KDDIアイレットの法務部門による DX の取り組みが、さらに次のフェーズへと進んでいます。
これまで、KDDIアイレットでは「NotebookLM」や「Gemini Enterprise」を使いこなし、契約書レビューの大幅な時間短縮や、特定の担当者しか対応できないという「属人化」の解消を実現してきました。
【法務 DX の成功事例】契約書レビューを数時間→30分に短縮した NotebookLM 活用法
【法務 DX 成功事例】導入2週間で契約書作成を3時間→10分に!Gemini Enterprise の活用術
しかし、KDDIアイレット法務部門の挑戦は「便利な AI ツールを導入して終わり」ではありませんでした。
今回注目するのは、法務業務の「対応時間」をデータでしっかり見える化したダッシュボードの取り組みです。間接部門の業務は、プロセスが見えにくく「ブラックボックス」になりがちですが、アイレットでは自ら「何日・何時間で返すか」というサービス品質保証(SLA)の基準を厳しく再定義しました。
なぜ法務部門は、ここまで自分たちの業務をオープンにするのでしょうか?
その裏にある、社内サービスとしての「プロ意識」と、効率化への挑戦をしっかり評価する KDDIアイレットの組織文化について、引き続き法務・コンプライアンスグループのリーダー 山内 雅典と、この取り組みを戦略的に推進する取締役副社長 平野 弘紀の対談をお届けします。
KDDIアイレット株式会社
取締役副社長 平野 弘紀
法務・コンプライアンスグループ
グループリーダー 山内 雅典
法務の「対応時間」をデータでまるごと可視化
これまで法務部門では、半年間で1.7倍に急増した案件に対応するため、いち早く生成 AI を現場に取り入れてきました。第一弾では NotebookLM を使って、NDA(秘密保持契約)のレビューを15分以内、業務委託契約を30分以内へと短縮し、見落としの防止と属人化の解消を両立できました。
第二弾の Gemini Enterprise 導入も、大きく効果が出ました。社内のマニュアルや過去の事例を Google Drive 上に整備し、参照させることで、数時間かかっていた調査や回答の作成が、たった数分で終わるようになりました。
法務のプロンプトベースの試験運用を踏まえて、専用のエージェントを作成しました。参照させる情報を限定したり、回答にあたっての観点などをチューニングして、法務が複雑なプロンプトを使わずとも精度の高い回答を実現しています。
はい。こうした取り組みを通じて実感したのは、「AI は単なる時短ツールではなく、本当に大切な法的リスクにしっかり向き合うための『余裕』を作ってくれるものだ」ということです。
そこで次のステップとして取り組んだのが、私たちの対応時間をしっかり分析することでした。実は、今回使用している分析ダッシュボードは、平野さんに作っていただいたんですよね。
そうなんです。法務チェックの起票、課題管理を担っている「Backlog」からデータを取得し、BI ツールの「Looker」で可視化する仕組みを構築しました。依頼の発生から法務の対応完了までのステータス遷移の時間を、1分単位で算出しています。
平野さんが作ってくださったおかげで、あえて「他部署の確認待ち」の時間を除いた「法務担当がアサインされ、起案者へレビュー結果を戻すまでの時間」だけを正確に抽出できました。これで、法務の本当のパフォーマンスが可視化されました。
一般的に、法務チェックのような専門性の高い間接部門の業務は「時間がかかりそう」と思われがちで、中身が見えにくいブラックボックスになりやすい傾向があると考えます。KDDIアイレットでも、AI による効率化が普及する前の古い SLA が残っていました。当時は、退職などによる人的リソースの変化や、イレギュラーな案件への対応を考えると、どうしても万全を期すために「安全バッファ」をもたせざるを得ない背景があったんです。
メンバー全員、常に「ASAP(最短)」で動いてはいたのですが、リソース不足や優先順位の変更が起きるリスクを考えると、公式な SLA を短縮するのはなかなか勇気がいることでした。
そこを今回、AI が非常に高い信頼性で生産性を引き上げてくれたことで、ようやくそのバッファを削り、実態に合わせて SLA を更新する決断ができました。Looker によるダッシュボードで対応時間をオープンにしたのは、単に自分たちを追い込むためではなく、AI という強力な武器を得たことで、「言い訳のいらない、攻めの法務」へと進化できた証だと思っています。この透明性の高さこそが、組織の意識を高める施策になると考えています。
新たな SLA。なぜ「不透明な納期」をなくしたのか?
