DX開発事業部の前野佑宜です。
AWS re:Invent 2025では、例年通り多数のAI関連サービスアップデートが発表されました。本記事では、re:Invent 2025の開催週(11/30〜12/7)に発表されたAI関連の主要アップデートをサービス別にまとめました。(※re:Inventの開催期間は現地時間12/1-5ですが、前後を含めた期間で集計しています。)
Amazon Bedrock
Amazon Bedrockは、新しいFM(基盤モデル)の追加と、機能の大幅な強化が行われました。
Amazon Novaシリーズとその他のFM(基盤モデル)
- Amazon Nova ForgeがGA(一般提供開始)
- 独自のデータを用いて、Amazon Novaモデルをカスタマイズ(ファインチューニング等)できる機能です。

- 独自のデータを用いて、Amazon Novaモデルをカスタマイズ(ファインチューニング等)できる機能です。
- Amazon Nova 2 SonicがGA(一般提供開始)
- 音声入力に対して超低遅延で音声応答を生成する、会話型AI向けの次世代モデルです。
- Amazon Nova ActがGA(一般提供開始)
- ユーザーインターフェース(UI)操作や複雑なワークフローを自動化するエージェント構築を支援します。

- ユーザーインターフェース(UI)操作や複雑なワークフローを自動化するエージェント構築を支援します。
- Amazon Nova 2 OmniがPreview(プレビュー公開)
- テキスト、画像、動画、音声を入力とし、テキストと画像を生成できる、あらゆるモダリティに対応した万能型マルチモーダルモデルです。

- テキスト、画像、動画、音声を入力とし、テキストと画像を生成できる、あらゆるモダリティに対応した万能型マルチモーダルモデルです。
- Amazon Nova 2 Liteが公開
- 高速かつ低コストで動作し、複雑な推論(Reasoning)やタスク分解が可能な、日常業務に最適な軽量モデルです。
- Bedrock内でOpenAIモデルのResponsesAPIを利用可能に
- OpenAI互換のAPIエンドポイントを通じて、Bedrock上のモデルを利用・管理できるようになります。
- 新しいオープンウェイトモデルの追加
- Mistral Large 3、Ministral 3を含む18種類のフルマネージドオープンウェイトモデルが追加されました。
- Twelve Labsの動画理解モデルがBedrockで利用可能に
機能強化
- Amazon Bedrock Knowledge Basesでマルチモーダル(画像などを含む)な検索が可能に
- テキストだけでなく画像データなども含めたマルチモーダルなRAG(検索拡張生成)システムを構築できます。
- 66のベースモデルに対して、強化学習によるファインチューニング機能が追加され、モデルの振る舞いをより詳細に制御可能に
- 人間のフィードバックに基づく強化学習(RLHF)などを適用し、モデルの振る舞いをより詳細に制御できます。
Amazon Bedrock AgentCore
エージェントAIの中核を担うBedrock AgentCoreには、信頼性と運用のための重要機能が追加されました。
- Amazon Bedrock AgentCore EvaluationsとPolicyが公開(Preview版)
- 信頼できるAIエージェントをデプロイするための品質評価(Evaluations)機能とポリシーコントロール機能がプレビュー版で追加されました。

- 信頼できるAIエージェントをデプロイするための品質評価(Evaluations)機能とポリシーコントロール機能がプレビュー版で追加されました。

- AgentCore Memoryにエピソード記憶の機能が追加
- AgentCoreの実行時にエピソード記憶(Memory)の機能が追加され、より文脈を考慮した対話が可能になります。

- AgentCoreの実行時にエピソード記憶(Memory)の機能が追加され、より文脈を考慮した対話が可能になります。
- AgentCore Runtimeでの双方向ストリーミングがサポート
- ユーザーとエージェントがリアルタイムに情報をやり取りし、割り込み可能な自然な会話を実現します。
Strands Agents
- Strands AgentsのSDKのTypeScript版が一般提供開始(GA)
- TypeScript/JavaScript開発者がワークフロー型エージェントを構築しやすくなりました。リポジトリも公開されています。

