI 機能を製品戦略の中心に据えていることを明確に示すものです。同様に、「Oracle Autonomous Database」は「Oracle Autonomous AI Database」へ、「Oracle Autonomous Data Warehouse」は「Oracle Autonomous AI Lakehouse」へと名称が変わり、すでに OCI コンソールにも反映されています。

Oracle AI Database 26ai の注目すべき新機能として、以下の3点を紹介しました。

  1. 拡張 AI ベクトル検索機能:従来のベクトル検索を強化し、リレーショナルデータ、テキスト、JSON、ナレッジグラフといった多様なデータ形式とのハイブリッド検索が可能になりました。
  2. AI エージェントのサポート追加:SELECT AI AGENT 構文により、データベース内から直接 AI エージェントを呼び出し、MCP サーバーをサポートできるようになります。
  3. データ・プライバシー・ガバナンスと可観測性の強化:機密データを動的にマスキングするなど、データベース内で高度なセキュリティ、プライバシー、コンプライアンスのルールを適用できます。

さらに、MySQL 関連のアップデートとして、自然言語を SQL 文に変換する「NL2SQL」などの機能を持つ「MySQL AI」が発表されました。MySQL HeatWave の AI 機能とも互換性があり、オンプレミスの MySQL サーバーの有償サブスクリプションとして提供予定です。

おわりに

今回の「iret tech labo with partners #27」では、Oracle AI World 2025 の最新情報を各分野のエキスパートから分かりやすく解説しました。参加者からは、「現地の熱気が伝わってきた」「具体的な活用事例が参考になった」といった声が多数寄せられ、盛況のうちに幕を閉じました。

アイレットは今後も、クラウドに関する最新情報やノウハウを、イベントやブログを通じて発信していきますので、ぜひ次回のイベントにもご期待ください。

本イベントのアーカイブ動画はこちらからご視聴いただけます。