今年も東京ビッグサイトで開催された「Google Cloud Next Tokyo 2026」に参加してきましたので、セッションをご紹介いたします。
セッション概要
タイトル:GenMedia 最新アップデートと、SUUMO・KANAMEL の画像・映像生成事例
スピーカー:段野 祐一郎 氏(Google Cloud)、友近 圭汰 氏(株式会社リクルート)、原田 脩平 氏(株式会社AOI Pro.)
Google Cloud の GenMedia(Veo、Nano Banana 等) の最新動向を解説します。さらに先進事例として、リクルート社の SUUMO における Nano Banana を用いた住宅画像生成と、KANAMEL グループの Gen MediaAI を活用した事例をご紹介します。
GenMediaの最新アップデート

Agent Platform上では、テキスト・画像・動画・音声・音楽といった様々な生成AIモデルを統合的に利用できます。各モダリティに最適なモデルが提供されているため、エージェントが用途に応じてこれらを組み合わせることにより、マルチモーダルなコンテンツを1つのプラットフォーム上で生成し、柔軟に活用できるようになります。
私自身も最近、作業に集中するためのBGMをAIと壁打ちしながら作ってもらい、その音楽を聴きながら作業をするなど、日常的にマルチモーダルの恩恵を感じています。

映像制作においても、企画から素材生成・撮影・編集・ローカライズといった様々な制作工程がありますが、それぞれの工程に適したモデルを使用することにより、制作フロー全体を効率化しています。各モデルは競合するものではなく、それぞれの強みを活かして補完し合い、1本のCM制作を支える構成となっています。
本セッションでは、その中でも画像生成の「Nano Banana」、動画生成の「Veo」、そして対話型の動画編集・ローカライズを担う「Gemini Omni Flash」について紹介されました。
画像生成・編集AI: Nano Banana
まずは、画像生成・編集モデル「Nano Banana」です。
Nano Bananaは、単に画像を生成するだけでなく、自然言語による指示で配色や背景、被写体などを編集できることが特徴です。
例えば、女性が電話をしているクローズアップ画像を生成した後、「背景をブルックリンの屋上に変更」「鏡で自撮りする女性に変更」といった指示を追加するだけで、それまでの編集内容を維持したまま段階的に画像を修正できます。
このように、1枚の画像に対して複数回にわたり編集を重ねられる「マルチターン編集」にも対応しているため、完成イメージが固まっていない段階でも、AIと対話をしながらアイデアをブラッシュアップすることができます。

また、2026年6月30日には「Nano Banana 2 Lite」が新たに発表されました。
従来モデルのような4K画像生成には対応していないものの、その分高速かつ低コストなモデルとなっています。わずか4秒程度で画像を生成できることに加え、1K画像1枚あたり約0.034ドルとコストも抑えられているため、大量の画像を生成したいケースに適しています。
一方で、複数の参照画像を用いた編集やマルチターンでの連続編集には最適化されておらず、シンプルな画像生成を高速に行いたいケースに向いています。
品質を重視する「Nano Banana Pro」、品質・速度・コストのバランスに優れた「Nano Banana 2」、速度・低コストを重視する「Nano Banana 2 Lite」の3つのモデルを用途に応じて使い分けることにより、目的に合った画像生成・編集を効率的に行うことができます。
動画生成AI: Veo
続いて、動画生成モデル「Veo」です。
Veoは、テキストや画像(※最大3枚)を入力として、映像と音声が完全に同期された動画を生成したり、開始画像と終了画像からその間の動きをAIが自然に補間した動画を生成したりすることができます。

また、2026年3月31日には「Veo 3.1 Lite」が新たに発表されました。
4Kや参照画像には対応していないものの、その分高速かつ低コストなモデルとなっています。1秒あたり0.05ドルとコストも抑えられているため、大量の動画を生成したいケースに適しています。
品質を重視する「Veo 3.1」、バランスに優れた「Veo 3.1 Fast」、速度・低コストを重視する「Veo 3.1 Lite」の3つのモデルを使い分けることで、効率的な動画生成が可能です。
動画生成・編集AI: Gemini Omni Flash
そして、2026年5月19日に発表された動画生成・編集モデル「Gemini Omni Flash」です。
Gemini Omni Flashは、テキスト・画像・動画・音声などの様々な入力から動画を生成・編集できる、革新的なマルチモーダルモデルです。単に見た目を変えるだけでなく、物理法則や周囲の環境との整合性を担保しながらシミュレーションできることが特徴です。
また、Veoが主に「高品質な動画を生成する」モデルであるのに対し、Gemini Omni Flashでは「対話形式で動画を編集する」ことに長けています。自身が撮影した動画をベースに、チャットのやり取りを通じて背景の変更や演出の追加など、自由に動画をブラッシュアップできる点が従来のモデルとの大きな違いです。
AIが単なるツールではなく、クリエイティブ制作を支えるパートナーへと進化していることを実感する内容でした。
では、こうしたモデルは実際にどのような場面で活用されているのでしょうか。
活用事例: SUUMO 「おうちメーカー」
まずは、住宅・不動産マッチングサービス「SUUMO」での生成AI活用事例です。
皆さんも物件探しで一度は使ったことがあるのではないでしょうか。

