よちよち歩きのオウンドメディア『cloudpack.media』の編集会議で、記事ネタを全員で洗い出しておりました。さまざまなアイデアが挙がる中で「オウンドメディアの先達にいろいろと教わりに行こう!」と虫のいいハナシが沸きあがったので、さっそく連載化することに。

最近はコンテンツマーケティングに手を染める企業が増えているおかげで、オウンドメディアの先輩たちがたくさんいらっしゃいます。

『cloudpack.media』をスタートすることになって、初代編集長を拝命した私ですが、広報の経験はあるものの媒体出身者ではありません。

媒体出身者を編集長に据えるオウンドメディアもあれば、私と同じように手探りで始めているオウンドメディアもあって千差万別ですが、どちらにしても先輩たちの取り組みは少なくとも『cloudpack.media』には眩しい限り。この連載を通じて、ご縁のあるオウンドメディアさんからどしどし学ばせていただこうと考えております。

というわけで、連載『オウンドメディアの先輩から学ぼう!』の記念すべき第1回の記事がこちらになります。

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今回、私たちがお訪ねしたのは『Six Apartブログ』の編集長・壽(
ことぶき)かおりさんです。ちょうどオフィス移転の直前のお忙しい時期でしたが、なんとかお時間をいただくことができました。

オウンドメディア『Six Apartブログ』

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シックス・アパートは、ご存知の方も多いと思いますが、『Movable Type(以下、MT)』というCMSを提供されている企業です。MTは、昨年10月に14周年を迎えたそうです。

日経平均銘柄に並ぶ企業の半数以上、東証に上場する企業の30%以上が、MTを採用しているなど、知名度も実績もあるCMSを提供されています。

シックス・アパート自体、最近では、EBO(Employee BuyOut:従業員買収)で独立された、なんていう発表もあり、きっとご存知の方も多いでしょう。

さっそくですが、壽さん。シックス・アパートさんのサイトを覗くと「広報ブログ」と「Six Apartブログ」の2つのブログがありますね。それぞれの違いを教えていただけますか

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広報ブログ』は2005年から運営しているブログです。主に社内の活動を紹介したり節目のご挨拶を投稿しています。文字どおり、広報が会社の情報を発信する場所です。

例えば、シックス・アパートでは、みんなでおかずを持ち寄ってランチを食べる「持ち寄りランチ」というユニークな取り組みがあるんですけれど、広報ブログで紹介したことををきっかけに、夕方に放送されているTBSのニュース番組『Nスタ』で紹介していただいたこともあります。

みんなでランチのおかずを持ち寄るのですね、楽しそうですね

Nスタ取材が直前に決まって急遽持ち寄りの号令をかけたら、おかずが集まり過ぎたりして大変でしたが、広報冥利に尽きますね。

もうひとつの『Six Apartブログ』は、オウンドメディアを通じて情報を発信していきたい人に役立つ記事を中心に掲載しています。「オウンドメディアのためのオウンドメディア」とでもいいましょうか。

オウンドメディアの運営ノウハウなどをテーマに、同じような取り組みをされている方々に寄稿していただいたりしています。そういう意味では、cloudpack.mediaのみなさんも読者対象になりますね。

なるほど。読者で棲みわけていらっしゃるのですね

そうです。広報ブログは主にシックス・アパートのお客様やパートナーの皆様に会社のことを知って頂くためのメディアで、Six Apart ブログはサイト上部に『情熱的に情報発信し続ける企業のための、方法と実践の情報サイト』と書いてあるように、オウンドメディア運営者を読者対象にしたメディアになります。

それぞれの編集体制はどのようになっているのですか

現在は両メディアとも、広報がメインとなって運営しています。執筆リソースの面からも記事の数よりも、記事の質と書いた記事を多方面で活用することを重視しています。記事は、私が書くことも多いですし、社内のメンバーが執筆した記事も多数あります。また、後ほどご紹介する『オウンドメディア勉強会』の参加者に寄稿していただくこともあります。

両メディアとも、シックス・アパートを知っていただくためのツールの一つです。これらで書いた記事をきっかけに、シックス・アパートのフォロワー獲得のみならず、プレス取材やイベント登壇、メディアへの寄稿の機会につながっています。

読者が知りたいことを記事にする

『Six Apartブログ』の記事で、工夫しているポイントはありますか?

