こんにちはMSPセクションの村上です。

2025年6月25、26日に開催されたAWS Summit Japanの1日目に参加しました。
その中の「マルチクラウドにおけるITコストの最適化」のセッションに参加してきましたので個人的な感想や気づきについてレポートします。

セッション内容

セッションのおおまかな内容は
DataDog社が自社の膨大なAWS利用料をどのようにして最適化していったのかを語った内容でした。
まず最初に「ITシステムはハイブリットカーではなくロケットのようにあるべき」と言っていました。
ハイブリットカーは多種多様の目的、ニーズに合わせられるように様々な機能、スタイルを設計しますが、
宇宙ロケットは一つの目標に絞った上で最適化された設計がされます。

IT コストの増大は、あらゆる組織にとっての課題です。SaaS 可観測性プラットフォームのトップ企業である Datadog社は、膨大なクラウドリソースを使用しており、IT 支出を抑制するために真剣に取り組んできました。このセッションでは、コストを最適化するために当社が実践している方法と、その方法を応用して支出を削減し、パフォーマンスを向上させ、ビジネス目標を達成する方法をご紹介します。

さて、コストを最適化する上では以下の3つのポイントが重要です。

①不要なものを取り除く
②効果、効率の順に考える
③オーナーシップ文化を築く

今回は、特に印象に残った「不要なものを取り除く」と「効果、効率の順に考える」の2点について詳しくご紹介します。

①不要なものを取り除く

 

「不要なものを取り除く」という考え方は、まさにロケットの設計思想に通じるところがあります。余分な部品は積まず、目標達成に不要なものは徹底的に排除する。これには、以下の3つの要点がありました。

ツールの統合

コスト最適化というと、まずはリソースそのものに目が行きがちですが、ツールの統合が重要です。
バラバラのツールを使っていると、それぞれの管理コストや、ツール間の連携による無駄が発生します。Datadog社は自社のプラットフォームを活用することで、監視から分析までを統合し、効率的な運用を実現しているそうです。これにより、無駄な情報収集や手作業を減らし、結果的にコスト削減に繋がるというわけです。

未使用リソースの削除

これは当然のことのように聞こえますが、意外と見落としがちなポイントです。
単純に停止しているリソースだけでなく、「使っているようで実は役に立っていないもの」も含まれます。
例として挙げられていたのが無駄なアラート設定です。誰も見ていない、あるいは何の対応もされないアラートは、設定している側も受信している側も時間とリソースの無駄になります。
定期的な見直しで、こうした“隠れた無駄”を排除していくことの重要性を改めて感じました。

自動スケールダウン

必要な時に必要なだけリソースを確保し、不要になったら速やかに縮小する。
Datadog社は、ワークフローオートメーションを活用し、自動でアクションを起こせる仕組みを構築しているとのことでした。
例えば、検証環境や夜間など利用頻度が低い時間帯には自動でリソースをスケールダウンしたり、不要になったリソースを自動で削除したりすることで、コストを最適化しているそうです。
手動での運用では限界がある部分なので、自動化の重要性を再認識しました。

 

②効果、効率の順に考える

 

コストを削減する、というと真っ先に「どうやって安くするか」を考えてしまいがちですが、Datadog社は「効果を追求し、その後に効率を考える」というアプローチを推奨していました。

ビジネスメトリクスの活用 (SLOs)

まず、何のためにコストを最適化するのか、という目的を明確にすることが重要です。
SLOなどのビジネスメトリクスを活用して、設定した目標が達成されているかを確認します。
例えば、レスポンスタイムの目標があるなら、その目標を達成できているかを先に確認し、その上でいかに効率よく目標を達成するかを考える、ということです。ビジネス価値に直結する部分を見極めることで、闇雲なコストカットを防ぐことができます。

トレースとプロファイリングでディープダイブ

効果の確認ができたら、次は効率化です。どこにコストがかかっているのか、どこを改善すればより効率的になるのかを知るために、トレースやプロファイリングが有効です。これにより、アプリケーションのどの処理にどれくらいの時間や負荷がかかっているかを詳細に把握できます。

セッションでは、実際にトレースから確認し、どこのクエリで負荷がかかっているかを特定し、
ライブラリをたった一つ変更しただけで、数千万円ものコストを削れたとのこと。

実験を受け入れる

最後に、効果的なコスト最適化のためには実験を受け入れることが大切だという話がありました。
一度で最適な解が見つかるとは限りません。様々な仮説を立て、実際に試してみて、その結果を評価する。
このサイクルを回すことで、より本質的な改善に繋がり、持続的なコスト最適化が可能になるのだと感じました。

まとめ

今回のセッションは、ITコスト最適化に対する根本的な考え方について非常に参考になった内容でした。
特に、「効果、効率の順に考える」というアプローチは、いかに「ビジネスに貢献しながらコストを最適化する」ということを考える上でとても重要なことだと感じました。
この学びを活かし、私たち自身のクラウド運用においても、より戦略的かつ効果的なコスト最適化を進めていきたいと思います。