今回紹介された「SUUMO おうちメーカー」は、注文住宅を検討しているユーザーが持つ「こんな家に住みたい」という漠然としたイメージをAIによって言語化・可視化するサービスです。
私自身、インテリアを見たり「将来はこんな家に住みたい」と想像したりするのが好きなので、自分のイメージを具体的な形にしてくれるこのサービスはとてもワクワクしますし、実際に使ってみたいと感じました。

店舗で住宅アドバイザーと相談する際には、その会話内容をリアルタイムで音声解析し、AIが理想の住まいをビジュアル化してくれます。一方アプリ版では、約9,000件の実例データから気に入った住宅の外観や内観イメージを集め、それをもとにAIが自分好みのプランを提案してくれます。
生成されたイメージはそれで終わりではなく、「階段を追加したい」「壁の色を変えたい」といった編集リクエストにも対応可能です。その際、構造そのものを変更するような高度な推論には「Nano Banana」を使用し、壁の色の変更のような比較的シンプルな処理には「OSSモデル」を使用するなど、処理パターンに応じてAIモデルを使い分けるハイブリッドな構成になっており、品質・速度・コストの最適なバランスを取っている点が非常に興味深かったです。

また、AIを組み込む際の工夫についても、4つ紹介されました。中でも、画像ごとに個別で推論を行うのではなく、1回の推論で複数の画像を生成することにより、AIへのリクエスト回数とトークン数を大幅に削減している点が印象的でした。
- Nano BananaとOSSモデルを組み合わせた高速化・コスト効率化
- Provisioned Throughput導入による高い可用性を実現
- 著作権対策としてガードレールを構築
- 4K画像で複数画像を一括生成し、トークンコストを削減
モデルの性能を追求するだけでなく、どうすれば実サービスとして安定して提供できるかという運用面やコスト面まで綿密に設計することの重要性を改めて認識しました。
活用事例: KANAMEL 「こま撮りアニメ」
続いて、「KANAMEL」グループの生成AI活用事例です。
膨大な時間と労力がかかる、こま撮りアニメ制作において、Geminiを活用してクリエイターを支援する取り組みが紹介されました。

こま撮りアニメは、1日に撮影できる尺が5~6秒程度と、非常に多くの工数と制作負荷がかかります。そこで、「デザイン画像からの立体化」「形状と質感の調整」「世界観を広げるための素材制作」にAIを活用し、制作プロセスを効率化させました。
制作を進める中で、作り手が予想しなかった面白い解釈の素材がAIから提案されることがあり、その想定外のアウトプットからクリエイターが新たなインスピレーションを受け、さらに斬新なアイデアが生まれるという、相乗効果が生まれていると語られていました。
また、AIに仕事を奪われるのではなく、AIはクリエイターの情熱に応えてくれるツールと表現されていたことも印象的で、AIと人間がお互いに協調しながら新たな価値を生み出していく、温かい未来を感じる事例でした。
おわりに
本セッションを通じて、次々に登場する新たなモデルの動向を継続的にキャッチアップし、要件やユースケースに応じて最適なモデルを取捨選択・検証していくことの重要性を改めて実感しました。また、単にAIを活用するだけでなく、実運用を見据えたアーキテクチャ設計や、複数のモデルを適切に組み合わせて価値を最大化する設計力が求められることを感じました。最先端の技術をいかにして安定したシステムやユーザー体験へとつなげるかという視点は非常に刺激を受ける内容でした。
会場にはセッションの他にも、様々な分野でAIを活用した展示や体験が用意されていました。私はAIがトレーニングフォームをリアルタイムで解析し、正しい姿勢で運動できているかをチェックする体験をしました。「サボテンパルス」というトレーニングに挑戦し、トレーニング終了後にAIから「パルスの高さはやや高めでしたが、肩の左右のバランスや動きの均等さは良好でした」といった具体的なフィードバックをもらいました。トレーニングはフォームが崩れたまま続けてしまうと、十分な効果が得られないだけでなく、体を痛める原因にもなり得るため、今後こうした機能が身近なアプリとして利用できるようになれば、ジムや自宅でもAIが専属トレーナーのようにリアルタイムでフォームをチェックしてくれ、より安心かつ効果的にトレーニングを続けられると感じました。今後、AIと人間が協調してどのような新しいサービスや体験が生まれていくのか、これからの未来にますます期待が膨らむイベントでした。