はじめに
2025年10月7日、AWS Service Quotas について自動クォータ管理機能の提供が開始されました。
AWS Service Quotas の自動クォータ管理の一般提供を開始
本日、AWS は、自動クォータ管理と呼ばれる AWS Service Quotas の新機能の一般提供を開始することを発表しました。AWS Service Quotas を使用すると、クォータを一元的に表示および管理できます。この新機能はクォータ使用量を監視し、AWS Service Quotas でサポートされている割り当てクォータがなくなる前にお客様に通知します。これにより、お客様はクォータ使用量の可視化を向上させ、プロアクティブに認識できるようになり、アプリケーションを中断することなくスケールできるようになります。
上記の段階ではまだ「通知のみ」で自動引き上げ機能は公開されていませんでしたが、2025年11月25日、自動引き上げ機能が公開されました。
AWS Service Quotas adds now support for automatic quota management
Today, we’re excited to announce the general availability of new capability of automatic quota management feature in AWS Service Quotas. Today, automatic quota management supports customers to receive notifications when their quota usage approaches their allocated quotas and configure their preferred notifications channel, such as email, SMS, or Slack, through Service Quotas console or API. Now, this feature adjusts values of AWS services’ quotas automatically and safely based on customer’s usage, which reduces operational burden from customers to constantly monitor their quota usage, and request quota increases across multiple AWS services in different AWS accounts and Regions. Customers can now confidently scale their applications on AWS to meet their growing customer demand without the risk of unexpected service interruptions due to quota exhaustion.
クォータを自動で管理してくれるの便利そう!と思ったのでどんなことができるようになったのかを調査し、試してみました。
自動クォータ管理機能とは
AWS Service Quotas とは
まずは AWS Service Quotas とは何かを簡単におさらいします。
- AWS Service Quotas とは、 AWS アカウント内で利用できる各サービスのリソース、アクション、アイテムの上限のこと
- 例 : VPC ごとに作成できるサブネットの数、 Lambda 関数の同時実行数など
- 必要に応じて引き上げをリクエストすることが可能
- デフォルトのクォータ以上にサービスを利用したい場合は、クォータ引き上げをリクエスト
- 承認されればクォータが引き上げられる
- 引き上げ可能なクォータとそうでないクォータがあるため要確認
今回の変更内容 : 何ができるようになったのか?
クォータの引き上げについて、これまでは以下の流れで実施する必要がありました。
- 現在のサービス利用量がクォータに近づいていることを検知
- AWS マネジメントコンソールよりクォータ引き上げをリクエスト
つまり、クォータ引き上げが必要かどうかの判断とクォータ引き上げリクエスト作業をそれぞれ人間が手動で行う必要があったということです。
システムの需要が急増した場合などにこのような人間の判断と作業が必要となるとどうしても対応が遅れることが見込まれます。
今回発表された「自動クォータ管理機能」は、手動で行う必要があったこれらの作業を AWS 側で自動で実施することを可能にしてくれるアップデートです。
自動クォータ管理機能が利用できるサービスについて
今回実装された自動クォータ管理機能ですが、利用できるクォータは限られているようです。
すべての AWS サービスのすべてのクォータについて有効化できるわけではないということは注意が必要ですね。
利用できるクォータがどれなのかについては AWS Service Quotas のコンソールから確認が可能です。
現在利用できる機能について
AWS Service Quotas のコンソールにアクセスしてみると、左ペインに「自動管理」というメニューが追加されています。
自動管理メニューにアクセスし、自動管理機能有効化の手順を見てみたところ、「自動管理モード」という項目がありました。
以下画像は2025年11月20日段階ですが、「通知のみ」しか選べないようで、現在のサービス利用量がクォータに近づいていることを通知してくれる機能のみが利用できるようです。
その後、2025/11/21に確認したところ、「通知と自動調整」が公開されていました!

