突然ですが、証券保管振替機構(ほふり)のサイトでアイレットを検索してみましょう。

https://www.jasdec.com/

一般債振替制度>銘柄公示情報(一般債)>銘柄の正式名称の検索窓に「アイレット」です。

と書いたところで、多くの人にとっては面倒だと思うので、検索結果を画像で貼っておきますね。

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とどのつまり、こういうことです。

  • アイレットの社債が発行された
  • しかも『無担保』である
  • りそな銀行さんがアイレットの社債の発行代理人(財務代理人)
  • 金額は6,000万円

ざっくりと輪郭は掴めますが、『無担保』ってどういうこと?
『融資』と何が違うんだろう? という疑問が。

ということで…

りそな銀行さんにお話を伺っちゃいました!

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りそなさん、なにとぞ超ビギナー向けに解説をお願いいたします!

はい、では。
まず社債と言っても、種類がいくつもあります。

まず、今回のアイレットの社債は、下記の表にある『金融機関(銀行)引受私募債』にあたります。

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(引用:社債の活用 – 経済産業省

最初に『公募』と『私募』の違いに着目しましょうか。

『金融商品取引法』という法律の名前は聞いたことがあるでしょう? 簡単に言えば、投資家を募る際の投資家を保護するための法律です。正しい情報を開示することによって投資家を保護するという考えで、広く一般に投資を募る『公募』は、手続きに詳細な書類が必要です。例えば、発行会社の情報を含め、有価証券の内容について情報開示が必要になるとか。

それに対して『私募』は、いわゆる「少人数私募」と「プロ私募」があり、今般のアイレットの社債は、投資家が適格機関投資家、つまり『金融のプロ』に限定された「プロ私募」に該当し、手続き負担が少なくなります。

今回のアイレットの社債では、りそな銀行という金融のプロがその総額を取得し、「プロ」以外には譲渡できない仕組みとしていますので『プロ私募』とか『私募債』と呼ばれる社債になるわけです。

『ほふり』のサイトを見ると、私募債だけで5〜6万件も掲載されていますから、そんなにレアな話ではありませんが。

しかし『無担保』なのですよね?

ええ、そうです。社債については『無担保』です(笑)

一般論としては、保証人としての立場で担保を提供していただいているケースはあります。

今回のアイレットのケースでは、保証人としての立場でも担保提供をいただいておりません。『ほふり』のサイトではそこまでは確認できませんが。

戦後の市中に出回るお金が限られていた時代は、投資家も少なかったですし、その後しばらくは『担保付』私募債が主流でした。当時は、純資産が10億円以上ないと発行できなかったので、今よりもハードルが高いものでした。

石原都知事の時代に中小企業の資金調達手段を増やそうという施策が取られ、信用保証協会の保証が現れ、さらに銀行保証の私募債が増えました。2001年頃が転機ですね、なので昔のようなステータスはなくなりましたね。

ただ、やはり社債は一般の融資と異なる点があるので金融機関それぞれに適債基準があって、それを満たさないと無担保社債の引受をしません。回収に不安があるような企業は、まず無理でしょう。

銀行保証の私募債は、文字どおり銀行が100%保証することになります。万が一、期限にアイレットから社債の元金または利金の支払いが滞ると、りそな銀行が保証人ですから保証を履行し、今度は社債権者としてではなく保証人としての私たちが債権者になるわけです。

『融資』とは何が違うのでしょうか?

今回のアイレットの社債は、りそな銀行が最後まで保有するつもりですので、いわゆる『融資』にかなり近いと言えます。

しかし、私募債は融資と比べると、償還期限に支払えなかった場合のルールが厳しいので、融資よりも高い目線で、と言いましょうか、無担保社債は、融資よりも厳しい審査が行われます。

あと、私募債は償還期限が長いというのもありますので、運転資金やキャッシュフローを良くするためのお金のみならず、開発資金などの将来への投資という観点での利用にも適していると言われています。

なるほど。弊社の新しい大阪オフィスの投資に充てています。使途としては正しかったのですね

アイレットの大阪事業所の成功に応じて、キャッシュフローがよくなるという状況を見込んでの社債の引受になりますので、非常によい使途だと思います。

今回の社債発行は、アイレットのメインバンクとして、りそな銀行からアイレットに提案しました。

  • 財務上のリスクが低い
  • 業界内の位置付け(主要プレーヤー)
  • 将来においても返済への懸念がない(見通しが明るい)

これらの観点で、アイレット社は、りそな銀行から高く評価されている証とお考えください。

取材後記

アイレットの社員の多くは、自分たちは「ベンチャー」企業だと言う。「ベンチャー」という響きには、何か夢もあるし、伸びしろもあって、勢いや活気も感じられて、と良い意味でとらえている節がある。それがアイレットの魅力なのも事実だ。

アイレットは設立から十数年余、社員数も150名を超え、今も成長フェーズにある。働き方こそ「ベンチャー」のままだが、その箱舟はいわゆる「ベンチャー」から「中小企業」として評価されるステージに入っている気がする。社会からは「企業の品格」がチェックされるようになり、評価は「事業の成長性」と「財務面」にフォーカスされるだろう。

ベンチャー企業が潰れるときの直接的原因は資金繰りにあると言われるが、りそな銀行さんから聞いた『無担保社債』の説明は、アイレットの財務状況が健全であることの証となる。

キャッシュフローが堅いとすれば、アイレットは進撃するのみだ。身の丈をちょっと超えたチャレンジにはやはり資金がいる。

筆者は何十年か先にこの記事が再び読まれるときのことを想像している。あの『無担保社債』は進撃の始まりに過ぎなかった、と。

「成長したい」「面白い仕事にチャレンジしたい」とベンチャー企業を転職先に選ぶ人が増えている。この記事を読んで、安心してアイレットの戸を叩いてくれる人が増えると嬉しい。

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りそな銀行さんからいただいた無担保社債のトロフィーは、cloudpackのオライリー全巻が並ぶ本棚の上に飾ってあります。ご来社の際には、チラリと覗き込んでみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

聞き手:増田隆一(marketing communication, cloudpack)