こんにちは。アイレットデザイン事業部の岩井です。アイレットデザイン事業部ではINSIDE UI/UXと題して、所属メンバーがデザイン・SEO・アクセシビリティ・UI/UXなどそれぞれスペシャリティのある領域に対する知見を幅広く発信しています。

今回は、「デザイン思考と人間中心設計(HCD)」についてです。

「デザイン思考」と「人間中心設計(HCD)」は、どちらもユーザー視点を重視したデザイン手法ですが、具体的な目的や活用する手法に違いがあります。
以下簡単に説明すると、、、わかりづらい体系図など省いてます。

デザイン思考とは?

デザイン思考は、ユーザーへの共感を起点にして、イノベーティブなアイデアや解決策を導くための方法論。新しい価値の創出や革新的な課題解決を目的にした手法。

主な特徴
・ユーザーの潜在的・感情的ニーズを発見
・幅広い課題領域(ビジネス、製品、サービス)に適用可能
・非線形のプロセス(共感、課題定義、アイデア創出、プロトタイプ、テスト)を繰り返す

よく使われる手法
共感的インタビュー エスノグラフィー観察(ユーザー観察) ペルソナ作成
カスタマージャーニーマップ作成 ブレインストーミング ラピッド・プロトタイピング

人間中心設計(HCD)とは?

人間中心設計(HCD)は、ユーザーが実際に製品やサービスを使いやすく感じることを目的としており、ユーザーの行動や要求に基づいた具体的な設計手法。

主な特徴
・ユーザー視点で使いやすさを重視
・ISO規格(ISO 9241-210)に基づく体系的プロセス
・定量的な評価を含む反復型プロセス(ユーザー調査、設計、評価を繰り返す)

よく使われる手法

ユーザーテスト(ユーザビリティテスト) ヒューリスティック評価 タスク分析
ユーザーアンケート調査 ユーザー要求事項の抽出・仕様化

以上簡単な両手法の説明です。

はい!わかります!本当に?って思いますよね****

「ペルソナ作成」や「カスタマージャーニーマップ」は、HCDでもよく使うじゃん!
どういうこと??

僕の考え的には目的の違いっぽい。
・デザイン思考では「共感」のための人物像。課題や感情に寄り添い、ユーザーへの理解を深めるために使う。
・HCDでは「設計の対象者」としての人物像。現実的で詳細な行動を示し、設計や評価を正しく導くために使う。

例えると
「新しい投票システム」を考える場合
以下デザイン思考の考え:

ペルソナ作成
・「投票に行かない若者」をざっくり設定し、「どうして行かないのか」「どんな気持ちなのか」を深く掘り下げるための人物像。

ジャーニーマップ
・若者が「選挙を知る→投票日→投票後」までの全体を見て、感情が動くポイントを把握し、新しいアイデアを生み出す。

以下HCDの考え:
ペルソナ作成
・「東京都在住、20代男性、スマホ利用が中心」など、具体的に詳細な人物像を設定して、「実際にどんな行動を取るか」を明確化する。

ジャーニーマップ作成
・投票システムを「スマホアプリで操作する手順」を詳しく記述して、実際の操作時にユーザーが迷うところや使いにくい箇所を細かく特定する。

こんな感じなのかなと思います。

デザイン思考とHCDの違いをまとめると、、

項目 デザイン思考 人間中心設計(HCD)
目的 革新的なアイデアや新しい価値の創出 明確なユーザー要求に基づく設計改善
フォーカス 潜在的ニーズ・課題の探索 明確なユーザー要求に基づく設計改善
評価方法 主に定性的(共感・感情) 主に定量的(操作性・指標重視)
プロセスの特徴 非線形・創造的・発散的 体系的・反復的・収束的
主な用途 ビジネスやサービスの企画段階 製品やサービスの設計段階

このような感じかなと思うんですが、アイデアや新しい価値を考えたい時にデザイン思考の手法じゃなければダメということでもないと思います。
いくつかあると思うのですが、例えば、HCD的なポイントで言うと

ユーザー要求事項を発掘するためのインタビュー
・あえて明確な仮説を持たず、「あなたが困っていることや、こうなったら嬉しいことは?」と広く自由に質問する。
・インタビュー結果を整理し、「ユーザーが本当に欲しいものは何か?」という潜在ニーズを浮き彫りにする。

このようにHCDでもデザイン思考どちらの手法でも良いと思います。

2つを組み合わせて活用する方法

デザイン思考とHCDを組み合わせると、それぞれの強みを生かして、革新的かつ実際にユーザーに支持される製品・サービスを作ることができます。

組み合わせた具体的プロセス例

1. 課題発見(デザイン思考)
ユーザーの潜在ニーズをインタビューや観察で明らかにする
2. 課題定義とアイデア創出(デザイン思考)
見つけた課題を明確化し、幅広いアイデアを自由に出す
3 プロトタイピングと初期検証(デザイン思考〜HCD)
簡単なプロトタイプでアイデアを検証し、実現可能性やユーザーの反応を確認
4. 具体的な設計(HCD)
検証されたアイデアをもとに、使いやすい製品やサービスの具体的なUI・UX設計を行う
5. ユーザー評価・改善(HCD)
ユーザーテストや定量的評価を実施し、課題を特定し改善を繰り返す
6. 製品やサービスの提供・改善(HCD
ユーザー評価を踏まえた反復的な改善を続け、品質向上を図る
※()内は目的・内容・段階によってどちらの手法を取るか変わる

組み合わせることのメリット

・イノベーション(ゼロイチ)と使いやすさを両立できる
・ユーザーが本当に求める課題や解決策を早期に発見・検証できる
・定性的な理解(共感)と定量的評価を融合することで、実用性の高いアイデアを実現可能

組み合わせた代表的なサービス

Airbnb、Uber、メルカリ、任天堂Switch

上記4つのサービスに共通しているのは、
1. デザイン思考で潜在的な課題を発見し、斬新なアイデアを創出。
2. HCDでそのアイデアを具体的な形に落とし込み、使いやすさを徹底的に改善。
的な感じで使い分けてるみたいです。

まとめ

まず大前提としてユーザー視点で考える。
ざっくりですが、デザイン思考はイノベーティブなアイデアを発見するための手法、HCDはそのアイデアを使いやすい具体的な製品やサービスに仕上げるための手法。
決していずれかの手法を使わなきゃいけないことではなく、目的に合わせて組み合わせるが正解だと思いました。
手法を理解できると目的によって使いわけができるようになると思います。(異論反論認めます
ただ、、ユーザーの知りたいことが知れたら手法はなんでもいいよねーももちろんアリだと思います。