Copilot Instructions を活用したコーディング規約の自動適用手順

プロジェクトのコード品質を均一に保つためには、コーディング規約の遵守が不可欠です。しかし、手動でのチェックは時間と労力を要し、見落としが発生することもあります。そこで、GitHub CopilotのCopilot Instructionsファイルを利用することで、コーディング規約を自動的に適用し、開発効率とコード品質を向上させることができます。

この記事では、Copilot Instructions ファイルを使用して、コード作成時およびコードレビュー時にコーディング規約を効果的に適用する手順を詳しく解説します。

Copilot Instructions とは?

Copilot Instructions は、GitHub Copilotに対して、特定のコンテキストやルールに基づいてコードを生成・提案させるための指示を記述するファイルです。通常、プロジェクトのリポジトリ内の.copilotディレクトリにinstructions.md(または任意の名前のMarkdownファイル)として配置されます。このファイルにコーディング規約や設計ガイドラインを記述することで、Copilotはそれらの指示に従ってコードを生成するようになります。

手順1: Copilot Instructions ファイルの作成と配置

まず、プロジェクトのルートディレクトリに.copilotディレクトリを作成し、その中にinstructions.mdファイルを作成します。

your-project/
├── .copilot/
│   └── instructions.md
└── src/
    └── ...

instructions.mdファイルには、プロジェクトのコーディング規約を具体的に記述します。
例えば、以下のような内容を記述できます。

instructions.md の記述例:

# コーディング規約

このプロジェクトでは、以下のコーディング規約を遵守してください。

## 1. 変数名

* キャメルケース (`camelCase`) を使用してください。
例: `userName`, `orderId`
* 短縮形は避けてください。
例: `usrNm` (X) -> `userName` (O)
* 定数には全て大文字のスネークケース (`SNAKE_CASE`) を使用してください。
例: `MAX_RETRIES`, `DEFAULT_TIMEOUT`

## 2. 関数名

* 動詞から始め、キャメルケース (`camelCase`) を使用してください。
例: `getUserProfile`, `calculateTotalPrice`
* 関数が何を行うか明確にわかるように命名してください。

## 3. クラス名

* パスカルケース (`PascalCase`) を使用してください。
例: `UserService`, `ProductRepository`

## 4. コメント

* 複雑なロジックや意図が分かりにくい箇所には、JSDoc形式のコメントを記述してください。
* TODOコメントは、対応が完了したら削除してください。

## 5. インデント

* スペース2つを使用してください。(タブは使用しないでください)

## 6. その他

* マジックナンバーは使用せず、定数として定義してください。
* エラーハンドリングを適切に行ってください。
* ログ出力は、プロダクション環境では冗長にならないように注意してください。

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**Copilot への指示:**

上記のコーディング規約を厳守してコードを生成してください。特に、命名規則とインデントに注意を払ってください。コードレビュー時には、この規約に沿っているかを厳しくチェックします。

ポイント:

  • 具体的な指示: 抽象的な表現ではなく、具体的なルール(例: camelCaseを使用、スペース2つ)を記述します。
  • Copilotへの直接的な指示: ファイルの末尾に、Copilotがどのようにこれらの規約を解釈し、コード生成に反映すべきかを明示的に指示するセクションを追加すると効果的です。

手順2: Copilot Instructions の効果的な活用

Copilot Instructions ファイルが配置されると、GitHub Copilotは自動的にその指示を読み込み、コード生成や提案に反映します。

2.1. コード作成時

Copilot Instructions が適用されている環境でコードを記述すると、以下のような効果が期待できます。

  • 命名規則の自動適用: 変数名、関数名、クラス名などを入力し始めると、Copilotが規約に沿った適切な名前を提案します。
  • インデントの自動調整: 新しい行やブロックを開始すると、Copilotが指定されたインデント(例: スペース2つ)で自動的にインデントします。
  • 構造の提案: 例えば、JSDocコメントの記述を指示している場合、関数定義後やクラス定義後にCopilotがコメントのひな形を提案することがあります。
  • 規約に沿ったコードスニペットの生成: 特定の処理を記述しようとすると、Copilotがコーディング規約に合致したコードスニペットを提案してくれます。

2.2. コードレビュー時

Copilot Instructions は、コードレビューの効率化にも貢献します。

  • レビュアーの負担軽減: 些細な命名規則の違反やインデントのずれなどはCopilotが事前に防いでくれるため、レビュアーはより本質的なロジックや設計の問題に集中できます。
  • 共通認識の醸成: Copilotが規約に沿ったコードを生成することで、プロジェクトメンバー間でコーディング規約に対する共通の理解が深まります。
  • 指摘の根拠: もし規約違反が見つかった場合、レビュアーはCopilot Instructions ファイルを根拠として指摘できます。

注意事項:

Copilotの提案を積極的に活用しつつ、提案されたコードが規約に沿っているかを最終的に確認します。Copilotが常に完璧な提案をするわけではないため、人間の目によるチェックは依然として重要です。

まとめ

GitHub Copilot Instructions ファイルを適切に活用することで、コーディング規約の自動適用を促進し、開発者の生産性向上とコード品質の安定化を実現できます。
コード作成時だけでなく、コードレビュー時にも共通の規約を意識し、効率的な開発フローを構築するために、ぜひこの機能を活用してください。