前回は、3D制作を加速させる革新的な生成AIツールをいくつかご紹介しました。「これほど便利なものがあるのか」と驚かれた方も多いのではないでしょうか。

しかし、ツールを揃えるだけで制作が劇的に変わるわけではありません。実際に現場に導入するとなると、「具体的にどれほどの工数が浮くのか?」「逆に、AIを使うことで発生する新たな手間や限界は何なのか?」という点が最も気になるところかと思います。

そこで今回は、一歩踏み込んで「3D制作におけるAI活用のメリットとデメリット」を解説します。

AI活用による3D制作のメリットまとめ

1.制作効率・スピード面の短縮

AIを活用することで、キャラクター作成やアニメーション、リギングなど、手動で行う作業を自動化でき、制作時間を大幅に短縮できます。
例えば、リアル系のファンタジーキャラクター(人型)を生成する場合を比較してみましょう。

従来(back) 3D AI活用(想定)
平均工数:20〜34日内訳目安:
  • コンセプトアート: 3〜7日
  • モデリング: 7〜10日
  • UV展開: 1〜2日
  • テクスチャ: 5〜7日
  • リギング: 3〜5日
  • モーション準備: 1〜3日

※コンシューマー向け(高品質)の場合、1〜2ヶ月かかることもあります。

圧倒的な生産性の向上制作時間の短縮 ➡ 数分
上記の①~⑥までの工程を一気に数分で生成可能です。

生産性の向上 ➡ 1日
1日で複数のモデル案を生成することが可能になります。


リアルタイム修正 ➡ 1日~10日
その日のうちにディレクターへの提案や修正対応が可能です。


反復作業の削減
UV展開、リトポ、LOD調整などを自動化し、クリエイターは「表現」に集中できます。

※スマホの方は表を横にスクロールしてご覧ください。

2.デザイン関連の人件コストの削減

AIでデザイン画が生成されることにより、イラストレーターやモデラーのコスト削減が期待できます。

従来(平均コスト) 3D AI活用(削減効果)
中規模スマホ3Dゲーム例
  • 人員: 30〜50名
  • 期間: 12〜18ヶ月

主な内訳:

  • コンセプトアート(2-3名)
  • 3Dモデリング(3-5名)
  • アニメーター/リガー(数名)
  • UI/UXデザイナー(1-2名)
人員・期間の大幅削減
  • 人員: 15〜25名規模(3〜5割削減)
  • 期間: 6〜12ヶ月(約半分に短縮)

変化のポイント:

  • デザイン: AI生成+監修で1キャラ1〜2日に。
  • リギング: 自動ツール(AccuRIG等)で数時間〜1日に。
  • モーション: 自動生成(DeepMotion等)+調整のみ。

コスト:人件費は低くなったが、AIツール利用料は必要。

※平均的な工数・コストであり、アーティスト単価等により変動します。

3.生産率の向上とカスタマイズ性の向上

クオリティーを最優先しない背景モデルやモブキャラクターなどの生成において、生産率が劇的にアップします。修正が入った場合でも、ゼロから作るより早いです。また、 要望に合わせてデザインや仕様を柔軟に変更・調整できます。

生産率の向上

Image created with AI

4.無限のバリエーション

AIを使うことで、アニメーションやキャラクターのバリエーションを簡単に作成できます。複数のデータを組み合わせたり、スタイル変換も容易です。

バリエーション

画像提供:Tripo AI

5.高度なモーションキャプチャ

DeepMotionやMixamoのようなツールを使えば、動画からキャラクターに自然な動きを追加でき、手動での微調整も自動化できます。

Mixamo

Image by Mixamo

6.データ最適化

モデリングやテクスチャ、アニメーションデータを最適化し、ゲームエンジンに適した形式へ変換することもAIは得意としています。

Image created with AI

7.アイデア発想の支援&プロトタイプの高速化

大量のデザインパターンを短時間で生成できるため、「ゼロから作る」よりも「AIの候補から選び、洗練させる」方が効率的です。また、コンセプトアートとして、3Dモデルを即座にゲームエンジンに組み込めるため、ゲーム性や構図の検証がプロジェクトの超初期段階で可能になります。

アイデア発想

画像提供:Tripo AI

8.リアルタイム修正プレビュー・素材のアップスケーリング(高解像度・高画質に変換する技術)とリマスター(古い3Dモデルを品質を向上させる作業)

