はじめに
Google Cloud Next Tokyo ’24 も早いもので今日で最終日となります。
なんと、Day 0 の潜入動画 が Google 公式から出ていたので、実質 3日目ですね!
今日もたくさん、セッションに参加して、セッションレポートをどんどん出していきます!
Google Cloud x Security に興味のある方は、ぜひ iret.media や X (旧: Twitter) をフォローしてくださいねっ。
(旧 Twitter 側でつぶやくのは、ボーダーコリーの写真がメインですがっ)
アイレットも犬好きさんが多くて、昨日の懇親会では犬談義で盛り上がりました。
なんと、昨日も今日も、基調講演の席の場所がほとんど一緒。
なので、写真のアングルが一緒だとおもいますが、ちゃんと Day 2 (実質 Day 3) です。
早速、本日も基調講演のセッションレポートをお届けします。
セッション内容
Day 2 の基調講演は、Day 1 が経営層に向けたメッセージであるのに対して、開発者向けに注力されていました。
Day 1 の『生成 AI を試すから使う』というメッセージを実現するため、開発者に対してメッセージを伝える形の基調講演でした。
Google Cloud 渕野 大輔 様
Day 2 は、Google Cloud 渕野 大輔 様の登壇で始まりました。
開発者向けに生成 AI をどのように活用していくか? をテーマとして話がありました。
2024 年は、生成 AI そのものの開発よりも、様々な分野に向けたアプリケーション開発が増えています。
これは、企業が生成 AI を試すフェーズから使うフェーズに移行したためと考えられています。
企業として生成 AI を活用する際の課題はハルシネーションです。
これは、生成 AI の学習時点の情報を元にして正しくない情報を作成するものです。
この課題に対して、グラウンディングなどの技術を活用してハルシネーションを抑制し、アプリケーションを開発する必要があります。
このような生成 AI を活用して開発されたアプリケーションを AI エージェントと呼んでいます。
企業の課題を解決する生成 AI を作り上げるためには、いくつかの段階があります。
モデルを選ぶ => モデルを使いこなす => AI エージェントとして作り上げる、という 3段階です。
Vertex AI は、AI エージェントの作成をノーコード・ローコードで支援します。
今、エンジニアに求められるのは『How you build => What you build』であり、何を開発してどのようにビジネスに貢献するかにシフトしているとのことです。
日本テレビ放送網株式会社 辻 理奈 様
独自の AI エージェント開発事例を、日本テレビ放送網株式会社 辻 理奈 様にお話しいただきました。
辻様は、データや AI を活用する DX Platform という部署で活躍されているとの事です。
日本テレビ放送網株式会社様の課題は、TVer に効果的な広告出稿を行うことが課題としてありました。
今までは、性別・年齢など人ベースのターゲティング広告をおこなっていました。
これを、コンテンツベースの広告 (コンテクスチュアル広告) に変革する必要があったとのことです。
この課題を解決するために、Gemini x コンテクスチュアル広告を実現しました。
Gemini は、マルチモーダル x ロングコンテクストの生成 AI であり、Google Cloud 製品とのシームレスな連携が可能、また、周辺プロダクトも充実しています。
これらのメリットがあるため、 Gemini を用いて AI エージェントを作成したとのことでした。
たとえば、動画の内容から、動画に含まれる情報を解析し、分類をおこなって効果的な広告を実施しているとのことです。
効率的な生成 AI 利用のために、処理の中で 6 回の Gemini 呼び出しを行っています。
この処理に Context cache を実施することで、コストの最適化も図っているとのことでした。
Vertex AI Agent Builder を用いることで、クリックとテキストベースの入力で、生成 AI エージェントを作成することができます。
また、BigQuery などと連携することにより動的に Query を作成してデータ検索することも可能です。
これらの技術を活用して、エンドユーザー用のアプリケーションが開発されたとのことです。
この手法のメリットは以下のとおりです。
- 開発スピードの向上
- カスタマイズが必要な場合でも、マネジメントサービスの組み合わせで実現可能
- クオリティの担保
- コンテキストキャッシュなど、コスト削減とクオリティの両立
このように、生成 AI は PoC から実用化のフェーズに入っているとのことでした。
動画 x 生成 AI
Google Cloud 渕野 大輔 様より、動画や画像に関わる生成 AI の話がありました。
Google Vids というソリューションは既存の動画を選択して、コンテキストを入力することで動画を作成することが出来ます。
動画作成を、スライドを作成するような形で作成できます。 動画作成の知見がない方も、簡単に動画を作成できるようになるとのことです。
Google Vids は自分の音声や、Gemini のプリセット音声でストーリーを作成できます。
アルファテストを実施している段階とのことです。
Imagen 3 は、テキストから画像を生成する、生成 AI のモデルです。
これは、The Forrester Web でリーダーポジションとして位置付けられています。
