はじめに
アイレット株式会社 クラウドインテグレーション事業部 CSMセクションの言上です。
引き続き、8/1-8/2にパシフィコ横浜で開催されているGoogle Cloud Next Tokyo ’24に参加しています。
1日目のセッションである、日本特殊陶業株式会社様の「マイグレーションサービスを活用して VM の IP アドレスもそのまま Google Cloud へ移行した話」を拝聴しましたので、その内容をまとめます。
参加の経緯
私自身、過去に本セッションのキーワードとなる、オンプレミスや他クラウドのVMからGoogleのGCVEに移行するMigrate to Virtual Machinesを利用し、Google Cloudへの移行を経験したことがありました。
その際は、並行稼働を前提とした移行であったため、移行前後のIPアドレスは異なるIPで実現しました。
今回、「VMのIPアドレスもそのままGoogle Cloudへ移行した」というキーワードを拝見し、どのような仕組みで実現したか、実現する際に注意点があるのか?という点を確認したく、本セッションを拝聴しました。
ハイブリッドサブネット
通常、オンプレミスとクラウドはIPアドレスレンジは異なるレンジで設定します。
オンプレミスとクラウドが通信するためには、ネットワーク経路を結ぶ必要がありますが、その経路をルーティングする必要があります。
一般的にはIPアドレスレンジを参照し、このレンジはオンプレミス、このレンジはクラウド、というルーティングする必要があるため、同じIPアドレスレンジを設定するとルーティングが迷ってしまい、上手く通信できないという事態となります。
これを解消するために、ハイブリッドサブネットというGoogle Cloudの新しい技術を利用したとのことでした。
https://cloud.google.com/vpc/docs/hybrid-subnets?hl=ja
こちらは現在プレビュー機能とのことですが、とても興味深い内容です!
オンプレミスから移行のロードマップについて
- オンプレミスからクラウドへの移行は手法によって難易度、期間が異なる
- Rehost
- Replatform
- Refactor
- 移行先によって利用するサービスが異なる
- GCEへの移行:Migrate to Virtual Machines
- Cloud SQL、AlloyDBへの移行:Database Migration Service
- コンテナへの移行:Migrate for Container
まずはクラウドへRehostし、その後クラウドネイティブに変えていく手法として、移行サービスの紹介がありました。
実際の移行も、一足飛びでRefactorを実施するというのは難易度が高いケースが多く、まずはクラウドに打ち上げる、という手法が現実的だと考えます。
Migrate to Virtual Machines (M2VM)
簡単にM2VMを利用した移行の流れが紹介されました。
M2VMの利用方法については、過去に記事を書いてるので、興味ある方はそちらもご参照ください!
ハイブリッドサブネットの仕組み
今回の移行事例の目玉である、ハイブリッドサブネットの紹介です。
これまでは、オンプレミスと同一サブネットを実現する場合、VMware HCXを利用し、L2延伸、いわゆるレイヤー2を仮想的にネットワーク定義する手法がありました。
ただし、L2延伸をする際は、VMware vSphereのバージョンやエディションの指定があり、実際には難しいケースがありました。
今回、プレビュー版ではあるものの、ハイブリッドサブネットという新たな手法が登場したことで、選択肢が広がりを感じます。
- Proxy ARPの仕組みを利用し、オンプレミス、クラウドと離れているが、あたかも同一ネットワークであるかのように定義される
- Proxy ARPは、他端末宛のARP要求に対して、代わりに応答する機能
- おそらくですが、Proxy ARPに仮想的に端末情報を登録することで、オンプレミス、クラウドの異なる拠点間であっても、どこに端末があるかを判断しているのだろうと思われる
移行事例とTips
日本特殊陶業株式会社様より、どのように移行を実施したか、移行で何が苦労したかの紹介がありました。
- システムのIPアドレスの引き継ぎが必須要件
- ただし、新しく建て直しはしたくない
- M2VM + ハイブリッドサブネットを採用
- 万全に移行するため、ハイブリッドサブネットの検証から始める
- 検証で問題が発生したが、事前に潰し込みや手順の確認が出来た
- 一度検証に失敗したから諦めるのではなく、解決策を探し、移行を実現した
- クラウド移行は成功したものの、その後の課題についても紹介
- 停止が出来ないサーバは移行が難しく、別の手段が必要
- 30TBを超えるサーバはカットオーバー(クラウドへの切り替え)に1日以上かかる
- これまでVMwareを利用してきたことから、利用部門への教育が大変
- 移行チームとネットワークチームが異なるチームであったため、その調整が大変
ハイブリッドサブネットを利用したクラウド移行が上手く行った実績や方法だけでなく、苦労した点や、クラウド移行に伴う課題感を紹介いただき、大変勉強になりました。
特に、クラウドに移行することで、これまでのやり方が変わることに対する反発は、ハイブリッドサブネットでなくとも発生する課題です。セッションでもおっしゃっていましたが、地道に教育、啓蒙活動を行うことが一番の近道であると感じますし、この部分が一番大変だと思います。
まとめ
過去にM2VMを利用した移行は経験しましたが、ハイブリッドサブネットの登場でより柔軟な移行が出来るようになると期待します。
Google Cloud Next ’24では実際の事例を元に、利用者の良かった点、苦労した点が伺えるため、ただサービスを検証するだけでは得られない知見を得ることができます。
引き続き、興味のあるセッションを拝聴し、知見を共有できると幸いです。