以下では、「通知のみ」と「通知と自動調整」の両方のモードで設定をして挙動を確認したいと思います。
検証① : 「通知のみ」モードでクォータ上限に達した時に通知が来るのか試してみる
通知設定
まずは自動管理モード : 通知のみで設定した場合に、正しく通知が来るのか試してみます。
サービスクォータのコンソールにアクセスし、左ペインから「自動管理」をクリックします。
「ステップ1 : 自動管理を開始」画面が表示されました。
画像は2025/11/19時点のもので、この時点では自動管理モードは「通知のみ」だけが選べるようになっています。
「通知のみ」を選択し、次へ進みます。
「ステップ2 : 通知設定を適用」画面では、 AWS User Notifications を利用した通知設定について設定を入力していきます。
以下の通り入力しました。
通知先としては E メールアドレス・モバイルデバイス・チャットチャネルが選べるようです。
今回は E メールと Slack に通知を飛ばしてみます。
- 自動管理の通知設定を作成する : 有効化
- 名前 : r-sekiguchi-Health-Service-Quotas
- リージョン : Asia Pacific (Tokyo), US East (N. Virginia)
- Eメール : 自分のメールアドレスを設定
- チャットチャネル : Amazon Q Developer で設定した、 Slack チャネルへの通知設定を選択
「ステップ3 : 例外を選択」の画面が表示されています。
この画面では通知をしないサービスについて例外という形で設定ができるようです。
今回はすべてのサービスを対象にするため、この画面では何も設定せず次に進みます。
「ステップ4 : レビューと確認」画面が表示されるので、内容を確認して「送信」ボタンを押します。
自動管理が正常に開始されたという通知が表示されています。
AWS User Notifications の方でも、通知設定が追加されていることが確認できました。
通知テスト : WAF 正規表現パターン作成
では設定した通りに通知が来るのかについて試してみましょう。
前述の通り、自動クォータ管理機能が利用できるクォータは限られているそうなので、その中からテストに利用するクォータを選びます。
今回は AWS WAF v2 のクォータ : Maximum regex pattern sets per account in WAF for regional (リージョンごとの正規表現セットの最大数) を利用して検証します。
デフォルトではリージョンごとに作成できる正規表現セットの最大数は10となっています。
東京リージョンで正規表現セットを上限の10セット作成し、通知が来るかを確認します。
正規表現セットを10個分、一気に作成してから大体1時間30分後に、 E メールおよび Slack 通知が届きました。
E メール
検証② : 「通知と自動調整」モードでクォータ上限に達した時に通知が来るのか & 自動的にクォータが引き上げられるのか
続いて、自動管理モード : 「通知と自動調整」で設定した場合に、正しく通知が来るのか、そしてクォータが自動的に引き上げられるのか試してみます。
準備 : WAF 正規表現パターン削除
検証②に移る前に、検証①で通知テストのために作成した AWS WAF の正規表現パターンについては全て削除をしておきます。
削除が完了しました。
通知と自動調整を設定
サービスクォータのコンソールにアクセスし、左ペインから「自動管理」をクリックします。
既に自動管理モード : 「通知のみ」で設定しているので、これを「通知と自動調整」に変更して、「更新」をクリックします。
既に「通知のみ」モードで通知設定を完了していたので、モードの変更だけで済みました。
通知テスト & クォータ自動引き上げテスト
では検証①と同様、 AWS WAF の正規表現パターンを上限である10個まで作成して、通知が来るのか・クォータ自動引き上げが行われるのか確認します。
10分ほどで、通知が届きました。
検証①と同様の通知が E メールと Slack にそれぞれ届いています。
ではクォータ自動引き上げが行われたかどうかについて確認します。
サービスクォータのコンソールにアクセスし、左ペインから「クォータリクエスト履歴」をクリックします。
「最近のクォータ増加リクエスト」一覧の中に、Maximum regex pattern sets per account in WAF for regionalがあることが確認できました。
ステータスは「承認済み」となっているので、リクエストがすぐに承認され、クォータが引き上げられたようです。
実際にサービスクォータのコンソールからMaximum regex pattern sets per account in WAF for regionalのクォータ値を確認してみました。
デフォルトでは10だったクォータ値が、11に引き上げられています。
自動管理機能により、自動でクォータ引き上げが行われたことがわかります。
終わりに
自動クォータ管理機能について、通知設定と自動引き上げを検証してみました。
設定も簡単だし引き上げも迅速にできるし、とても便利ですね。
良いアップデートだと感じました。





















