こんにちわ。たなべです。本ブログへの初めての投稿になります。
どうぞよろしくお願いします。

年の瀬の忙しい時だと思いますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

先日、AWSが主催する『AWS Partner Tech Study Day 2023』に参加してきました。自分にとっては初めてのStudy Day参加でした。その中で w-a mini Bootcamp に参加したので、セミナーの様子や理解が深まった部分など少しまとめてみました。AWSのパートナーセミナーに参加してみたいと思ってもらえたり、Well-Architectedレビューを実施する人の参考になれば嬉しいです。

尚、少し前にWell-Architeted Templatesという機能が追加されレビュー自体もやりやすくなってますので気になる方はこちらの記事も参考にしてみてください。

Well-Architected Templatesが出たので使ってみた

セミナーの概要

  • 開催日時
    • 2023年11月21日(火) 13:00~18:00
  • 場所
    • AWS Japan 目黒オフィス

そもそも『AWS Partner Tech Study Day』ってナニ?

AWS Partner Tech Study Day は AWSのパートナー企業向けに開催されるクローズドなセミナーで、今回は AWS Top Engineer の方や AWS All Certifications Engineer の方などを対象に開催されたようです。

2023年7月に開催された AWS GameDayのブログ記事の中で『AWS Partner Tech Study Day 2023』がちょこっとだけ紹介されていたので転載します。

AWS GameDay -Going Serverless- for AWS Top Engineers 2023 年 7 月開催レポート

当日のタイムテーブル

時刻 内容
13:00 ~ 13:10 開始のご挨拶
13:10 ~ 13:50 基調講演
14:00 ~ 17:00 各種セッションやハンズオンなど
17:10 ~ 18:00 スペシャルセッション
18:00 ~ 20:00 懇親会

 

セッションや個別ルームの説明

セッション

  • DBセッション
  • Securityセッション
  • Analyticsセッション

 個別の部屋

  • DBスペシャリスト部屋
    • DB(DynamoDB)に関する特別コンテンツが開催される所
  • mini BootCamp部屋
    • Well-Architected Mini Bootcampが開催される所
  • ハンズオン部屋
    • 好きなハンズオンを選んでモクモクする所
  • SA待機部屋
    • スペシャリストなSAさんが待機していてセッションFAQなどができる所

参加しようと思った理由(動機)

  1. タイミングがよかった
    • ちょうど担当している案件でWell-Architectedレビューを実施していてタイミングがバッチリだったの申し込みました。
  2. Well-Architectedレビューの理解を深めたかった
    • Well-Architectedレビューの柱はいくつかありますが『運用上の優秀性の柱』はシステムの運用に関する重要な柱なのでベストプラクティスやアンチパターンなどより深く理解したい、と思いました。
  3. Well-ArchitectedレビューについてAWSの方の話しを聞いてみたかった
    • AWSが提供するドキュメントもしっかりあって関連する記事も沢山あるんですが、解釈や意図など疑問に思うこともあったりするので、AWSのソリューションアーキテクトの方の話しを聞いてみたいなと思いました。
  4. いろんな会社の人の話しを聞いてみたかった
    • 他の会社の方も参加されることで貴重な話しを聞けるいい機会かなと思いました。
  5. 単純に目黒オフィスに行く理由を作りたかったという事もあります。

 

W-A mini Bootcamp(運用上の優秀性の柱)

今回参加した W-A mini Bootcampでは「そもそもWell-Architectedレビューって?」「運用の優秀性ってどういう事?」といった説明は殆ありませんでした。パートナー向けのセミナーということでそういったインプットは各自が事前に行うことで、当日はより実践的なトレーニングに時間を割くようになっているようです。

『運用の優秀性』について

運用上の優秀性の柱 – AWS Well-Architected フレームワーク

『運用の優秀性』は AWS Well-Architected レビューの6つの柱の一つで、下記の通り定義されています。

Amazon では、運用上の優秀性とは、優れたカスタマーエクスペリエンスを着実に提供しながら、ソフトウェアを正しく構築するために取り組むことであると定義しています。

また運用上の優秀性の目的は、下記のように記載されています。

運用上の優秀性の目的は、新機能とバグ修正を迅速かつ確実にお客様に提供することです。運用上の優秀性に投資している組織は、新しい機能を構築し、変更を加え、障害に対処しながら、着実に顧客満足を実現しています。その過程で、運用上の優秀性は、デベロッパーが高品質の結果を常に達成するために役立ち、継続的インテグレーションと継続的デリバリー (CI/CD) を促進します。

