はじめに

  • Oracle AI World 2026(ラスベガス)で、「Oracle Database Cloud Services for the AI Era: What’s New and What’s Next [LRN6059]」を聴講しました。Exadata Database Service と Base Database Service を中心に、Oracle が提供するデータベースクラウドサービスの最新機能と今後の方向性をOracle の登壇者が紹介するセッションでした。
  • セッションは、次の 4 つのテーマで構成されていました。
    • Customer Choice:どこで、どのように使うかを選べる
    • AI Across the Stack:データ、アプリ、運用のすべての層に AI を組み込む
    • Developer Simplicity:開発者の作業を簡単にする
    • Secure and Always Available:安全に止まらずに使える
  • 本記事では、このテーマに沿って、主な新機能を整理します。スライドの内容を基本とし、登壇者が口頭で補足した内容は「セッションでは」と明記しています。
  • なお、同じ Oracle AI World 2026 の別セッション「Oracle AI Database: What’s New and What’s Next [LRN6095]」については、今井が 【Oracle AI World 2026】OCI Top Partner Engineers が送る Oracle AI Database の New と Next 一気読み! で紹介しています。Agent Memory、APEXlang、Oracle Deep Data Security、Fleet Automation、Data Safe の進化などOracle AI Database 全体の新機能はそちらをご覧ください。本記事は、Exadata Database Service や Base Database Service といった「データベースクラウドサービス」の側に絞って整理しています。

用語をおさらい

  • Exadata Database Service / Exascale / Base Database Service:Oracle Database を動かす OCI のデータベースサービス。Exadata Database Service は Exadata 上で、Exascale は Exadata のストレージを共有のプールとして、柔軟に使えるようにした基盤(Exascale Infrastructure)で、Base Database Service は汎用的な仮想マシン上で、それぞれ動作します。
  • 共同管理型(co-managed):Oracle がインフラの自動化を提供し、お客様もデータベースの運用を管理できるサービス形態。お客様はデータだけを管理する「フルマネージド」と区別されます。
  • Release Update(RU):Oracle Database に定期的に提供される不具合修正とセキュリティ修正をまとめた更新プログラム。
  • CVSS:脆弱性の深刻度を数値で示す共通の評価基準。
  • Grid Infrastructure(GI):Oracle Database のクラスターやストレージ管理を担うソフトウェア。
  • Data Guard:本番(プライマリ)のデータベースを、待機(スタンバイ)のデータベースへ複製して、障害に備える機能。
  • PDB(Pluggable Database):1 つのデータベースの中に作る、独立したデータベース単位。
  • Select AI:自然言語の質問を SQL に変換して、データベースに問い合わせる機能。
  • MCP(Model Context Protocol):AI アシスタントが外部のツールやデータにアクセスするための共通プロトコル。
  • Apache Iceberg:オブジェクトストレージ上の大規模なテーブルを扱うための、オープンなテーブル形式。
  • TDE(透過的データ暗号化):データベースのデータを暗号化する機能。暗号化の鍵は、Oracle Wallet や OCI Vault などで管理します。

3 行まとめ

  • 1. Oracle のデータベースクラウドサービスは、OCI だけでなく AWS、Azure、Google Cloud でも同じように使えるように広がっている。
  • 2. AI 機能は、ベクトル検索、AI エージェント、運用の自動化にわたって、サービスの中に組み込まれつつある(一部は近日提供予定)。
  • 3. AI で攻撃が容易になることを前提に、パッチ適用を止めずに行う機能(Live Update、Managed Updates など)が拡充されている。

Oracle Database Cloud Services の全体像

同じ Oracle AI Database をどのクラウドでも

  • セッションの冒頭では、データベースクラウドサービスのポートフォリオが紹介されました。スライドでは、Exadata Database Service、Autonomous AI Database、Base Database Service、GoldenGate、Data Safe といったサービスが、Microsoft Azure、Google Cloud、AWS、OCI のどこで提供されるかが、一覧表で示されていました。一部のサービスには「Planned(提供予定)」の表示もありました。

  • セッションでは、お客様は 1 つの Oracle AI Database クラウドを使いたい場所で、使いたい形で選べると説明されました。

この 2 年のあゆみ

  • スライド「Exadata and Base Database Service innovations over last 2 years」では、2024 年から 2026 年までの主な機能追加が年表で示されていました。青字は、マルチクラウド向けの機能です。
    • 2024 年:Oracle AI Database@Google Cloud、マルチクラウド向けのバックアップ対応
    • 2025 年:Oracle AI Database@AWS、Azure と Google Cloud での Exadata Database Service(Exascale 基盤)と Base Database Service、AWS KMS・Azure Key Vault・Google Cloud の鍵管理サービスとの連携
    • 2026 年(現在):AWS での Exadata Database Service(Exascale 基盤)、Exadata Live Update、Base Database Cloud@Customer、複数クラウドの鍵管理サービスとクロスリージョン Data Guard の組み合わせ