誰のためのブログなのか?という観点でいえば、『Six Apartブログ』は、オウンドメディアを運営されている方が読者になりますので、その方々に役立つ、実践できる内容になるよう考えています。

また、オウンドメディア担当者のためのメディア運営と平行して『オウンドメディア勉強会』というグループを主催しています。事業会社でオウンドメディアを担当していたり、またはそのような方をサポートする立場の外部の編集やライターの方が230名ほど集まる会です。主に、Facebook グループでの情報交換と、毎月一回テーマに沿ったディスカッションを行う勉強会を開催しています。

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他社のメディア運営のノウハウを直接聞くことが出来る少人数のディスカッションは、生々しい現場での実践的な情報が多く、好評をいただいています。参加者全員がアイデアを出しノウハウを紹介するギブ&テイクの情報交換を通じて、全員が学び合う場となっています。

勉強会の参加者は、ほぼ『Six Apartブログ』の読者層と同じです。ディスカッションの中で出てきた、彼らのやりとりや気づきは、メディアの記事ネタとしても活用しています。毎回、勉強会のレポート記事を公開していますし、参加者に寄稿していただくこともあります。また、Web担当者フォーラムさんに、勉強会参加メンバー有志での連載記事を持たせていただくといった、展開も生まれています。

オウンドメディアはインスタントに実績がでない

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シックス・アパートさんではオウンドメディアのKPIをどうされていますか?

定量的な評価軸としては、シックス・アパートとつながり続けてくれる人をどれだけ増やせるか?があります。具体的に言えば、メルマガ登録者数や、SNSのフォロワー数を計測していますね。

定性的な評価軸では、記事への反響をソーシャルでシェアされているコメントの内容を見ています。記事が「役にたった」や、「実践してみた」というコメントは、数字からは読み取れない部分も見ています。

オウンドメディアの記事が、キュレーションメディアなどに転載されているようですが、何か仕掛けられているんですか?

はい。Six Apart ブログの記事は、https://blog.sixapart.jp/ という私たちのドメイン以外の場所でも、多く読まれています。たとえば、他社メディアに転載したり、いくつかのオウンドメディアキュレーションサイトや、ニュースアプリへも記事を配信しています。いまは分散型メディアの時代ですから、読者がいる場所に情報を提供し、シックス・アパート発信の記事を「読んでもらう」ことを優先しています。

そうなると、自社ドメインのメディアでViewがどれぐらいあるかの計測は無意味になりますね。数字的な評価はあまりされていないということですか

はい、自社ドメインに来て頂いて、フォローしてもらうのが一つの目的ではありますが、それだけがゴールではありません。

多数のオウンドメディア事例記事がメディアに掲載されていますが、その多くは成功事例として紹介されています。しかし実際には、華々しい成功事例のようにすぐ自社でも成果が得られるものでもないですから、短期的な数字に一喜一憂するというよりも、コツコツと継続してストックした記事が検索やリードなどのゴールにつながることを重視したほうがよいと思います。メディアの立ち上げ方、ゴール設定、改善の方法などは、勉強会メンバーによる連載記事「10社の事例でわかるオウンドメディア運営の「企画」「構築」「成果」ノウハウ コーナーの記事一覧 | Web担当者Forum」に詳しく書かれています。

cloudpack.mediaなら、まず継続できる体制を作ることが最初に目指すべきところなのかもしれませんね。

継続ですね、頑張らねば。ところで先ほどからお隣にいる、そのオレンジのゆるキャラみたいなのは何ですか?

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シックス・アパートの公式キャラクターの「トフ」のぬいぐるみです。場を和ませる雰囲気づくりに「トフ」が活躍しているんですよ。トフも、Six Apart ブログに記事を書いています。箸休め的なゆるふわな内容も、たまには良いかなと思っています。

今日は本当にありがとうございました。大変参考になりました。

 

取材後記

壽さんは『Six Apartブログ』の編集長としては3代目なのだそうだ。初代から2代目にかけて、社内のノウハウを提供するブログとしていたところを、壽さんが引き継いだタイミングで、オウンドメディア研究ネタを中心に据えたという。

オウンドメディア勉強会の参加者は、基本的に自社のオウンドメディアに何かしら関わっている。参加者がお互いのオウンドメディアに寄稿しあうというのは、ペイドメディアでは決して実現しない、オウンドメディアならではのやり方と言えるのかもしれない。

壽さんを取材する中で、たびたび「広報の視点」を感じていた。編集経験のなさは、広報の視点で工夫を凝らすことで補えるのだ、という想いが募った1時間だった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

聞き手:増田隆一(marketing communication, cloudpack)