この記事のポイント

  • Microsoft MVPとは何かが分かる
  • Microsoft MVPになるまでの道のりが分かる
  • MVPとしての3年間の学びが分かる
  • 今後の活動方針が分かる
  • 筆者にとってのMicrosoft MVPとはあるサイクルを回すこと

はじめに

最初にMicrosoft MVPを受賞してから3年が経ちました。
3度目となると、単純に「今年も受賞しました」という記事を書くよりも、この3年間で何をしてきたのか、何を考えてきたのか、そしてMicrosoft MVPという活動を通して自分自身がどう変わったのかを一度整理してみたいと思うようになりました。

※内容としては個人の活動がメインなので社内の人もおそらく知らないであろう筆者のアナザーストーリーになっていると思います。笑

そこで今回は3年間のMicrosoft MVPとしての活動を振り返ってみたいと思います。

  • Microsoft MVPとは何か
  • Microsoft MVPになるまでに何をしてきたのか
  • MVPとして過ごした3年間で何を意識してきたのか
  • 4年目、5年目に何をしていきたいのか
  • 自分にとってMicrosoft MVPとは何なのか

参考:Kento Yamada – Most Valuable Professionals

※ 本記事は筆者の個人的な経験に基づくものであり、Microsoftの公式見解を示すものではありません。

Microsoft MVPとは

まず、知らない人のために説明しておくとMicrosoft MVPはMicrosoft Most Valuable Professionalの略称です。

MicrosoftではMVPを、技術的な専門知識を持ち、周囲へポジティブな影響を与え、最先端のテクノロジーを使って現実の課題に取り組んでいるコミュニティリーダーとして位置付けています。

参考: https://chomado.github.io/MS-MVP/

※Microsoft MVPトロフィー(写真)

活動の形は人によってさまざまです。勉強会やカンファレンスで登壇する人もいれば、技術記事を書く人、OSSへ貢献する人、コミュニティを運営する人もいます。私はバックエンド開発、クラウド、DevOps、システム運用などを中心に、検証した内容をブログや登壇、デモなどを通じて共有する活動を続けています。

ここで最初に一つだけ書いておきたいことがあります。
Microsoft MVPとMicrosoftのエバンジェリストは別です。ブログを書いたり、登壇したり、新しいMicrosoftの技術を紹介したりしています。そのため活動だけを見るとエバンジェリストのように見えることがあるかもしれません。しかし、エバンジェリストではありません。

Microsoft MVPだからMicrosoft製品を宣伝するという立場でもありません。
自分で技術を触り、自分で考え、その結果をコミュニティへ共有する。良いと思えば良いと言いますし、疑問があれば疑問についても話します。私にとってはここが大きな違いです。

Microsoft MVPになるまで。.NETラボとコミュニティ活動

Microsoft MVPになるまでを振り返ると、外すことができないのが.NETラボでの活動です。

.NETラボに関わるようになったのは現在のKDDIアイレット(旧アイレット)に入社した後のことでした。

.NETラボは毎月第4土曜日を中心に開催されているMicrosoft技術の勉強会です。
参加者が自分で勉強したことや検証した技術について発表し、知見を共有します。

私もコミュニティ活動の一環として.NETラボへ参加するようになり、その後自分でも登壇するようになりました。
最初は自分が調べた技術について30分ほど話すところから始まりました。

しかし実際に登壇してみると、自分の知識を一方向に伝えるだけでは終わりません。
他の人の発表を聞いたり、発表後に議論したりする中で自分とは違う技術の見方や設計思想、実装方法に触れ、自分の考えを見直すきっかけにもなりました。

  • 「そんな考え方もあるのか」
  • 「自分だったらどうするだろう」

そんなことを考えながら、少しずつ勉強を続けていきました。
その後は.NETラボだけではなく、Japan Azure User Group(JAZUG)をはじめとしたAzure関連のコミュニティでも登壇するようになりました。通常の登壇だけではなく、ハンズオンやGitHub Copilotのデモ、Microsoft Foundryを使ったデモなど、さまざまな活動を経験しました。

そして最初は登壇者として参加していた.NETラボの運営に関わるようになりました。
そうした活動の延長線上に、最初のMicrosoft MVP受賞があります。振り返ってみると、Microsoft MVPになるために一直線に活動していたという感覚はあまりありません。

