中国で書かれた伝記歴史小説『水滸伝』に登場する百八星の豪傑たちが集う『梁山泊』に例えて、cloudpackに集結するエンジニアを『梁山パック』として、ここにその個性豊かな表情を順にお伝えしていきたい。

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モスバーガーで一番うまいのは「テリヤキチキンバーガー」

7月に入ってすぐのランチタイム。お気に入りの店を尋ねると、武川が指定した場所は新橋のモスバーガーだった。

「テリヤキチキンバーガーが大好きなんですよ」

そう言いながらメニューを前に真剣に悩んでいる様子だったが、実際は何個のテリヤキチキンバーガーを食べるかで考えていただけだった。結局、テリヤキチキンバーガーを2つと、フライドポテトとドリンクのセット。それが彼のオーダーだった。

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モスバーガーが数年ぶりな私は、とりあえずオススメされたテリヤキチキンバーガーを食べてみることにした。

店内はランチタイムのサラリーマンでいっぱいだ。待つこと十数分、店員さんが席まで届けてくれたバーガーを前に、武川は「あー幸せ」と噛みしめるようにつぶやいた。

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カメラを向けたら真面目な顔をしたが、大好物を前に嬉しさを隠せない様子(笑)

これも彼の魅力と言えるだろう。

小さな「幸せ」を積み上げる日々

陸上自衛官の父を持つ武川は、札幌の真駒内で生まれ、高校にあがるまで父の赴任地にあわせて転校生として過ごした。沖縄の大学に進学したというから、実に北から南まで居を移し続けたことになる。

「私の人生は失敗だらけなんです」

悲壮感こそ無いものの、武川は冒頭にそう告げた。話を聞いていると失敗だらけの人生には思えなかったのだが、受験や就職などあらゆる人生の節目を失敗してきたと彼は言う。

典型的なエピソードを尋ねると、新卒での就活だったと語り出した。

大学で就職説明会が開催され、そろそろ就活を始めないといけない!と周りが動き出す中、武川はコンピュータ実習に夢中になりすぎて、気がついたら就活シーズンは終わっていた。

就職氷河期が始まる頃で、どの企業にも就職できなかった武川は、仕方なく大学院に進学した。ところが、次の就活のタイミングはさらに氷河期になっていた。かろうじてある企業から内定をもらったものの、今度は修士論文が間に合わないという危機に直面する。結果、大学院は中退して、内定をもらった企業に就職をした。その後、社会人になってからも不本意な転職が数回あるとか、無職だった時期もあったとか、家族に心配をかけたこともあるとか。

不幸自慢かと思ったらマジでしたか…。ですが、今の活躍ぶりをみると、結果オーライじゃないですか?

「はい、cloudpackでも大変なことはたくさんありますが、こうして働けていて幸せです」と、事も無げに言う。

さらに彼は続ける。

「cloudpackに身を寄せてから、日々幸せを噛み締めているんです。仕事が終わって今日も乗り切った!と感じる幸せ。家にたどり着いて今日も生き延びたな!と感じる幸せ。美味しいもの食べたときの幸せ。会社で虎ガール(注:弊社女性社員の通称)と会話しちゃった!っていう幸せ。」

最後の1つはウケ狙いかもしれないが、こうして彼は毎日たくさんの小さな幸せを積み重ねて過ごしている。『織田無道』さんのような容姿ながら、中身が『相田みつを』さんのような人だと思う。

「あの。もう食べてもいいですか?」

あ、気がつかずスミマセン。どうぞどうぞ。

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もぐもぐ。もぐもぐ。

目の前の課題解決に集中する

武川はプログラマとして社会人生活をスタートして、その後の転職の中で営業職を経験し、今はSRE(Site Reliability Engineering)に従事するエンジニアだ。会社にとっては売上が大事だ、と営業的な考えは理解しつつも、武川は売上よりも前に『お客様の課題を解決することに全力を注ぎたい』と考えている。

筆者はかつて、武川の手がけた案件の導入事例インタビューの際に、お客様を一緒に訪問した現場で彼が発した一言が印象に残っていた。

事例取材のときに『客先に常駐したい』って仰ってましたね。そのココロは?

「はい。恵まれているだけだと思うんですが、私は自分の担当するお客さんが本当に大好きなんです。エンジニアとして常駐できれば、そのお客様のためだけに、集中して課題解決のお手伝いができるじゃないですか。そうなったら幸せですよね」

お客様の技術的な無理難題に、はっきりと「それは無理」と言ってしまい、怒られたこともあるらしい。しかし、怒らせてしまっている間にも、武川はお客様が抱える課題の本質を噛みしめていた。お客様が無理難題を要求していたことに気がつく頃、武川は「こういうやり方ならあります」と解決策を提示するのだと言う。

「技術的に解決できないことは、営業的な手段で解決したりするでしょう? お客様との折衝で落としどころが見つかればいいのかもしれないけど、そういう考え方は私はどうも不得意なんです。私は目の前の技術的な課題解決に集中していたい方なので、これからもエンジニアとしてお客様のお役に立ちたいですね。」 

Happy Hacking Keyboardのジンクス

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プログラマーなら『Happy Hacking Keyboard(HHKB)』を知らない人はいないだろう。先日、あるプロジェクトが成功裏に終わり、頑張った自分へのご褒美にHHKBを新調したという。

HHKBって打鍵音がうるさくないですか?

「それは安いやつだよ。高級なやつは静かなんだよ〜(笑)」

武川がHHKBを購入するのは、これで3台目だ。そしてHHKBを新調すると、仕事で失敗して不本意な転職をするというジンクスがあるらしい。そんな不吉な話をしながらも笑顔を崩さない。

「今回買ったHHKBはね、Bluetoothに対応しているの。最高だよ」

自らジンクスと言いながら、まったく気にしていない武川の様子を見ながら、彼の目の前の課題に集中する性格の意味が理解できた気がした。ふと『ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。』という言葉が脳裏に浮かんだ。

そして武川オススメの『テリヤキチキンバーガー』は頬張ると甘いタレが絶妙だった。美味いじゃ (゚д゚lll) ないっスカ!!

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聞き手:増田隆一(marketing communication, cloudpack)
取材:2016年7月6日@モスバーガー新橋二丁目店