お客様の 3 つの要望と4 つのテーマ

  • こうした機能追加の背景として、スライド「Key Asks From Customers and Cloud Service Partners」では、お客様とクラウドパートナーからの要望が 3 つに整理されていました。
    • Deep Multicloud and AI Integration:AI エージェントや埋め込みモデル、LLM をクラウドでもお客様の環境でも動かせる柔軟性。各クラウドの AI 機能とのより深い連携
    • Continuous Availability:リージョン、サービス、クラウド事業者をまたいだ事業継続。リージョンをまたぐバックアップの複製とクラウド事業者をまたぐ Data Guard の自動化
    • Operational Resilience:メンテナンスがデータベースや VM クラスターの稼働に与える影響の低減。構築時の制御やカスタマイズの強化
  • これに対する答えが、冒頭の 4 つのテーマ(Customer Choice、AI Across the Stack、Developer Simplicity、Secure and Always Available)です。

AI Across the Stack:データ、アプリ、運用に AI を

AI for Data:追加料金なしでデータのある場所で AI を使う

  • AI Across the Stack は、「AI for Data」「AI for apps, agents, and operations」「Secure AI foundation」の 3 つで説明されました。
  • 最初の「AI for Data」では、Oracle AI Database 26ai と Exadata Cloud について、次の点がスライドに示されていました。
    • AI 機能をデータのある場所で、追加料金なしで使える
    • ベクトルを効率的かつ安全に保存、検索、比較できる
    • 業務データと AI のベクトルを、まとめて検索できる設計になっている
    • Select AI で、自然言語でデータベースに問い合わせられる。データベースの中で管理された AI エージェントを作って動かせる
    • Exadata の性能、可用性、セキュリティの利点をそのまま享受できる

Vector Table:ベクトル検索を Exadata Database Service に(近日提供予定)

  • スライド「Vector Table natively integrated in Exadata Database Service」には「Coming soon」の表示がありました。内容は次のとおりです。
    • Vector Table は、意味にもとづく検索を、Oracle Database の中に持ち込む。既存のデータ、ID の制御、セキュリティの運用のまま、AI アプリケーションを作れる
    • Exadata Database Service の既存の PDB の一部として使える。別のベクトルデータベースと同期する必要がなくなる。もしくは、OCI のネイティブ API で操作する、専用のマネージドなベクトル PDB としても使える
    • 埋め込み、コンテンツ、メタデータ、リレーショナルデータを、近くにまとめて置ける
    • Exadata のストレージオフロードによる性能を、ベクトルテーブルにも使える

Private AI Agent Factory:AI の処理をデータベースの近くで(近日提供予定)

  • スライド「AI for Apps and Operations」でも、「Coming soon」の表示がありました。AI エージェントやデータのワークフローをExadata のインフラ、または OCI のパブリッククラウド上で、素早く作って、試して、展開できるようにするものです。
    • Private AI Agent Factory:データベースとの統合を前提に、AI エージェントを素早く作って展開する
    • Private AI Services Container:データベースの AI の計算処理を、Exadata 上、または OCI のパブリッククラウド上のサービス用 VM に任せる
    • どちらも、Oracle がライフサイクルを管理するフルマネージドの展開が選べる

  • セッションでは、これにより埋め込みモデル、LLM、エージェントをお客様の環境の外へデータを出すことなく(出口の転送料金なしで)動かせると説明されました。

運用の AI 活用:管理者向けの MCP サーバー

  • セッションでは、すでに提供が始まっている機能として、管理者向けの MCP サーバーが紹介されました。管理者は、システムの状態や VM クラスターの統計情報をAI クライアント(Codex や Claude など)から、自然言語で問い合わせられます。OCI の IAM と OAuth 2.0 が統合されており、権限の範囲内で使えるという説明でした。アプリケーションなどから Oracle AI Database へ MCP でつなぐ Database Tools MCP Server については、今井の記事をご覧ください。

AI Lakehouse:Oracle 以外のデータにも、コピーせずに問い合わせる

  • スライド「AI Lakehouse」では、Oracle と Oracle 以外のデータソースをまたいだ分析と AI の構成が示されていました。Iceberg V3 などのオープンな標準への対応、ETL なしでデータにそのまま問い合わせられること、複数のカタログをまとめる AI Data Catalog、AI エージェントが業務の意味を使うための仕組み、統制されたアクセスが特徴とされています。すべてのデータベースクラウドサービスで、どこでも使えるとも示されました。