  • コミュニティへ参加する。
  • 人と話す。
  • 登壇する。
  • また新しい技術を調べる。

その繰り返しの結果として、Microsoft MVPという評価につながったのだと思っています。

コミュニティで身についた「考え直す」という習慣

コミュニティ活動を通して得たものは、技術知識だけではありません。
私にとってかなり大きかったのはさまざまな人と技術についてストレートに議論できる環境に身を置けたことでした。

ある技術について「これは良い」と話したときです。

  • 「本当にそうなのか」
  • 「別のやり方もあるのではないか」
  • 「その前提は違うのではないか」

という意見が普通に返ってきます。

年齢や役職に関係なく、同じ技術者として議論します。
もちろん自分の考えを否定されることもあります。逆に自分から「私はそうは思わない」と伝えることもあります。

そこで重要なのは、否定されたこと自体ではありません。なぜ相手は違うと思ったのか。
自分と相手では何を前提としているのか。自分の考えは本当に正しかったのか。それでも同じ結論になるのか。

一度考えたことをもう一度考え直す。

このサイクルを自然に回せるようになったことは技術者としてかなり大きな成長だったと思っています。

また、さまざまな人と話すうちに自分がどんな技術を好きなのかも少しずつ見えるようになりました。
すべての新しい技術を深く追いかけることはできません。

そうした自分なりの判断軸もコミュニティでの対話を通して少しずつできていきました。

MVP1年目は「人を知る」

Microsoft MVPとしての1年目は、まずAzureを使っている人たちを知ることに時間を使いました。

  • Azureにはどんな技術者がいるのか
  • どんなMVPがいるのか
  • どんなサービスを使っているのか
  • どのような考え方でシステムを作っているのか

同じAzureを使っていても、専門領域によって見えている世界はかなり違います。
アプリケーション開発を中心に見る人もいて、インフラ、データ、AI、セキュリティ、DevOpsなどそれぞれの専門性によってAzureの見え方も変わります。

そうした人たちと話しながら、いろいろなことを考えました。

  • 「なぜこのサービスを使っているのか」
  • 「なぜこの構成なのか」
  • 「自分だったらどうするのか」

最初から自分の答えを出すのではなく、まず人を知るというそんな一年だったと思います。

MVP2年目は「自分を知る」

1年目にいろいろな人と話したことで、2年目になると別の疑問が出てきました。

「では、自分はMicrosoft MVPとして何を専門にするのか」

ということです。

私は3年間Developer Technologiesのカテゴリーで受賞しています。
ただ、Developer Technologiesという領域は広く、その中で自分自身は何を軸に活動するのか。
2年目になってようやく、それを真剣に考えるようになりました。

そこで、それまで以上に他のMVPとの対話を増やしました。ただ話を聞くだけではありません。
「自分だったらこうする」という考えを持ち、実際に作って見せるようになりました。

  • デモを作る。
  • 登壇する。
  • 技術記事を書く。
  • 動くものとして見せる。
  • そしてフィードバックをもらう。

また、他のMVPと一緒に同じテーマについて話したり、異なる専門領域を組み合わせたりする活動も増やしました。
その中で見えてきたのが、自分は単純なアプリケーション開発だけではなく「開発と運用の境界」にかなり興味を持っているということでした。

  • システムを作った後にどう運用するのか
  • 障害が発生したらどうするのか
  • どう安全に変更するのか
  • システムの状態をどう理解するのか
  • そこで得られたデータをどう改善につなげるのか

仕事でMSPやシステム運用、運用自動化に関わっていた経験とDeveloper Technologiesがここで少しずつつながっていきました。

他のクラウドの考え方を、そのままAzureへ持ち込めるとは限らない

もう一つ、2年目ごろから考えるようになったことがあります。
それはクラウドが違えば、運用の考え方も必ずしも同じではないということです。

私は仕事でAWSやGoogle Cloudにも触れてきました。そのため、そこで得た運用の考え方をAzureにもある程度適用できるだろうと考えていました。もちろん共通する部分はあります。