画像生成で問題となる、画像内への文字列の埋め込みも、コンテキストとして埋め込むことができるようになっています。
この機能により、画像生成 AI は、より使いやすくなっています。
Imagen 3 も、Private Preview 中とのことです。
Google Veo はプロンプトから動画を生成する、生成 AI とのことです。
年内にプレビュー予定で、自然言語を理解して動画を作成することができるようになるとのことです。
Google Cloud ブラッド カルダー 様
データエージェントについて、 Google Cloud ブラッド カルダー 様から話がありました。
データエージェントは『データ』から『意味』を取り出します。
Google Cloud にデータを簡単に取り込むよう、Gemini in BigQuery を活用することができるようになります。
また、Bigquery Data Canvas を活用することでアナリストは新たな Insight を発見することができるようになります。
データ分析を簡単に実現することができるよう、Gemini の最適化機能が一般提供されるようになりました。
これにより、クエリパフォーマンスが向上するとのことです。
シームレスにマルチモーダル分析を実施して、動画や音声といった非構造化データを構造化データと同様に分析できるようになります。
Gemini in Looker では、いくつかの機能がプレビューになっています。
たとえば、Gemini in Looker スライドの自動生成を用いることで、LookML などを用いてデータの可視化を簡単に実現するようになります。
この機能はパブリックプレビュー中とのことでした。
Google Cloud 高村 哲貴 様
Google Cloud 高村 哲貴 様より、データ分析のデモンストレーションが実施されました。
シナリオの最初に、データアナリストの高村様にメールが届きます。
企業の商品が急激に売れているとのことです。
データエージェントを活用すると、データエージェントがビジネス上の着眼点をピックアップしてくれます。
データエージェントを活用すると Gemini と BigQuery を組み合わせて、データに基づいた信頼できる回答をすることが可能となります。
また、そのトレンドの影響を分析することができ、相関性、メトリクスを見つけて、Insight を発見することができます。
需給のバランスの調査などもデータエージェントが実施することができます。
Gemini がマルチモーダルな生成 AI であるため、類似品の検索や、プロモーション方法の提案も実施することが可能となるとのことです。
ヤマト運輸株式会社 秦野 芳宏 様
生成 AI による、経営課題の解決についてヤマト運輸株式会社 秦野 芳宏 様より話がありました。
近年の傾向として、物流のあり方が大きく変化しています。
10年前と比較して、荷物の量は 1.6 倍になり、年間で23億個の荷物を運んでいるとのことです。
圧倒的なデータ量と AI 技術を持つ Google Cloud を活用して、配達の仕組みを改善したとのことです。
日々の荷物量に応じた担当エリアの割当や、最適なルートの提案など、ドライバーの知見を取り込んだ、きめ細かなサービスの提供をしているとのことです。
これにより、配達員の作業の平準化と、作業負荷の軽減を実現したとのことでした。
この仕組みは、アジャイル開発で現場の方や Google と連携しながら作成したとのことです。
この取り組みの意義として、以下があります。
社会課題解決のモデルケースと、世界のラストマイル配送への貢献です。
日本における社会問題に対して、先駆けてテクノロジーで課題を解決し、貢献できているとのことです。
また、ラストマイルの配送問題は世界中で発生しているため、その解決策を世界に対して貢献できるとのことでした。
現場 x テクノロジー x 経営で、効率的で持続可能な物流システムを構築するとのことです。
トヨタ自動車株式会社 後藤 広大 様
Code Agent では、開発者が新しい言語やコードベースへアクセスすることを提供します。
Gemini Code Assist の活用事例についてトヨタ自動車株式会社 後藤 広大 様より話がありました。
トヨタ自動車株式会社様では、自動運転やコネクテッドカーなどの技術への取り組みのほか、既存の仕組みの品質改善なども実施されています。
GKE で AI プラットフォームを構築することで、システムリソースの効率化が行えたとのことでした。
たとえば、AI 学習のためのGPU リソース効率化、システムスケーラビリティ、セキュリティ、コスト最適化などの課題に対応できたとのことです。
プラットフォームの効率化では、GKE Autopilot とイメージストリーミングを活用することで GPU 効率化を図れたとのことです。
これらの改善によって 10,000時間 / 年の工数削減を実施しているとのことです。
Cloud Workstations を活用したクラウドベースの開発環境の提供では、開発環境の維持管理やセキュリティ対策の効率化が実現できているとのことでした。
現在では Gemini Code Assist を検証中で、さらなる開発者の生産性の向上を図るとのことでした。
Gemini Code Assist について
Gemini Code Assist では、Gemini 1.5 の日本語モデルを活用した、日本語ベースの利用ができるほか、 IDE での利用が可能とのことです。
また、Gemini Cloud Assist が一般提供になりました。
Code Assist + Cloud Assist での利用が可能とのことです。
