DX開発事業部 フルスタックセクションの田村です。
Google Cloud Next ’25 現地参加2日目のイベントレポートをお届けいたします。

セッション情報

セッションタイトル:Managing API sprawl with API hub

概要:

組織内で分散型・生成型のAIアプリケーションが増えるにつれ、APIの数も増え、管理とガバナンスの課題が発生します。本セッションでは、APIを一元管理するソリューションAPI Hubをご紹介します。APIを一元管理し、API Hubのオンランプフレームワークを使用して任意のAPIゲートウェイに接続し、開発者が共有コンポーネントや標準にアクセスして準拠したAPIを迅速に構築し、シャドーAPIを検出して管理する方法をご紹介します。

APIスプロール

企業における最大の課題の一つとしてAPIがあちこちに散らばっている、いわゆる「APIスプロール(API Sprawl)」が存在しているといいます。
APIデータがツールやプラットフォームをまたがって点在しており、開発者やプラットフォーム管理者が必要なAPIにたどり着けず同じようなAPIが複数作られるという非効率が生まれています。

  • 開発者:「このAPI、すでに社内に存在しているのか?探すことができないから再度作るのか…」
  • プラットフォームリード:「この新しいAPIは基準に準拠しているのか?」

上記のような声は実際にエンジニアとしてAPI開発を行っている中でも、同じようなAPIを作ったことあるよなと思いながらも作業していることがあります。
このような “APIエコシステムの盲点” を解消するためにAPI Hubが使えます。

API Hubが実現する世界

API Hubは、スプロール状態のAPI群を以下のステップで整理・統合します:

Collect(収集)

  • プラグインやAPI Hub APIを使って、Apigee以外のランタイム含めすべてのAPI情報を取得
  • エンドポイントやメタデータ、スペック情報などを集約

Curate(整理・精製)

  • Fingerprinting により重複APIを特定
  • 独自ルールでのデータ整形・正規化も可能(カスタムリンクプリントなど)

Catalog(カタログ化)

  • 統一されたメタデータとともにAPIを公開
  • バージョン管理やライフサイクル管理、セキュリティ・コンプライアンスも一元で対応

APIエコシステムの全体像

APIエコシステム全体の可視化は以下のように行います。

Ecosystem Insights:エラー、APIタイプ、ライフサイクル、対象ユーザーをグラフで可視化

Semantic API Search:自然言語による検索でAPI発見が爆速

Supply Chain Graph:API間の依存関係をグラフィカルに可視化、変更の影響を一目で把握

AIエージェント時代のAPI管理

今回のセッションで強調されたのは、API HubがAIエージェント時代の中心基盤になるという点でした。

Gemini + API Hub:エージェント時代の土台

  • Apigee API Hub:APIとメタデータの「エンタープライズ・コンテキスト」を提供
  • Agent Development Kit (ADK):自然言語でエージェントを定義可能
  • Agent Engine:セッション・ログ管理、メモリ、評価などを統合したマネージドランタイム
  • Geminiモデル:LLMとして高度なプランニング・推論が可能

このようにAPI Hubの真の価値としては、APIエコシステムを構築して、人間やエージェントがAPIを管理しやすい統合基盤を作ることにあると思います。

LIXILの挑戦:グローバルAPI管理のリアル

LIXILの事例によると、次のような課題がありました。

LIXILの課題

  • 可視性の欠如:各チームや地域でAPIが個別管理されていた
  • 重複APIの乱立:再利用率が低く、ゾンビAPIが多数存在
  • 開発者体験の悪化:必要なAPIが見つからず、新規開発が増加

解決アプローチ

  • API Hub導入で再利用率を41%向上
  • メンテナンスコスト63%削減
  • 開発者生産性42%向上
  • 重複APIの削除
  • **AIエージェントを活用し、APIを自律的に発見し人間の介入なしに統合

個人的に刺さったポイント

特に刺さったのは「API HubがAIエージェントの活動基盤になる」という部分でした。AIエージェントが進化していく中で、APIのサイロ化の解消はエンジニアとして生産性向上だけでなく、AIエージェントがAPIを活用できるようにエコシステムを築いていく必要があるように思いました。

最後に

API Hubは、単なるAPI管理ツールを超えて、API活用の未来を作るプラットフォームへと進化しているように思います。
このセッションで学んだのは、「API整理」はもはや開発効率のためだけじゃなく、AIエージェントの活用基盤づくりそのものにも繋がります。
まずはAPI Hubの導入から少しづつ始めてみても良いかなと思いました。