監視、インシデント対応、セキュリティ、いずれにしても必要です。

一方で、実際にAzureへ持ち込んでみるとうまく噛み合わない部分もありました。
マネージドサービスとしてプラットフォーム側が担う範囲も違います。

責任分界点も違います。結果として利用者が直接担う運用の範囲も変わります。
「なぜ違うのか」と考えるようになりました。

どちらが正しいという話ではありません。
その背景にあるサービス設計や思想まで考える必要があります。

この経験が後の自分のマルチクラウドに対する考え方にもつながっています。

MVP3年目は「価値を出せる場所を知る」

MVPとして2年間活動すると日本国内にどのようなMVPがいてどのような領域で活動しているのかも少しずつ分かってきました。
そこで3年目に考えたのが「では、まだ足りないところはどこなのか」ということでした。

多くの人が発信している領域があります。
一方で、複数の専門分野の境界にあって、まだ十分に語られていないテーマもあります。

分析の専門家と開発の専門家がそれぞれいたとして、その間ではどのような課題があるのか。
あまり使われていないサービスがあるなら、それはなぜなのか。

用途がないのか。知られていないのか。そうした「隙間」を見るようになりました。

そこで私が改めて注目したのがシステム運用でした。Azureにも当然運用はあります。
監視、可観測性、インシデント対応、自動化など、多くの技術があります。

ただしAzureにおいて利用者が直接担う運用とは何なのか。
どこまでプラットフォームへ任せるのか。どこから利用者が担うのか。その境界をどう設計するのか。

これは自分がこれまで取り組んできたMSPや運用自動化とも非常に近いテーマでした。
そこからDevOps、DevSecOps、システム運用、MSP、運用分析へと自分のテーマがつながっていきました。

そして現在は、その延長線上としてエージェント型運用、いわゆる自律型運用について研究しています。
AIエージェントにシステム運用のどこまでを任せられるのか。

  • 障害を検知する
  • 状況を調査する
  • 原因を推定する。
  • 対応方法を選択する
  • 必要に応じて人間へ確認する
  • 修復する
  • その結果を評価する

こうした一連の運用プロセスをAIエージェントと人間でどのように分担するのか。
振り返ってみると、突然このテーマにたどり着いたわけではありません。

  • 1年目に人を知った
  • 2年目に自分を知った
  • 3年目に自分が価値を出せる場所を考えた

その結果として、現在のテーマがあります。

MVP4年目は「得たものを返す」

では4年目は何をするのか。
自分の中では「還元」がテーマになっています。

私はKDDIアイレットに入社したときクラウドについてはほぼ、未経験からのスタートでした。

クラウドエンジニアとして考えれば、キャリアをかなり大きく切り替えたタイミングでもあります。
そのため最初の数年間は、本当に多くの人からいろいろなことを教えてもらいました。
コミュニティへ行けば、また別の専門性を持った人たちから学びます。

Microsoft MVPになってからも同じでした。そこで4年目は、今度はこちらから返していきたいと思っています。

私が返せるものの一つが、マルチクラウドの視点です。

  • Azureのサービスを見たときに、AWSではどうなっているのか
  • Google Cloudではどうなっているのか
  • OSSではどう実現しているのか
  • 標準化された仕組みはあるのか

そういった観点から考えることができます。

単純に機能表を並べて「同じようなサービスがあります」で終わるのではありません。

  • なぜ設計思想が違うのか
  • なぜ責任分界点が違うのか
  • なぜ運用方法が違うのか

これはマルチクラウド環境で仕事をしてきたからこそ、自分が提供できる価値の一つなのではないかと思っています。
例えばシステム運用であれば、OpenTelemetryのようにクラウドを横断して利用できる標準的な仕組みもあります。

一方ですべてを共通化できるわけではありません。どこまでを共通化するのか。

どこからクラウド固有として考えるのか。その境界を考えることも重要です。
4年目は、そうした自分なりの考えをこれまで以上に伝えていきたいと思っています。

3年間で見えてきた、自分の強み

MVPとして3年間活動してきて、もう一つ分かったことがあります。

それは自分の強みが一つの専門領域だけを見ることではないのかもしれないということです。

開発者/インフラエンジニア/ネットワーク管理者/データベース管理者/運用担当者だったらどう見るのか。
マネージャー/意思決定者だったらどう見るのか。

同じ技術でも、立場によって見え方は変わります。

開発者にとって便利でも、運用担当者には管理が難しいかもしれません。
運用担当者にとって安全でも、開発者の生産性を大きく落とすかもしれません。
技術的には優れていても、意思決定者から見るとコストやリスクの問題があるかもしれません。
この3年間、いろいろな立場の人と話してきたことで、複数の視点から技術を見る力を少しずつ身につけることができました。