- TypeScript/JavaScript開発者がワークフロー型エージェントを構築しやすくなりました。リポジトリも公開されています。
Amazon Connect
Amazon Connectは、コンタクトセンターにおけるエージェント支援、自動応答、顧客体験のパーソナライズをAI/MLで大幅に強化しました。AIを活用した機能が特に集中して発表されています。
AIを活用したエージェント支援・自動化
- エージェント支援機能の強化
- 生成AIが通話内容に基づいて、次に取るべきアクションや解決策をリアルタイムでエージェントに提示します。
- サードパーティの音声認識/音声合成AIモデルが利用可能に
- 独自の要件に合わせて、他社製のSpeech-to-TextおよびText-to-SpeechモデルをConnectのワークフローに組み込めるようになりました。
- AIを活用したケース要約(Case Summaries)機能
- 問い合わせの内容、原因、解決策を含むケースの概要をAIが自動生成し、記録作業を効率化します。
- エージェント主導のチャットワークフロー起動
- エージェントがチャット対応中に、本人確認や決済などの定型プロセス(フロー)を手動で呼び出せるようになりました。
パフォーマンス評価と分析
- カスアムメトリクスの作成が可能に
- ビジネス固有のKPIに合わせて、計算式を用いた独自のメトリクスを定義し、ダッシュボードで追跡できます。
- 評価対象コンタクトの自動選定
- 通話時間や感情スコアなどの条件に基づき、スーパーバイザーが評価すべき重要な通話を自動で抽出します。
- チャット中のデータリダクションとメッセージ処理
- チャットメッセージに含まれる機密情報をリアルタイムで検知・マスキング処理し、セキュリティを強化します。
- AIによる自動Eメール応答機能
- 受信したメールの文脈をAIが解析し、適切な返信案を自動作成または自動送信することで対応時間を短縮します。
- セルフサービス(ボット対応)の自動パフォーマンス評価
- ボットやIVRによる自動応答の品質をAIが評価し、改善ポイントを可視化します。
- 評価機能へのアクセス制御(RBAC)が詳細化
- フォームや評価結果に対する参照・編集権限を、ユーザーやグループごとに細かく設定できるようになりました。
- AIを活用した予測インサイト(Preview)
- 顧客データと対話履歴を分析し、解約リスクや次に提案すべき商品を予測して提示します。
開発・運用・データ管理
- 複数ナレッジベース対応とBedrock連携
- 最大5つのナレッジベースを検索可能になり、Amazon Bedrockのナレッジベースとも直接統合されました。
- マルチチャネル対応のアウトバウンドキャンペーン機能
- 音声、SMS、Eメールを組み合わせた多段階のキャンペーンシナリオを、GUIで簡単に作成できます。
- AIインタラクションのためのストリームメッセージAPI
- AIボットの思考プロセスや途中経過を逐次ストリーミング表示するための新しいメッセージタイプをサポートしました。
- Model Context Protocol (MCP) のサポート
- 生成AIエージェントが外部システムと安全に接続するための標準プロトコル(MCP)に対応しました。
- ネイティブなテスト・シミュレーション機能(Preview)
- 本番環境に影響を与えずに、コンタクトフローやルーティング設定の動作を検証できる機能が追加されました。
- エージェントワークスペースのカスタムUI作成
- ワークスペース内に独自のウィジェットや情報パネルを埋め込み、業務画面を最適化できます。
- Agentic Self-Service(エージェントAIによる自動対応)
- 複雑な用件でも、AIエージェントが自律的に判断・システム操作を行い、完結させる高度なセルフサービス機能です。
- エージェントワークスペースのビジュアルテーマカスタマイズ
- 企業のブランドに合わせて、ワークスペースのロゴや配色(ダークモード等)を変更できるようになりました。
- Amazon Connect Customer Profilesの強化
- AIを用いて顧客データを統合・強化し、より精度の高いパーソナライズを実現します。
Amazon Q
Amazon Qは、開発者やビジネスユーザー向けの生成AIアシスタントですが、今回はメール送信分析に関するアップデートが発表されました。
- SESメール送信アクティビティの分析に対応
- 自然言語で質問するだけで、SESの送信ログからメールの到達率やエラー原因などのインサイトを即座に引き出せます。
Amazon SageMaker
Amazon SageMakerでは、モデル開発・運用を加速する機能と、エージェント開発に役立つ機能が発表されました。
- Amazon SageMaker AIに新しいサーバーレスモデルカスタマイズ機能が公開
- インフラ管理不要で、特定のタスクに合わせて基盤モデル(FM)をファインチューニングできるサーバーレス機能です。