世の中の風潮として、納期に過剰なバッファ(余裕)を持たせておくことが多いと思いますが、私たちはあえてそのバッファをなくし、レスポンスのルール(SLA)を再定義しました。法務のスピードは、事業のスピードに直結すると考えています。私たちがチェックで3日立ち止まれば、営業の受注も3日遅れてしまい、会社の損失になりますから。
実際、どのくらい時間を短縮したんですか?
契約書の種類や状況に合わせて、思い切って目標日数をこれまでの半分に設定し直しました。AI の活用によって、従来の2倍のスピードで対応できる体制が整ったからです。
素晴らしいですね。ただ、スピードが上がったからといって、無秩序に何でもすぐ対応できるというわけではないですよね。
おっしゃる通りです。実は、この新しい SLA の運用開始と同時に、社内へ向けて「至急依頼へのルール遵守」の強いアナウンスも出しました。
AI の導入等で審査スピード自体は向上していますが、SLA を度外視した「当日中の確認」といったルール外の割り込み対応を行うと、適正に依頼を出している他の案件の優先順位を強制的に下げることになります。それは結果として、全体の SLA 達成を不可能にする最大の要因となります。
また、「法務が提示したドラフトを無視し、独断で見積書・発注書へ切り替えて進行する行為は、会社を致命的なリスクに晒すため厳禁です」というメッセージも伝えました。スピードは最速を目指しつつも、守るべき秩序(事故らないためのルール)は絶対におろそかにしないという方針です。
これは他社の法務部門の方々も、すごく共感されるポイントだと思います。全体の生産性を守るためには、全社でのルールの徹底が不可欠ですからね。こうした自己規律の高さとガバナンスの強化は、KDDIアイレットという会社のカルチャーがないと成り立ちません。KDDIアイレットでは、間接部門であってもその成果や効率化への挑戦をフラットに評価する土壌がありますから。
本当にその通りです。「忙しく動き回っていること」が評価されるのではなく、「仕組みで仕事を回し、価値を最大化させていること」を副社長自らが評価してくれるからこそ、私たちも思い切った挑戦ができています。
私がダッシュボードを作ったのも、エンジニアとして「シンプルに落とし込む思考」が重要だと考えているからです。また法務のパフォーマンスを成果として評価につなげることができます。法務が AI やデータ分析ツールを使いこなし、データドリブンな運営を体現する「DX のトップランナー」に進化してくれたことを嬉しく思います。
効率化の先へ!法務が描く未来
法務の DX は、単なるコスト削減ではありません。創出された時間は、より高度な法的戦略や、トラブルの未然防止、現場への深いサポートに投資していきます。
はい。今回、データを可視化していただいたことで、次の課題がはっきり見えました。AI に任せられるところは任せて、私たちはもっと速くなれるし、もっとクリエイティブになれると考えています。
素晴らしいですね。KDDIアイレットでは「ただ忙しい状態」を良しとしません。こうやって経営層と現場が連携して、仕組みで課題を解決していく姿勢こそが、まさに私たちが目指す働き方です。
ありがとうございます!これからも現場の声を聞きながら、より頼られる法務部門を作っていきます。
期待しています。法務部門のこうした「攻め」の姿勢は、絶対に KDDIアイレット全体の成長を引っ張る強力なエンジンになっていくはずです。
法務・コンプライアンスグループ メンバーの声 前回の第二弾の記事でお約束していた通り、グループメンバーたちのリアルな感想を聞いてみました!
「今まで急ぎの対応など、事業部に寄り添って柔軟に対応していた努力に対して評価を受けることが難しかったのですが、可視化されることで、モチベーションアップに繋がりました。」
「営業メンバーから対応時間が大幅に早くなったことに対して感謝されました。AI 活用、見える化により満足度が上がっています。」
「AI を使うことによって、ダブルチェックの相手を AI にできます。そのため人間一人で対応できることが多くなりました。外部の弁護士に相談するときもまずは案件の概要をまとめるのも意外と時間を取られていたのですが、割とすぐに相談できるスキームになりました。」
「新しいキャンペーン、新しいサービスについて、どこから手を付けたらというところが、AI にまずは相談してヒントを得て、その後に弁護士に相談できるので、早さと正確さが良くなったと感じています。」
編集後記 今回は、データ分析と SLA 再定義による「脱・ブラックボックス」への挑戦をご紹介しました。
副社長自らがダッシュボードを構築し、現場の成果をフラットに評価する。このスピード感と技術力こそが KDDIアイレットの強みだと改めて実感しました!
AI で生まれた時間を、より価値の高い業務や働きやすさに還元していく。この好循環を、これからも KDDIアイレットは追求していきます。Gemini Enterprise や NotebookLM などの生成 AI 導入についても、ぜひお気軽にご相談ください!
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