アイレットでは、コーポレート統括本部が社員の勤務時間管理や36協定の遵守、時間外労働に関する業務を行なっています。労働環境を改善するために勤怠管理 SaaS を導入していましたが、データの集計や分析に課題を持っていました。
そこで、社内の開発チームに相談。データ活用による改善ができる環境構築を実現できました。

今回はプロジェクトを主導したコーポレート統括本部の清水と開発を主導した小林に、背景や開発に関することを聞いてみました。


コーポレート統括本部 部長
清水 那昭


クラウドインテグレーション事業部
小林 千紘

データ集計における工数削減のための自動化と管理職へのデータ配信が狙い

— はじめに、どのようなプロジェクトなのか全体像を教えてください。


社員の勤務時間に関して、36協定における管理、時間外労働、勤務形態の管理、分析をコーポレート統括本部で推進していくというプロジェクトです。


— 当初の課題や要望、ニーズはどのようなものがあったのでしょうか?


勤怠管理 SaaS は導入済みでしたが、締め日に向けて弊社の規定に沿った計算式を含めた集計をしなければならず、勤怠 SaaS から出力したデータを Excel に貼り付けるなど、人員をかけて集計作業をしていたので、工数削減のための自動化が当初の課題でした。

既存の SaaS では管理者権限しか分析用ダッシュボードが提供できない、SaaS 側が指定した形でしか分析が出来ない等の課題があったので、勤怠情報の収集・分析環境の強化を目標とし、必要な機能は開発することに踏み切りました。また各事業部毎の勤怠状況の可視化を行ない、管理職にデータを配信したいという考えもありました。

設計はコンパクトに。 BigQuery × Looker × Gemini で構築

— このような課題や考えを聞いて、開発側としては具体的にどのような企画や設計をしたのでしょうか?


前提としてコンパクトな設計を心がけました。勤怠管理 SaaS の API の仕様を確認し、保持するデータを連携できることがわかったので、CloudRun の関数機能でデータを取得し、DWH(データウェアハウス)である BigQuery に連携するよう仕組みを設計しました。集計、分析用のLooker を採用しております。Looker は社内で既に導入済みだったので、必要なユーザーライセンスを社内申請するだけで済みました。


— 今回のシステム設計におけるポイントを教えてください。


まず、勤怠管理 SaaS からの連携はサーバレスで行ない、DWH に集約しました。BI ツールは Looker と Google Cloud における分析基盤のスタンダードを採用しています。 Looker はすでに導入済みだったこともあり、ランニングコストも非常に安く抑えることができました。 BigQuery はデータを入れておけば、将来的に ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)などと連携する場合や、どんな形でもデータ連携できるところも強みですね。

また、Looker に関して、ダッシュボードは私の方で初期開発しましたが、将来的な個別データ分析の実現に向けて、コーポレート統括本部でも Explore によるタイルの作成、ダッシュボード作成ができるよう、サポートしています。 Gemini によるダッシュボード要約機能も有効にして、AI による分析アシストも入れています。

導入した SaaS のアップデートをキャッチアップして、運用改善に取り入れる

— プロジェクトを進める中で当初の予定から変えたこと、社内の要望に合わせて柔軟に対応したことなどがあれば教えてください。


SaaS 側の組織情報に古いデータが散見されたので、見直しが必要だと思い、清水さんに相談しました。先々の運用のことまで考慮して迅速に判断してくれたので、非常に頼もしかったです。


勤怠管理 SaaS を確認したところ、組織階層構造の対応までできるようアップデートされていることがわかりました。そこで、すぐにデータを再整備し、連携した上で Looker 側に反映してもらう形にしました。もともと組織情報が正確にメンテナンスできていなかったので、勤怠管理 SaaS のアップデートに合わせて整理し、小林さんに実装してもらい、BI ツール部分の組織別フィルタが実現できました。
我々はエンジニアではありませんが、導入している勤怠管理 SaaS のアップデートもキャッチアップして、運用改善に取り入れる姿勢が重要だと考えています。

アイレットでは、間接部門も AI やデータを活用するのが当たり前

— 今回のプロジェクトでは、間接部門でありながら、BI に注力する点や、AI を積極的に導入する点が印象的ですが、どのような方針から AI 活用の推進に至っているのでしょうか?


アイレットはお客様の課題を技術で解決する会社ですが、その考えは間接部門も変わらず持つべきと私は考えています。我々は大事な社員のデータを扱う部門ですが、それらを保管するだけでなく、効率的に活用するには?という方針を打ち立てています。

また、AI 活用に関しても同様です。今回のプロジェクトでは、データを確認する際に Gemini にアシストしてもらって次の施策を検討していたり、Looker の Explore サポートによる業務効率化で生まれた時間を、社員に対して人の手を掛ける必要があるサービスを提供するという目線を私は徹底したいです。

帳票を即座に出せるだけでなく、各部門の管理者にダッシュボードを提供できることでディスカッションの質が高まった

— 今回のプロジェクトで得られた収穫にはどのようなものがありましたか?


当初の目的であった、勤怠時間の締め作業からの開放ですね。集計作業時間を短縮できたのはもちろんのことですが、関数が複雑化して業務が属人化してしまうという点に関しても解消ができたと思います。いつでも Looker で帳票をダウンロード可能なので、即座に出せるという形になった点でも業務効率化を達成できました。

また、勤怠状況のダッシュボードを管理職に提供できるようになったので、勤怠管理の観点で、人事労務とデータを元にディスカッションできるようになったのは素晴らしいことだと思います。各部門の管理者へのダッシュボードの提供には、小林さんが提案してくれた Looker のメール配信機能で提供しているので、その点でもコスト削減ができています。

今回、BigQuery に集めたデータを基にセクション、グループ毎の個別分析、労働時間の中央値の取得、雇用区分の仕分けといった多角的なデータをすぐ見れるようになったのも大きい成果で、我々は社員の就労環境の改善をモットーに動いている組織なので、より現実的なアプローチができています。

非エンジニアでもやれる! Gemini の機能を使って自分たちでやる文化が根付いてきたことが大きな収穫

— 今回のプロジェクトに関して、関係者からポジティブな声やフィードバックがあれば教えてください。


人事労務セクションの中で  Looker をベースに、よりデータに基づいた就労管理ができ、そこに労力がかからなくなったことです。作業に追われて分析や施策まで手を入れられない状況から、作業から解放されることで一歩先の業務を出来るようになったと聞いています。

また、我々のような非エンジニアでも Gemini の機能を使ってダッシュボードを作ることができたりするので、自分たちでやれることをやろうという文化が根付いてきているのは嬉しいですね。