(『運用上の優秀性 – 運用上の優秀性の柱』から引用)

 

これら目的を実現するために、AWSが定義したベストプラクティスを実践しそれをレビューしていく、ということになります。

mini Bootcamp の進め方

  1. チームを編成する
  2. 与えられたシナリオを読んで状況をイメージする
  3. Well-Architectedレビューを実施
  4. チームの意見をまとめる
  5. 各チーム毎に発表

1. チームを編成する

miniBootcamp は参加者が4人ずつ4つのチームに分かれて、与えられたテーマについて議論し、チームとしての意見をまとめていく、というスタイルで開催されました。
弊社からは参加者が4人いて同じチームにならないように調整して頂きました。違う会社の人と話せるようにという配慮ですね。ありがたいです。

2. 与えられたシナリオを読んで状況をイメージする

まず お題 を読み込みます。お題は仮想のユーザ企業を想定した内容で、システムの話から組織や教育、運用の話まで思っていたよりも結構具体的に記載されていました。この読み込む時間が7分だったので結構大変でした。自分は半分くらいまでしか読めなかった。あとはざざっと目を通した程度。イメージ的にAWS認定試験の問題をもっと細かくして長文にした感じですね。

3. Well-Architectedレビューを実施

チーム毎に『運用上の優秀性』に関する項目が3つずつ割り当てられるので、その項目ごとに AsIs/ToBe をディスカッションしていきます。

4. チームの意見をまとめる

ディスカッションした内容を後で発表できるよう各チームホワイトボードに記載していきます。実際に書き出してみると新しい発見もあって面白かったです。

5. 各チーム毎に発表

最後にチーム毎にディスカッションした内容をまとめて発表するといったスタイルでした。

 

お題の要約

  • 舞台は動画配信サービスを提供している会社
  • 2年前にAWS上にシステムを構築して現在ユーザ数は30万人以上
  • 最近、新規ユーザ登録数よりもユーザの解約率が高くなっていて困っている
  • CEOが原因究明に努めるように指示を出した。
  • ユーザーの解約を防ぐために緊急対策チームを編成する
  • 緊急対策チームの一員として現状(As-Is)を分析し、あるべき姿(To-Be)を提示してくれ
  • 経営 陣および技術陣に対して提示する必要がある。
  • 現場へのヒアリング結果が資料にまとめられている。

 

現場へのヒアリングには実際の運用状況、開発の状況、アラート対応時や障害対応時の状況など細かく記載されていました。

チーム分けと担当するW-A質問項目

チーム W-A質問No W-A質問タイトル
Team1 OPS01 組織の優先順位
OPS3 組織カルチャー
OPS5 運用のための設計
Team2 OPS02 関係性と所有権
OPS04 オブザーバビリティを実装する
OPS06 デプロイのリスクを緩和する
Team3 OPS03 組織カルチャー
OPS07 運用準備状況と変更管理
OPS09 運用状態の把握
Team4 OPS04 オブザーバビリティを実装する
OPS08 ワークロードのオブザーバビリティの活用
OPS10 イベントへの対応

 

自分はTeam3になりました。同じチームには事業会社の方やSIerをやられている方などいらっしゃいました。軽く自己紹介と名刺交換などさせてもらったりワイワイしてました。

グループディスカッションのサマリ(Team3)

Team3では限られた時間で全てを確認するのは難しいと判断し、項目を選択することにしました。選択基準はリスクレベルで に設定されている項目を対象に As-Is/To-Be をディスカッションしました。

OPS03:組織カルチャー

  • OPS03-BP02 『チームメンバーに、結果にリスクがあるときにアクションを実行する権限が付与されている』
    • 重要なアクションを特定の人しかできていないのはリスクが高い
    • 他の人でもできるように教育体制や権限委譲をした方がいい。
  • OPS03-BP06 『チームメンバーがスキルセットを維持、強化することができ、それが推奨されている』
    • 入社後のトレーニングがあまり明確になっていない
    • 教育プログラムをもう少し整備したほうがよさそう。
  • OPS03-BP04 『タイムリーで明確、かつ実用的なコミュニケーション』
    • 軽微な問題が月次報告になっていて時間が空いてしまっている
    • もう少しタイムリーなコミュニケーションが必要なのでは。
  • OPS03-BP03 『エスカレーションが推奨されている』
    • エスカレーションはルールが定められてしまっている。
    • もう少しエスカレーションし易い形にした方がよいのでは。