これも4年目に還元していきたいものの一つです。

その先の5年目。グローバルへ

4年目のさらに先についても、少し考えています。5年目にやってみたいことは、グローバルに話をしていくことです。
※ちなみに今年のMicrosoft IgniteではSpeakerとして登壇する機会をいただこうと思い、エージェント型運用と実験管理というテーマでCfPを提出しましたが、採択はされませんでした。次の機会を見つけたらぜひ挑戦してみたいと思っています。

これまで国内では多くの人と話してきました。
Microsoft MVPの方々とも、Microsoftの方々とも、コミュニティの方々とも話してきました。
国内での活動はこれからも続けます。

そのうえで、国内で得た知見や議論を今度はグローバルへ持っていきたいと思っています。
「日本を代表する」と言ってしまうと少し大げさです。

ただ、日本のMicrosoft MVPの一人として活動していくという意識を持つと良いのではないかと思っています。

  • 「日本ではこんな課題がある」
  • 「自分はこう考えている」
  • 「日本の現場ではこう使っている」

ということを、海外の技術者やMicrosoft MVP、Microsoftのエンジニアへ伝えることには意味があると思っています。
そして逆に、グローバルで得た知識や議論を日本へ持ち帰る。

この双方向の流れを作りたいです。もちろん責任は大きいと思います。

日本全体の意見と、自分個人の意見はきちんと分けなければいけません。
何を根拠に話しているのかも明確にする必要があります。

それでも挑戦できるのであれば、挑戦してみたいと思っています。
MVPの方々と話していると「できるならやってみよう」という考え方を感じることがあります。

失敗が怖くないわけではありません。ただ、失敗するかもしれないから何もしないのではなく、挑戦して、うまくいかなければ何が足りなかったのかを考える。

私自身も、これまで成長したタイミングを振り返ると、その前には何かしらの挑戦がありました。

  • 初めてコミュニティへ参加したとき
  • 初めて登壇したとき
  • 知らない人の前で自分の意見を話したとき
  • 他のMVPと議論したとき

どれも成功が約束されていたわけではありません。
だから次は、それをグローバルでもやってみたいと思っています。

まとめ

最後に、自分にとってMicrosoft MVPとは何なのかを改めて考えてみます。
一つ大事にしたいのは、Microsoft MVPという称号を維持すること自体を目的にしないことです。
もちろんMVPとして評価していただけることは嬉しいですし、これからもMVPとして活動していきたいと思っています。

ただ、「来年もMVPになるために何をするか」から考えるようになってしまうと、少し違うと思っています。
それよりも、「だからこの人はMVPなんだ」と思ってもらえるような活動を続ける。
その結果として、また評価していただける。その形が一番自然なのではないかと思っています。

この3年間を振り返ると、自分の中には一つの流れがありました。

1年目は、人を知る。
2年目は、自分を知る。
3年目は、自分が価値を出せる場所を知る。
4年目は、自分が得たものを周囲へ返す。
5年目は、その還元の範囲をグローバルへ広げる。

そして、このサイクルを一度回して終わりではありません。また新しい人と出会います。

新しい技術が登場する、自分とは違う考え方に出会う。自分で技術を触る。自分の意見を持ち、発信する。
そして、フィードバックをもらう。(必要であればMicrosoftの製品チームへフィードバックすることもあります。)

そしてまた考えます。Microsoft MVPとして活動していると、最新の製品や機能について知ったり、それを作っているMicrosoftのエンジニアと接点を持ったりする機会もあります。

だからこそ、単純に情報を受け取って発信するだけではなく、自分でも考えてコミュニティや製品へ返していくことが重要だと思っています。
ただ、自分の目的は製品を広めることではありません。

  • 自分で技術を触る
  • 自分で考える
  • 自分の意見を持つ
  • 人と議論する
  • 必要なら考えを変える

そして得たものを周囲へ返していく。それを繰り返す。

これが今のところ、私が考えているMicrosoft MVPとしての活動です。
人を知り、自分を知り、価値を出せる場所を知り、得たものを返し、さらに広い場所へ持っていく。
このサイクルをこれからも回し続けていきます。

ということで、Microsoft MVP4年目も引き続き活動していきます。
これからもよろしくお願いします。