こんにちは!広報の羽鳥です。

本日まで、幕張メッセで開催中の AWS Summit Japan 2026 に参加してきました!
いや〜話題にもなってましたが、私25日(木)朝9時半に海浜幕張駅に到着しまして、小雨の中1時間半待ちました😭

自社のスポンサーセッション開始10分前にやっと会場に入れて猛ダッシュ!
ギリギリで間に合いました!(だがしかし、足は完全に終わりました)

それほど今年の AWS Summit は注目度が高かったということで、
本記事では、弊社 KDDIアイレットの中野 葉月と、大阪大学の山田教授が一緒に登壇した KDDIアイレットのスポンサーセッションについてレポートします!

セッション基本情報
セッションタイトル:「AI 駆動開発×セキュアな医療インフラ ー技術が叶える、データの民主化ー

登壇者:

  • 中野 葉月(KDDIアイレット株式会社 gaipack本部 AIDD技術部 部長)
  • 山田 憲嗣 氏(大阪大学 国際医工情報センター共同研究部門 特任教授)

 

「あなたの血液検査データ、今すぐ出せますか?」

セッションの冒頭、中野はこう問いかけました。

皆さん、どうでしょうか?
紙ならあるかもしれない。でも「データで出して」と言われたら出せないですよね。(私は出せません)

自分の体のデータなのに、自分で管理できていない。

言われてみると「確かに!」なんですが、普段はあまり気にしていないことだと思います。
私もまったく意識していませんでした。

実は「みんな困っている」医療データの問題

私たち患者側の困りごと

  • 血液検査の結果は紙でもらうだけ。スマホに入っていたりはしない
  • 別の病院を受診するとき、レントゲン画像などを CD-R に焼いて持っていく必要がある(しかもその手数料は自己負担!)
  • 家族が複数の病院に通っていても、データをまとめて見る方法がない

(病院ごとに診察券がバラバラなの、地味にストレスですよね……)

病院側も実は困っている

意外だったのが、病院側もデータの管理が難しいということ。

  • 患者さんの数 × 診療履歴で、データがどんどん膨れ上がり、管理コストが大変
  • もし取り扱いミスが起きたら、病院が全責任を負わなければならない
  • 患者さんにデータを返したいと思っても、返す仕組みがそもそもない

つまり、患者も管理できないし、病院も管理が難しい。誰も得していない状態なんです。

研究にもブレーキがかかっている

もう一つ深刻なのが、医療データを研究に使いたくても使えないという問題です。

医療データを研究に活用するには、患者さん一人ひとりの同意が必要です。

でもその同意は紙や対面でしか取れない仕組みなので、数百〜数千人分を集めるのがとても大変。結果として、研究に必要なデータが足りず、新しい治療法や医療アプリの開発が進まない……という悪循環が起きています。

実際、「SaMD」と呼ばれる医療アプリ(※スマホアプリのように動く医療機器プログラムのこと)の開発で、日本は世界から大きく遅れをとっています。臨床試験の登録数で比べると、アメリカが1,006件に対して日本はたったの23件。この差の背景にあるのが、まさにこの「同意の壁」なんです。

大阪大学発ベンチャーが挑む、医療プラットフォーム

ここからは山田教授にご登壇いただきました。

AIBTRUST株式会社様は、大阪大学発のベンチャー企業。「医療データの流通で日本の医療の発展を支える」をミッションに、この問題に正面から取り組んでいます。

 

患者向けアプリ「メディレコ」ってどんなもの?

ひとことで言うと、「自分と家族の医療情報をスマホでまとめて管理できるアプリ」 です。

  • 複数の病院の診察券・予約・検査結果をひとつのアプリで管理できる
  • 親子機能があるので、お子さんやご両親の通院データも一緒に管理できる(これ、子育て中の身としてはめちゃくちゃありがたい……!)
  • ブロックチェーンという技術でデータの改ざんを防止(後で詳しく説明します)
  • マイナンバーカードで本人確認ができる

医療スタッフ向け「ヘルスインタビュー」

病院のスタッフさん向けのシステムもあります。こちらは AI が問診やカルテ作成をサポートしてくれるもの。過去の診療情報やガイドラインをもとに、AI が最適な治療方針を提案してくれる機能もあるそうです。

「ダイナミックコンセント」と「ブロックチェーン」って何?