  • スライド「AI Lakehouse new features」では、新機能が 3 つの柱で整理されていました。
    • Lakehouse 360:ビジネスのシミュレーションと、スケールする分析。AI 支援の Data Studio、Data Transforms Pipeline、Essbase ベースのシミュレーション、性能とスケールの強化
    • Business-aware Agentic AI:つながったデータと AI のワークフロー。Federated Data Catalog、Iceberg V3 対応、Self-enriching Semantics、Live AI Hub
    • Trusted & Governed AI:明確な監査証跡を伴う、安全なアクセス。オブジェクト単位のアクセス、Credential Vending、リネージ、統合されたセキュリティとガバナンス
  • Autonomous AI Lakehouse の特徴と考察は、今井の記事でも紹介されています。

Secure AI Foundation:AI 時代のパッチ適用

  • 本記事では、Oracle が運用を支援する共同管理型サービスの機能を中心に紹介します。お客様が自分でデータベースを管理する場合の Fleet Automation や、Data Safe の進化については、今井の記事をご覧ください。

なぜ「最新に保つこと」が重要なのか

  • スライド「Keeping your Cloud databases Secure in the age of AI」では、AI が攻撃者に与える影響が次のように示されていました。
    • AI モデルによって、攻撃者が脆弱性を見つけて攻撃するコストが劇的に下がっている
    • AI が広く使われているすべてのソフトウェアプラットフォームを含めて、数百のゼロデイ脆弱性を発見した
    • 攻撃者は、ソフトウェアのパッチを AI で素早くリバースエンジニアリングして、パッチを当てていないシステムを攻撃できる
  • そのうえで、「データプラットフォームが最新であることをどう信頼できるのか?」という問いが示されました。

更新を止めずに適用する 3 つの新機能

  • これに対して、Oracle は欠陥を先回りして見つけて修正して、更新を予定どおりに出すことに、大きなエンジニアリングの投資をしていると説明されました。スライドでは、更新を最新に保つための 3 つの新しい機能が挙げられていました。
    • 1. Exadata Live Update:条件を満たす重大度(CVSS)の高いセキュリティ修正と、ゲスト VM の OS のすべてのセキュリティ修正を、VM やデータベースを再起動せずに、オンラインで適用する
    • 2. Managed Updates:Oracle が、セキュリティの更新をオンラインで自動的に適用して、環境を安全に保つ
    • 3. Early Adopter images:Oracle が管理する、アーリーアダプター向けのクラウド RU のイメージを使って、本番に GA のイメージを適用する前に、本番前の環境で検証できる(OCI の Base Database Service では 1 月の RU で提供、他の共同管理型のサービスにも予定)

Oracle Managed Database Updates:更新の時間帯をお客様が決める

  • Managed Updates の仕組みは、スライド「Oracle Managed Database Updates」にまとめられていました。
    • お客様がメンテナンスのスケジュールを選ぶと、Oracle が最新の RU を適用する
    • Oracle が準備状況を確認し、データベースを更新し、問題を解決して、サービスをオンラインのまま保つ
    • データベースは、ローリング方式で更新される
    • お客様は、イベントと通知を購読して、進捗を確認できる
    • お客様は、いつでも自分で更新を管理する形に戻せる
  • この機能は、Exascale Infrastructure 上の Exadata Database Service で、すべてのリージョンで使えるとスライドに記載されていました。

Stack Update:OS と GI をまとめて更新(データベースは近日対応)

  • 「Exadata Database Service Stack Update」は、データベース VM の中のOS と GI の更新をまとめて 1 回で適用する機能です。スライドでは、Database Instance、Grid Infrastructure、VM の Exadata OS イメージを1 つの更新として扱う図が示されていました。
    • OS と GI を組み合わせた更新は、VM ですでに使える
    • データベースの中断を最小限にして、運用のリスクを減らす
    • OS と GI の更新を両方適用した後に、データベースインスタンスを 1 回だけ再起動する
    • データベースの更新への対応は、近日提供予定

Secure and Always Available:止まらないための機能

Data Guard Automatic Failover

  • スライド「Data Guard Automatic Failover」には、Oracle Managed Observer がプライマリとスタンバイのデータベースを監視して、障害時にスタンバイを自動で昇格させる構成が示されていました。
    • ヘルスモニタリングとフェイルオーバーの手順を自動化して、運用の複雑さと復旧にかかる時間を減らす
    • データ損失ゼロの保護で構成するとデータ損失なしの自動フェイルオーバーができる
    • 設定したフェイルオーバーの条件を満たすと、スタンバイを昇格させて人の手を介さずに重要なアプリケーションの可用性を回復する
  • この機能は、Exascale Infrastructure 上の Exadata Database Service で、すべてのリージョンで使えるとスライドに記載されていました。