- インフラ管理不要で、特定のタスクに合わせて基盤モデル(FM)をファインチューニングできるサーバーレス機能です。
- Amazon SageMaker HyperPodがCheckpointless Trainingをサポート
- 大規模学習において、定期的なチェックポイント保存(中断用データ保存)の手間と時間を削減し、学習効率を高めます。

- 大規模学習において、定期的なチェックポイント保存(中断用データ保存)の手間と時間を削減し、学習効率を高めます。
- SageMaker CatalogがAIエージェント向けのデータ自動分類に対応
- 非構造化データをAIが解析してメタデータを付与し、エージェントが検索・利用しやすい形に自動整理します。
その他(Frontier エージェントとインフラ)
AmazonのFrontier エージェントの取り組みと、AIインフラに関する重要なアップデートです。
Frontierエージェント
- 自律型エージェント「Autonomous Agent Kiro」の発表
- 曖昧な指示からでもタスクを計画・実行し、問題解決を行う、Amazonが開発した汎用的な自律型エージェントです。
- DevOps Agent (Preview版)が公開
- システムの健全性を監視し、障害発生時には原因特定から修復案の提示までを自律的に行う運用支援エージェントです。
- Security Agent (Preview版)が公開
- 設計段階からデプロイ後まで、アプリケーションのセキュリティリスクを継続的に監視・分析し、対策を提案します。

- 設計段階からデプロイ後まで、アプリケーションのセキュリティリスクを継続的に監視・分析し、対策を提案します。
AIインフラストラクチャ
- AWS AI Factories: 顧客のデータセンターにAWSのAIインフラを提供
- NVIDIAの最新アクセラレーション(Blackwellなど)とAWSのAIサービスを統合したインフラを、顧客のオンプレミス環境に専用構築・運用する新サービスです。

- NVIDIAの最新アクセラレーション(Blackwellなど)とAWSのAIサービスを統合したインフラを、顧客のオンプレミス環境に専用構築・運用する新サービスです。
- Amazon S3 Vectors が一般提供開始(GA)/東京リージョンでも利用可能に
- S3に保存されたデータに対して直接ベクトル検索を実行可能にし、RAG(検索拡張生成)システムの構築を簡素化するS3 VectorがGAされ、プレビュー版と比較してパフォーマンスの向上がされているようです。

- S3に保存されたデータに対して直接ベクトル検索を実行可能にし、RAG(検索拡張生成)システムの構築を簡素化するS3 VectorがGAされ、プレビュー版と比較してパフォーマンスの向上がされているようです。
その他のトピック
- AWS Model Context Protocol (MCP) Serverの発表
- AIモデルが外部データやツールと対話するための標準プロトコル「MCP」に対応したサーバー機能を提供します。
- AWS AI CompetencyにAgentic AIカテゴリが追加
- エージェントAI分野で高い技術力と実績を持つパートナーを認定する新しいカテゴリが新設されました。
- AWS MarketplaceでエージェントモードのAI検索機能が追加
- ユーザーの意図を理解し、最適なソリューションやSaaS製品を対話形式で提案・検索できるようになりました。
- AWS AI League 2026 Championshipの発表
- 賞金総額が5万ドルに倍増し、re:Invent 2026で決勝が行われます。「SageMaker AIによるモデルカスタマイズ」と「Bedrock AgentCoreによるエージェント構築」の2トラックで、実践的なビジネス課題解決スキルを競います。企業向けの社内トーナメント支援(AWSクレジット提供)もあります。(詳細はAWS AI Leagueのページをご覧ください)
まとめと所感
改めてAWS re:Invent 2025で発表された生成AI関連のアップデートの多さに驚きました。
私個人的にはAmazon Bedrock AgentCoreのアップデート(Evaluations機能の公開、Policy機能の公開)が興味深かったです。
発表されたアップデートに関する速報記事についても弊社社員からいくつか公開されておりますので、併せてご覧ください。