OPS07:運用準備状況と変更管理

  • OPS07-BP03 『ランブックを使用して手順を実行する』
    • ドキュメントを保管しているが完全性が保たれていない。
    • 文書管理ツール・構成管理ツールなどを導入して常に最新版にアクセスできるようにする。
  • OPS07-BP01 『人材能力の確保』
    • 運用アラートが1名のみに通知されている。
    • アラートに対する自動処理を行う、また通知対象を複数名にする。
  • OPS07-BP02 『運用準備状況の継続的な確認を実現する』
    • 運用状況の見直しが評価されていない。
    • 定期的な運用評価を行う。

OPS09:運用状態の把握

  • OPS09-BP01 『メトリクスを使用して業務目標と KPI を測定する』
    • 業務目標やKPIが定められていない。
    • 動画の配信遅延・レイテンシーなど業績目標、KPIを定義する。
  • OPS09-BP02 『ステータスと傾向を伝達して運用の可視性を確保する』
    • インシデント対応の可視化ができてい
    • チケットシステムの導入やダッシュボードなど作成する。

感想・フィードバック

学びや発見

1. 技術領域だけでなくビジネス領域や組織など検討の対象として考える

Well-Architectedレビューの設問やベストプラクティスを実践するには、技術領域だけでは無くビジネスよりな領域、指標についても考える必要があると感じました。どういったビジネス課題を解決するためのシステムなのか、またそのシステムがどういったサービスを誰に提供していて、どんな組織、どんな人が携わっているのかなど幅広く見る必要があると痛感しました。自分ももう少し広い視野、複数の視点で捉えるように心掛けます。

2.ベストプラクティスはプロセスやフローなど非技術領域に関する事が意外と多い

ベストプラクティスはプロセスやフローなど非技術領域に関する事が意外と多かったです。特に今回対象として運用の柱の優秀性は運用が検討対象になっています。もちろん技術的に解決できることもありますが、システムを運用していく上では技術以外の部分も同じように重要なんだなと再認識しました。どうしても技術的な部分にフォーカスしがちなので気をつけます。

3. 適切に実践している事は他のベストプラクティスにも繋がる

設問やベストプラクティスは沢山あるのでバラバラのように見えますが大事な部分は繋がることがあるなと思いました。ゴールや目指している所の方向性は同じなので、1つの問題を解決するアプローチが他の問題を解決するベストプラクティスになっていたりすることもあります。全く同じでは無いかもしれないですが、適切に対応していくと別の設問のベストプラクティスにも該当していたりするので。しっかりと問題を見極めて適切な対策、アクションを取っていくのって大事だなと思いました。

4. 『これをやっていればOK』では無く個々の事象にしっかりと向き合う

一つのことが実現できていれば他のどのシステムでも当てはまるということではなくて、対象とするシステム、またそのシステムに関わる人、組織、会社それぞれ個別の事情や問題を抱えているので、それぞれ個別のアプローチが必要になってくると感じました。どうしてもこれやっているからOKだよねというのが見つかると同じように考えがちではあるんですが、それぞれ会社やシステム毎に問題や制約なども異なりますし、できる対策、改善策も違ってくるので個々の事象に向き合うのが大事だなと思いました。なかなか大変ですけど。

体験できたことや経験できたこと(Study Dayに参加してどんな体験、経験ができたか)

  • 1チームが4名だったので、同じテーマや設問、ベストプラクティスについて色んな意見を聞くことができました。
  • 参加されている方々が職種も色々で日々の業務も異なるので、いろんな視点の話しを聞くことができました。
  • お題に記載されていた会社や『Sさん(登場人物)』の状況は実際にどの会社でもありそうな内容だったのでより具体的な状況をイメージしながら参加することができた。
  • ファシリテートして頂いたAWSの方にそれぞれの設問やベストプラクティスを解説して頂き、チームの発表、コメントなどについても深掘りするような質問や事例みたいのを話してくれたので理解が深まりました。参加者の理解度を深めるようなファシリテートができるのは凄いですね。ぜひ見習いたいです。

まとめ

この記事では先月受講したAWSのパートナー向けセミナーの内容についてまとめました。Well-Architectedレビューは一人で黙々と読んで確認するよりも、何人かでディスカッションしながら進めていくほうが理解も深まりより適切な判断にも繋がるのかなと思いました。何よりやってて楽しかったです。今回は割愛しましたが W-A miniBootcamp以外のセッションもクローズドなセミナーならではの深い話しを聞くことができました。また機会があれば参加してみたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございます。