アイレット内製化革命」の幕開けから数週間。

副社長・平野 弘紀が掲げた「真のワンストップエンジニアへの進化」と「究極のゼロメンテナンスシステム」という二つの壁に対し、若き精鋭たちは早くもその険しさを痛感することになりました。

第2弾となる今回は、プロジェクトの行方を決定づけた「要件定義の衝突」、エンジニアの悪癖を断ち切る「ドキュメント革命」、そして SaaS ビジネスの常識を覆す「衝撃のコスト試算」の全貌に迫ります。

「データ」か「体験」か。プロジェクトオーナーが下した決断

プロジェクトが詳細な要件定義フェーズに入った第2週。
会議室予約システムの核心部分である「iPad 端末からの突発的な予約(入室処理)」の仕様を巡り、最初の議論が巻き起こりました。

開発メンバーの1人が投げかけたのは、システム開発において永遠の課題とも言える二者択一。

  • ユーザビリティ重視:面倒なログイン操作を省き、ワンタップで予約可能にする。ただし、「誰が」使ったかの個人特定はできない。
  • データ分析重視: 個人認証を必須とし、正確な利用データを蓄積する。ただし、利用者の手間は増える。

「分析基盤としての価値」を優先すべきか、「現場の使い勝手」を取るべきか。

この問いに対し、プロジェクトオーナーであるコーポレート統括本部の三品は即座に、そして明確に方向性を示しました。

「圧倒的にユーザビリティ観点。せっかく作っても、使いづらくて使われなくなったら本末転倒です。
まずはユーザーにとっての『使いやすさ』を最優先のプライオリティに置いてほしい」

まずはユーザーにとっての「使いやすさ」を最優先のプライオリティに置く。
もちろん、将来的なガバナンス強化も見据えた上での、ファーストステップとしての決断です。

このブレない指針が、迷える開発チームの道標となりました。

「パワポ職人になるな」副社長が求めた “AI 時代の” ドキュメント

要件定義の最中、若手メンバーがプロジェクトオーナーの三品に向けた説明資料を作成しました。イラスト素材をあしらった、一見して分かりやすく、親しみやすい PowerPoint 資料です。

しかし、これを見た平野の反応は、予想外に厳しいものでした。

「この資料、非エンジニアのことも考えて作ったんだろうけど、
Mermaid(マーメイド)やシーケンス図(Sequence Diagrams)で既に処理フローは書いてあるんだよね?
なぜそれを使わなかったの?

実はメンバーは、開発用のドキュメントとして Mermaid での記述を済ませていました。にもかかわらず、「会議で説明しやすいように」という配慮から、内容は同じまま、見た目を整えたスライドをわざわざ作り直していたのです。

平野が指摘したのは、この「二度手間」の非合理性です。

PowerPoint で描かれた図は、その場限りの「絵」に過ぎません。しかし、Mermaid のようなテキストベースの記法であれば、Git でバージョン管理ができ、AI が理解してコード生成にも活用できる「生きた仕様書」となります。

既に価値あるアウトプット(Mermaid)があるにもかかわらず、体裁のためだけに時間を浪費する。平野は、日本的な「丁寧な資料作り」の慣習をアップデートし、エンジニアとして徹底的に合理性を追求するよう意識改革を求めたのです。

技術選定という名の「未来への投資」

AI 駆動開発の鉄則に基づき、チームは技術スタックの選定に着手しました。
平野の Google Cloud 拡大戦略に基づいて、インフラにおいては Google Cloud のサービスをフル活用する構成です。

分野 採用技術 選定の狙い
フロントエンド TypeScript, Next.js, Tailwind CSS AI との親和性、高速な環境構築
バックエンド TypeScript フロントとの言語統一による学習コスト・スイッチングコストの最小化
インフラ/DB Cloud Firestore, Cloud Run サーバーレスによる「メンテナンスコスト最小限」の追求
CI/CD GitHub Actions GitOps による一元管理の徹底

特筆すべきは、単に「慣れているから」という理由で技術を選ばなかった点です。

平野は、メンバーが TypeScript によるサーバーサイド開発や Cloud Firestore といったモダンな技術を選択したことに対し、「自分たちの成長と、ビジネス的な価値向上を捉えている」と高く評価しました。

今の自分たちに「できること」ではなく、市場価値を高めるために「やるべきこと」を選ぶ。技術選定のプロセス自体が、彼らにとっての成長機会となっていました。

 月額473円。衝撃的なコスト構造

アーキテクチャが固まりつつある第4週。
プロジェクトメンバーが提出した Google Cloud の運用コスト試算表が、会議室の空気を一変させました。

そこに記されていた月額費用は、わずか473円。

Cloud Firestore などの無料枠やサーバーレスアーキテクチャを徹底的に活用し、アイドリングタイムのコストを極限まで削ぎ落とした、いわば「技術力の結晶」とも言えるインフラ原価です。

 

もちろん、商用の SaaS (例:月額65,000円程度)には手厚いサポートや高度なセキュリティ維持費、開発工数が含まれており、原価だけで比較できるものではありません。

しかし平野は、この圧倒的な低コスト構造に「新しいビジネスの可能性」を確信しました。

「自分たちが培ってきた技術をフル活用すれば、これほどまでにスリムな運営が可能になる。
この『持続可能なコスト構造』こそが、お客様へ提供する価値の源泉になるはずだ」

月額数万円のコストが一般的だった領域に、テクノロジーによる圧倒的な効率化を突きつける。
若き精鋭たちが書こうとしているコードは、単なる社内ツールではなく、市場のあり方さえも問い直す「武器」になろうとしています。

低コストや効率化はあくまで手段。
その先にあるのは、浮いた時間とコストで「次にどんな驚きをユーザーに届けるか」という、クリエイティブな挑戦への渇望なのです。

次回予告

“超本気”のプロジェクトは、ここからが本番です。

圧倒的な低コストと効率性を手に入れたチームの前に、システム開発の深淵が口を開きます。
「自動キャンセル機能」の実装で直面する、顧客体験とデータ整合性のジレンマ。
そして次々と出てくる技術的負債の懸念。

AI と共に走り出した彼らは、この泥沼をどう突破するのでしょうか。

ハッシュタグ #副社長と社内開発 。彼らの軌跡は、このタグに刻まれていくのです。