Google Cloud アンディ ガットマンズ 様
生成 AI のデータベース活用について、Google Cloud アンディ ガットマンズ 様より話がありました。
エンタープライズな生成 AI アプリケーションの基盤となるデータベースについて説明がありました。
Spanner は、グローバルで可用性の高いデータベースですが、生成 AI の学習で使うには機能が不足していると言われています。
それに対応するため、様々な機能が追加されています。
まずは、Spanner Graph (Preview) のリリースが案内されました。
Spanner Graph を用いることで、Graph 機能を用いるような生成 AI での利用が簡単になるとのことです。
(筆者注: ここでの Graph は有向グラフなどのグラフ理論のことを指しています)
一般的な Graph 探索を用いた利用が可能となるとのことです。
また、Spanner 全文探索・ベクトル検索が Preview で登場しました。
ベクトル探索は ScaNN 検索アルゴリズムに基づく高速な探索をサポートするとの事です。
Bigtable は、柔軟なスキーマ、スループット、高レイテンシをサポートするデータベースです。
Bigtable distributed counters が一般提供となりました。
また、Bigtable SQL Support として、SQL を活用した Bigtable の探索も可能となったとのことです。
Bigtable では、100以上の SQL 関数を使用できるとのことです。
Google Cloud はお客様のモダナイゼーションをサポートするために、機能を拡張しているとのことでした。
Google と Oracle のパートナーシップに基づき、Oracle Database と連携を強化し、またCloud SQL に、SQL Server Enterprise Plus edition の追加もサポートされました。
Google Cloud 橋村 抄恵子 様
Google Cloud のセキュリティ対策についてGoogle Cloud 橋村 抄恵子 様より話がありました。
2023年、Mandiant は全世界で1,200 件の侵害に対応しました。
M-Trends 2024 Special Report によると、侵入後の滞留期間は 9日間とのことで、脅威はより複雑化しているとのことでした。
また、DX 推進、人材不足など、セキュリティ対策が困難な状況が続くと考えられています。
Gemini x 脅威インテリジェンスで、この状況を解決したいとのことでした。
脅威インテリジェンスは攻撃者の情報を収集したもので、Mandiant などのほか、Gmail などの脅威インテリジェンスの知見を用いて疑わしいコードを分析することができるようになります。
Google Security Operations の Gemini 活用として、自然言語によるプロンプトベースの検索、分析、推奨事項の提示を実施できます。
Gemini in Security Command Center ではクラウドセキュリティの強化と AI ワークロードの保護を行うことが出来ます。
AI を守るには、ML モデルの保護、セキュリティの担保、プライバシーの保護など、いくつかの段階があります。
Google では、AI モデルをデフォルトで安全にしています。
Security Command Center では、保護対象を AI プラットフォームまで拡張するように対応しているとのことです。
また、Model Armor で不適切なプロンプトや応答をブロックできるようになります。
Google Workspace の保護
Google Workspace の保護について、Google Cloud 上野 由美 様と株式会社三井住友フィナンシャルグループ 高松 英生 様による話がありました。
株式会社三井住友フィナンシャルグループ様ではマルチクラウド (Microsoft 365 と Google Workspace) によるレジリエンスの強化を図っているとのことです。
従業員用のサービスについても、金融システムのようにレジリエンシー強化を図ったとのことで、従業員は Microsoft 365 と Google Wordspace のどちらも利用することができます。
IT x デジタルの活用が経営上重要となっているため、三井住友フィナンシャルグループでは経営戦略および事業戦略と結びつけることに注視しているとのことです。
攻めるための守りについても重要視しているとのことでした。
さいごに
開発者のために Google Cloud Innovators のメンバー特典などを通じて、開発者を支援していくとのことです。
また、第2回 生成 AI Innovation Award を開催するなど、生成 AI をビジネスにつなげる試みを Google は支援していくとのことです。
Google Cloud を活用し、開発スタイルの変化を楽しんで。とのメッセージで、Day 2 の基調講演は締めくくられました。
所感
生成 AI を検証から活用へ。という Google のキーワードは企業だけでなく開発者にも当てはまると考えました。
開発ツールは AI 化され、如何に AI を活用してビジネスの価値を生み出すかが開発者に求められていると思います。
アイレットでは、Google Cloud 生成 AI 導入支援サービスを提供しています。
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