クラウドをまたぐ DR と DB のモビリティ

  • スライド「DR and DB mobility across Cloud Providers」では、スタンバイデータベースを別のクラウドで動かす構成が示されていました。
    • スタンバイデータベースを別のクラウドで動かすことで高い耐障害性を得る
    • OCI、AWS、Azure、Google Cloud をまたぐマルチクラウドの DR 戦略に対応する
    • TDE の鍵管理は、Oracle Wallet または OCI Vault が選べる
    • PDB をクラウドをまたいでコピー、移動できる(分散したユースケース向け)
    • 必要な場所に、読み取り専用のスタンバイを作れる

Customer Choice と Developer Simplicity

データベースの隣でアプリやサービスを動かす

  • Customer Choice のスライドでは、「Database-adjacent Apps for Exadata Database Service」が紹介されました。すでにある Exadata のインフラで使える OCPU を活用して、軽量なサービスをデータベース VM の隣で動かすものです。主な使い方として、Oracle GoldenGate のハブ、Private Agent Factory、Private AI のコンテナ、アプリケーションの Web 層、データの読み込みと変換などが挙げられていました。低遅延でのデータベースアクセス、プライベート接続、導入の簡素化が利点とされています。
  • このスライドの最後には、「データベースの上に新しいレイクハウスを作るか、すでに展開したレイクハウスにデータを持ち込むか」「データベースを自分で管理するかOracle の管理を選ぶか」という選択肢も示されていました。

Oracle Managed VM Clusters:運用を Oracle に任せる選択肢

  • スライド「Fully Managed Option | Oracle Managed VM Clusters」は、データベース VM 環境の一部またはすべてを Oracle に管理させる選択肢です。
    • Oracle がデータベースと VM を自動で更新して、安全に保つ。更新するタイミングはお客様が選ぶ
    • Oracle が高可用性の構成を管理する。AD やリージョンをまたぐマネージドなスタンバイを自動または手動のフェイルオーバーで選べる
    • Oracle がバックアップを管理する。お客様が管理する鍵で暗号化される
    • お客様は、データベースの特権アクセスを持ち続ける

開発者の体験を簡単にする

  • スライド「Simplifying Database Developer Experience」には、開発者向けの機能が並んでいました。
    • Database-Developer の VM クラスタータイプで、開発用の OCPU コストを節約する
    • データベースの作成と、データの取り込み、移行の流れを簡素化する
    • SQL Worksheet を完全に統合する
    • Oracle AI APEX Application Generator と、オープンな宣言型の APEXlang を使ったAI 中心のアプリ開発
    • 本番の不具合や遅い SQL をデバッグする
    • Real Application Testing(RAT)で、実際のワークロードを再生して試験する
    • アプリとデータの CI/CD
  • 右側の図には、「Early Access」のデータの取り込みから、「Future Direction」としてソース構造、ソースソフトウェア、一時的なデータベースインスタンス(CI/CD のパイプラインやテスト用)へ進む流れが示されていました。APEXlang については、今井の記事で詳しく紹介されています。

マルチクラウドで AI サービスを使う

  • スライド「Multicloud AI Database@<AWS|GCP|Azure>」では、AWS、Google Cloud、Azure 上の Oracle AI Database について、次の点が示されていました。
    • OCI、AWS、Azure、Google Cloud をまたぐ高可用性とディザスタリカバリの構成
    • Autonomous Recovery Service のバックアップの長期保管(AWS の S3、Azure の Blob へ)
    • AWS、Azure、Google Cloud のクラウドネイティブな ID との統合
    • 各クラウドの AI サービス(OCI Generative AI、Amazon Bedrock、Gemini、Microsoft Foundry)をOracle のデータと一緒に使える。リモートの MCP、Select AI Agents、A2A、Vector Tables、Private Agent Factory、Private AI Container にも対応する
    • Oracle AI Lakehouse の機能を各クラウドに展開したデータレイクに統合する

まとめ

  • スライドの最後には、セッション全体の要約として、4 つのテーマが再掲されていました。「継続的で素早いイノベーションをお客様の要件への強い関心とともに進める」というメッセージです。
    • Customer Choice:マルチクラウド、共同管理型とフルマネージド、レイクハウスを選べる
    • AI Across the Stack:Select AI、Vector Table、Private Agent Factory、AI Lakehouse
    • Developer Simplicity:Developer VM クラスター、APEX、RAT、CI/CD
    • Secure and Always Available:Live Update、Managed Updates、Data Guard Automatic Failover、クラウドをまたぐ DR

おわりに

  • 今回のセッションでは、Oracle のデータベースクラウドサービスに、AI 機能と止めないための運用機能が広がって組み込まれていく方向性を確認できました。
  • Exadata のようなミッションクリティカルなデータベースでは、高い可用性と、止めないメンテナンスが当たり前のように求められます。運用を担う弊社にとっても、慎重な対応が欠かせない課題です。パッチ適用を止めずに行う機能は、運用する側がまさに求めていたもので、特に関心の高いテーマでした。

参考