ここが今回のセッションの重要な部分です。専門用語が出てきますが、できるだけわかりやすくお伝えしますね!

ダイナミックコンセント=「その都度、自分で決められる同意のしくみ」

従来の同意は、病院で紙に一度サインしたらおしまい。どこでどう使われるか、後から変えることもできません。

ダイナミックコンセント は、スマホなどからいつでも「この先生にはデータを出していいよ」「この研究には使ってOK」と自分で選べる仕組みのことです。

山田教授は「病院が持っているデータを、個人にそれぞれ返す。そして、自分の判断でデータの提供先を選べるようにする」と説明していました。

データの主導権が病院ではなく自分に移る——これが「データの民主化」という言葉の意味なんですね。

ブロックチェーン=「誰にも書き換えられない記録のしくみ」

「ブロックチェーン」という言葉は聞いたことがある方も多いかもしれません。

簡単に言うと、一度記録したデータを、あとから誰にも書き換えられないようにする技術です。

でも、ここでのポイントは「お金」ではなく「AI の行動記録」に使っているということ。

なぜブロックチェーンが必要なの?

山田教授はこう説明しました。

患者さんがスマホで「この研究にデータを使っていいよ」と同意したとしても、AI が本当にその許可された範囲だけでデータを使ったのか、それを証明できなければ、本当の信頼とは言えません。

つまり、同意を取るだけでは不十分で、「AI がちゃんとルール通りに動いたよ」という証拠を残し、その証拠を誰にも改ざんできない状態にすることが必要なんです。

山田教授は信頼を確立するために4つのステップが必要だと話しました。

 

  1. 同意の確認 — 患者さんが本当に OK したかを AI が把握する
  2. AI の動作チェック — AI が正しく動いているかを確認する
  3. 記録を残す — どのデータを、何のために、どう使ったかを正確に記録する
  4. 記録をロックする — その記録をブロックチェーンで書き換え不可能にする

この4つが揃って初めて、医療データを安心して活用できるエコシステム(仕組み全体)が完成するというわけです。

山田教授は「データが正しく活用されれば、新しい治療法が開発され、救われる命がもっともっとたくさんある」と力強く語っていました。ここは会場でもグッときたポイントでした ✨

ちなみに、AIBTRUST株式会社様ではこの仕組みの実証実験はすでに完了しており、実際の導入フェーズに入っているとのこと!

山田教授、ご登壇ありがとうございました!

AI を「安全に使い続ける」ための管理体制

ここからは再び KDDIアイレット・中野のパートです。

「AI を導入しました!便利ですね!」で終わりではなく、安全に使い続けるための体制をどう作るのかという話です。この体制のことを「AIMS(AI マネジメントシステム)」と呼んでいます。簡単に言うと、AI の使い方を組織としてきちんと管理・運用するための仕組みのことです。

ISO/IEC 42001 って何?

KDDIアイレットでは、「ISO/IEC 42001」という国際規格を取得しています。

これは何かというと、「うちの会社は AI をちゃんと管理して使っていますよ」ということを、国際的な基準で証明するものです。ISO は品質管理やセキュリティの規格で有名ですが、その AI 版だと思っていただくとわかりやすいです。

AI は「使い始めたら終わり」じゃない

中野が強調していたのは、AI は導入して終わりではなく、ずっと面倒を見続ける必要があるということ。

なぜかというと、AI は学習データやモデルが更新されるたびに動き方が変わるからです。最初は正しく動いていても、時間が経つと精度が落ちたり、想定外の動きをすることがあります。

そこで、KDDIアイレットでは以下の4つのサイクルを継続的に回しています。

やること ざっくり言うと
記録 AI に誰が何を聞いて、何が返ってきたかを全部残す
評価 記録をもとに、AI がちゃんと動いているかチェックする
改善 問題があればルールや仕組みを見直す
説明・統制 「なぜこの AI をこう使っているか」をいつでも説明できる状態を保つ

 

