「はてなブログ」や「はてなブックマーク」などBtoC向けのコンテンツプラットフォームを提供する株式会社はてな。知名度のあるBtoCサービスが目立つ中、BtoB向けのサービスとして、2014年からSaaS型サーバー監視サービス「Mackerel(マカレル)」の提供をされており、順調にユーザー数を増やしています。

実は2018年7月より「Mackerel」のAWSインテグレーションの拡充を目的に、アイレットと共同開発のプロジェクトを開始しました。

「開発の内製化」のイメージが強いはてな様が、なぜアイレットと共同開発するのか?また「Mackerel」のビジネス展望など、はてな様に根掘り葉掘り伺ってみました。

第1弾では、「Mackerelのビジネス展望」をテーマに、株式会社はてなMackerelチーム サブプロデューサー 兼 チーフエンジニアの松木雅幸様(写真右)とアイレット株式会社 執行役員 後藤和貴(写真左)の対談を実施し、「はてな様からみたAWSの立ち位置」や「Mackerelが目指すもの」についてお話いただきました。

まず、「Mackerel」のようなBtoBサービスの提供を開始した背景を教えてください。


はてなでは「はてなブログ」や「はてなブックマーク」などコンシューマー向けにサービスを提供しているのですが、全て内製で開発してきました。それらの開発で培った技術やノウハウを活かして企業向けにビジネスを展開しているのが最近のはてなです。「Mackerel」は、数千台のサーバーを使って運営している自社のサービスを運用するために開発したのですが、SaaSとしてサービス化しようと考えたのが背景ですね。他にも企業向けにオウンドメディア専用のCMSを提供していたりします。


「Mackerel」は2016年からAWSインテグレーションの提供を開始し、2017年には国内企業発のサービスで初めて「AWS DevOpsコンピテンシー」の認証を取得していますよね。松木さんから見て「AWS」はどんな立ち位置だったのでしょうか?


個人的には他のクラウドサービスに比べて、AWSは圧倒的にリードしている印象でした。実際にAWSインテグレーションの提供を開始してからのユーザーの反響も非常に大きかったですし、Mackerelユーザーの中でもAWSインテグレーションを使っている割合は非常に高いです。
また、オンプレミスからクラウドへ移行することを考えた時に、AWSは移行しやすいサービスだと感じています。移行の選択肢として上がることも多いのではないでしょうか。最近では金融業界などもAWSを採用していますし、移行観点だと特に優位性のあるクラウドサービスだと感じています。


そうですね。アイレットでも多くの企業様のAWS移行を支援させていただいています。近年ではエンタープライズ系や教育機関など、さまざまな業界でAWSが採用されていますね。


オンプレミスのシステムとクラウドをうまく組み合わせるハイブリットクラウドも注目されていますが、Mackerelではオンプレミスとクラウドのどちらの環境も監視ができるので、併用する際にMackerelで監視を一本化することもオススメしています。


オンプレミスとクラウドの監視を一本化できるのは助かりますね!ちなみにはてな様の提供するサービスではAWSを利用されていますか?


もちろん使っています。2008年頃に自社向けの仮想化基盤を作って、全てのシステムを乗せる計画をしていましたが、パブリッククラウドの進化が著しく、クラウドに移行する流れになりました。2011年に、創業間もないころから提供していた「はてなダイアリー」とは別に、新サービスとして「はてなブログ」を作ることになったのですが、インフラにはAWSを採用することが決まりました。この時はサービスの開発とAWSの活用のどちらもはてなにとってのチャレンジでした。


「Mackerel」もAWS上で稼働しているのですか?

2014年のサービス提供開始時点ではオンプレミス環境で稼働していました。ユーザー数や提供機能が増えてサービス規模が拡大していくなかで、時系列データベースのボトルネックが出始めたことをきっかけに、サービスの刷新を含めてクラウドをフル活用したアーキテクチャに変更することになりました。そして2017年にAWSへ完全移行しました。もちろん移行作業も自社で行ったため、ある程度AWSの知見を得ることができました。


我々としても、AWSの採用、完全移行など、はてな様のチャレンジは非常に嬉しいです。

「監視」はビジネスを成長させる

順調にユーザー数が増えている「Mackerel」ですが、今後の展開を教えていただけますか?