その場ですぐに修正案を出せるので、ディレクターやクライアントとの確認がスムーズになります。過去のプロジェクトで作成した低解像度なテクスチャや、ローポリゴンのモデルを、AI(Super ResolutionやAIリトポロジー)によって現代のクオリティに引き上げることができます。過去資産の再利用(アセット・サルベージ)において、AIは非常に強力です。

リアルタイム修正

Image created with AI

9.スキル格差の緩和

初心者や非専門職でもAIツールを使えばある程度のモデルを扱えるようになり、少人数チームでも大規模プロジェクトに対応しやすくなります。

スキル格差緩和

Image created with AI

10.グローバル対応

多言語・多文化向けのデザインが得意で、海外向け最適化も短期間で可能です。

Image created with AI

11.反復作業の削減

UV展開やLOD調整(ディテールの度合い)などの単純作業をAIに任せられます。

Image created with AI

12.非破壊的なテクスチャ生成

Adobe Substance 3DやInstaMATなどのツールに見られるように、テキストからPBR(物理ベースレンダリング)素材を生成できるため、光の反射や粗さ(Roughness)、凹凸(Normal)の設定をAIが論理的に構築してくれます。これにより、どんなライティング環境でも破綻しない質感が手に入ります。

Image created with AI

良くない部分(デメリット)

1.自分のイメージしたモデル生成が難しい

プロンプトで指示しても、自分がイメージしている特定のキャラクターが何日やっても出てこない時があります。

イメージ生成の難しさ

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2.プラットフォームによる得意不得意やスタイルの均一化(独自性の喪失)&著作権と権利関係のグレーゾーン

特定のAIモデルを使うと、どうしても「AIっぽい質感」や「AI特有の造形」に寄ってしまいます。競合他社も同じツールを使えば、作品のビジュアル的な差別化が難しくなり、また、リアル系キャラは得意でも、デフォルメがかかると一気に難易度が高まったり、プラットフォームごとの癖がありプロダクトとしての個性が埋没する恐れがあります。

また、生成されたモデルの学習データに、他者の著作物が含まれている場合、商用プロジェクトでの利用に法的なリスクが伴う可能性があります。特に大手クライアント案件では、「クリーンな学習データである証明」を求められるケースが増えています。

プラットフォームの癖

Image created with AI

3.トポロジー(ポリゴンの構成)の不規則性と細部の品質限界

AI生成モデルは、一見すると外観は整っていますが、内部の「トポロジー(ポリゴンの構成)」が不規則で、三角形ポリゴンが乱立する傾向にあります。これはアニメーション設定(リギング)の際に、関節などの可動域で不自然なメッシュの歪みを引き起こす原因となります。 また、エッジの維持が難しく、本来鋭利であるべき箇所が丸みを帯びるなど、細部の精度では依然として手作業に及びません。結果として、実制作に耐えうる品質を確保するためには、人間による「リトポロジー(面の張り直し)」や細部の修正工程が不可欠です。

画像提供:Tripo AI

4.手作業での修正が必須

髪の毛、服、体型などがくっついてしまい、メッシュを切り離さないと使用できないなど、なぜその形状になったのかのプロセス(履歴)がありません。ディレクターから「ここの角の角度を5度だけ変えて」と言われた際、AIだと「作り直し」はできても「微調整」が効かないことがあり、結果として手動より時間がかかる状態に陥るリスクや修正する技術も必要となります。

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5.文化的バイアス(偏見、先入観)

日本語で生成できなかったり、日本の要素を指定しても中国風のデザインになってしまうなど、学習データの偏りを感じることがあります。

Image created with AI

このように、AI活用には課題も多く一長一短があるものの、すべてを自動化できるわけではないです。
しかし、工程の大部分を効率化し、工期を大幅に圧縮できるという価値は、すでに実証段階に入っているということ、重要なのは、AIを導入すること自体ではなく、人がどこに時間と判断力を使うかを再設計することだということです。

単純作業や再現性の高い工程はAIに任せ、人はより創造的で付加価値の高い工程に集中する。

その前提に立ったとき、AIはコスト削減のための手段ではなく、制作の質とスピードを同時に引き上げるための戦略的ツールとなりえるということ、今はまさに、その可能性を検証し、活用を前提とした体制づくりに踏み出すべき段階にあるということです。

次回は、今回を踏まえ「3Dモデリングでの作業工程での具体的な短縮箇所」を見ていきたいと思います。