開発で使う AI にも同じルールを適用

ここも面白かったポイントです。

普通は「サービスとして動いている AI」の管理を考えがちですが、KDDIアイレットでは開発の現場でエンジニアが使う AI にも同じ管理基準を適用しています。

中野は「業務で動く AI に対して責任を持つだけではガバナンス(管理・統制)が効いているとは言えない。開発で使う AI にも同じ物差しを当てることで、『速く作る』と『安全に作る』を両立させている」と説明していました。

具体的には、すべての AI エージェント(AI が自動で作業してくれる仕組み)の動きを自動で記録し、分析・可視化する基盤を構築。さらに、開発者が迷わず安全な手順で開発できるよう、社内ポータルサイトにプロセスやテンプレートをまとめているとのこと。

AI が運用保守も自動化! 工数63%削減の衝撃

そもそも「運用保守」って?

システムは作って終わりではなく、動かし続けるためのメンテナンス作業(=運用保守)が日々発生します。

エラーの検知、原因の調査、修正の対応・・・これらを人の手で行なうと、とにかく時間がかかります。
しかも夜間や休日にも対応が必要なことも。

AI エージェントが自動で対応

今回の事例では、Frontier Agents というサービスを使い、この運用保守を AI に任せる仕組みを構築しています。

ざっくりした流れはこうです。

  1. 検知 — システムに問題が起きたら自動で検知する
  2. 分析 — AI が原因を調べて、根本原因の分析レポートを作る
  3. 修正案の作成 — AI がコードの修正案を作り、自動で提出する
  4. 人間が最終チェック — 最後は人間が確認して OK を出す

完全にお任せではなく、最終判断は人間が行なうという設計になっているのが安心ポイントです。

結果がすごい

人手で対応した場合 AI 活用時 削減
調査(411件) 約411時間 約154時間 約257時間
起票(411件) 約68時間 約32時間 約36時間
PR(修正案)作成(326件) 約163時間 約52時間 約111時間
合計 約643時間/月 約238時間/月 約405時間/月

各数値は四捨五入しているため合計と一致しない場合があります

月に約405時間(約51人日分!)の削減。削減率は約63%です。
51人日って、ほぼ2.5人分の仕事量ですよね。それが AI で自動化されるというのは衝撃的でした 👀

開発期間も大幅に短縮

さらに驚いたのが、ヘルスインタビュー/メディレコの開発期間です。

  • もともと24ヶ月(2年!)かけて作られていたシステムを、多くの機能を追加した上で約5ヶ月で再構築
  • 開発チームの人数も、以前の平均から約50%削減

KDDIアイレットが提供する AI 統合ソリューション群「gaipack」の活用による AI 駆動開発の効果が、数字にしっかり表れています。

セッションのまとめ

最後に、中野がセッション全体を3つのポイントにまとめました。

① 医療データの民主化

ダイナミックコンセント(自分で決められる同意の仕組み)とブロックチェーン(書き換えられない記録技術)で、データの主導権を患者さんに返す

② AIMS 準拠の管理体制

AI の導入時だけでなく、使い続ける限りずっと、記録・評価・改善・説明のサイクルを回す。開発で使う AI にも同じ基準を適用。

③ AI による運用保守の自動化

AI エージェントに任せられる部分は AI に任せ、人的リソースをより価値の高い領域に回す。結果として工数を約63%削減。

中野は「同意の壁を超え、医療データの民主化を実現し、医療の現場に安心して AI を届けることで、SaMD 開発が遅れる根因を取り除く」とセッションを締めくくりました。

聞き終えて感じたこと

正直、「医療 × AI× ブロックチェーン」と聞くと、難しい話かなと思っていました。

でも、「自分の血液検査データ、出せますか?」という問いかけで一気に自分ごとになりましたし、データの主権が自分にないという現実に気づかされました。

そして、「AI を安全に使い続ける」ための管理体制や、「速く作る」と「安全に作る」を両立させる gaipack の考え方は、医療分野に限らず、あらゆる業界に通じるものだと感じました。

技術の力で「医療データが適切に活用される未来」が、もうすぐそこまで来ている。
そんなことを感じさせてくれるセッションでした ✨

KDDIアイレットでは今年もたくさんの AWS Summit Japan 2026 のレポート記事を公開中です!
ぜひチェックしてくださいね!

KDDIアイレットエンジニアが見た・聴いた・感じた AWS の最前線

それでは最後までお読みいただきありがとうございました!


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