最近「入門 監視」という書籍が出版されたのですが、実は付録部分を執筆させていただきました。一言で言うと「みんな監視をしましょう!」って内容ですが、「監視をする」ということの裾野を広げていくことがまずは第一段階だと考えています。


裾野を広げるとは?

「監視」ってコストセンターだと思われがちで、専門家がいないと難しそうというイメージを持たれています。でも実はそうではなく、簡単に設定できるし、設定すれば安心できるということがあまり知られていないと感じています。


確かに「難しそう」というイメージを持たれがちですね。運営しているWebサイトやサービスが停止してしまった時、企業が受ける損害はかなり大きいです。「監視」はサービス停止を回避するための手段ですが、サーバーが原因で正常にサービス提供ができない時に、担当者がすぐに対応できるようにするためには必要不可欠なことです。アイレットでも「監視」の重要性を認識して、運用・監視の代行サービスを提供していますが、世の中的にも監視のイメージを変えていく必要はありますね。


その通りです。例えばソフトウェアを開発する際に、一回テストコードを書かないと後から変更ができなかったり、スピードが遅くなったりしますよね。ですので、現在はテストコードを書くのが当たり前になりつつあります。「監視」も同じでサービスの状態をちゃんとモニタリングできるように監視設定をする方が長期的にサービスを安定運用できますし、変化させ続けることも可能です。ビジネス成長させるためには「監視」が必要で、手軽に導入ができることを「Mackerel」を通じて広めていきたいと思っています。


僕も「Mackerel」を利用していますが、設定が非常に簡単で、使いはじめた1日目でSORACOMの利用状況を確認するカスタムメトリックプラグインを実装できました。今後は将来予測・異常値検知などができるAI機能などもあったら嬉しいですね。


ありがとうございます。はてなとしても今後はコンテナやマイクロサービスの需要が大きくなると考えているので、機械学習などの機能もどんどん増やしていきたいと思っています。期待していてください!

最後に

AWSは新サービスが続々と発表されていますし、AWSを利用するユーザーも多いので、AWSの機能追加スピードにMackerelも追随していかなければいけません。監視サービスの中でトップを目指すには、今後もアイレットさんの知見をお借りしてユーザーに満足してもらえるように新機能を開発していきたいと考えています。そして共同開発だけでなく、一緒に商材を作ったり、もっとガッツリと組んで様々なことにチャレンジしていきたいです!


ありがとうございます。アイレットは新サービスが誕生するとすぐに触って導入してみる文化があります。積極的に新機能・新サービスについても提案させていただきますね!

編集後記

はてな様の「Mackerel」は監視における運用工数を削減し、Webサイトなどお客様が本来取り組むべき開発などに注力できるよう手助けをします。この考え方は実はアイレットと同じです。アイレットは「お客様がお客様のビジネスに集中していただく」をビジネステーマとして掲げており、お客様のビジネス成長にも繋がると思っています。

アイレットとしても、「Mackerel」のビジネス成長に少しでも寄与できるように開発者としての一面とサービス提供側の想いを持ち、今以上にMackerelユーザーに満足してもらうため、新機能の開発を引き続きご支援させていただければと思っています。今回の共同開発を通じて、改めて「監視」の重要性を知ることできましたし、その大切さをはてな様と一緒に少しでも広めていけたらと考えています。

実は取材の終了と共に、コンテナを監視する「Mackerelコンテナエージェント」、機械学習を用いた「ロール内異常検知」という機能もリリースされていました。Macerelの今後の展開も要チェックですね!

「AWSインテグレージョンの共同開発プロジェクト」については第2弾に続く。