前回は「3D制作におけるAI活用のメリットとデメリット」を解説しましたが、それらを踏まえた上で次に重要となるのが、「実務において具体的にどれほどの工数削減が可能か」という視点です。

AIを実制作に組み込む際、単にツールを導入するだけでは十分な成果は得られません。どの工程が自動化され、どの部分に調整が必要なのかという「制作フローの構造」を正しく理解することが、現場の生産性を左右します。今回は、従来のモデリング工程とAIを駆使した最新フローを比較し、実務で直面する修正パターンとその時間対効果について具体的に解説します。

工程の短縮箇所と修正のパターン

AIを使用しない通常のモデリング

通常のモデリング工程は以下のようになります。
※スカルプティング、ベイク、リトポロジー等のハイエンド工程は今回省略します。

キャラデザイン / 3面図制作 ▶︎ モデリング (スカルプディング)▶︎ テクスチャ ▶︎ ボーン付け ▶︎ ウェイト付け ▶︎ リグ付け ▶︎ アニメーション付け ▶︎ 完成

AIを駆使した場合(3パターン)

① 修正なしのAIモデル

AIで生成したものをそのまま使用 ▶︎ 完成
※全ての工程がAIでおぎなえる(修正なし)

② 特色別AI(ハイブリッド)
AIプラットフォームによって得意不得意なデザインがあるため使い分けるパターンです。

キャラ生成~テクスチャ(AI) ▶︎ ボーン~アニメ(手動/他ツール) ▶︎ 完成

③ 特殊形状(AIが苦手なもの)
首がないキャラ、動物、尻尾がある場合など、AIアニメーションが不可能なケースです。

キャラ生成(AI) ▶︎ ボーン ▶︎ ウェイト ▶︎ リグ ▶︎ アニメ ▶︎ 完成

修正パターンの詳細

修正パターン①:Texture修正のみ

AI生成(全工程) ▶︎ テクスチャの割り修正 ▶︎ ペイント修正 ▶︎ 完成

修正パターン②:キャラモデリング修正 + 手動リグ

AI生成 ▶︎ ウェイト解除・モデル書き出し ▶︎ キャラモデル修正 + ボーン追加 ▶︎ ウェイト修正・リグ追加 ▶︎ 完成
※修正前に、既存のウェイト情報をコピー・保持しておくために一度解除します。

修正パターン②-B:キャラモデリング修正 + 自動リグ(Mixamo等)

AI生成 ▶︎ ウェイト解除・書き出し ▶︎ モデル修正 ▶︎ 自動リギング(Mixamo等) ▶︎ 完成

修正パターン②-C:AIアニメーション移植

AI生成 ▶︎ 自力でアニメーション修正(or AI再生成) ▶︎ ボーン名変更・移植 ▶︎ 完成

どれくらい時短ができるのか?

手作業の場合(例:ハイエンドキャラクター)

デザイン / 3面図 1週間(イラストレーター)
モデリング 3日 ~ 6日
テクスチャ 3日 ~ 6日
ボーン付け 〜3時間
ウェイト付け 〜3日
リグ付け 〜2時間
アニメーション 2.5日 ~ 5日
合計目安 約 2週間 ~ 1ヶ月弱

AIを使用した場合

AIで全生成 1日 ~ 2日
選定(ディレクション) 数分 ~ 1日 (主要キャラクター等であれば1週間)
修正作業 1日 ~ 15日前後
※修正度合い・求めるクオリティによる
結論:
AIで作成したものをそのまま使用するのが1番早いですが、クオリティーの定義をどうするかで調整が必要であるため、修正の時間は必須です。

AIによって得られたスピードをそのまま納期の短縮に充てるだけでなく、「浮いた時間を、作品のオリジナリティやさらなるブラッシュアップに充てる」という判断ができるようになります。AIによる効率化と、人の手による精密な仕上げ。この両者のバランスを最適化することこそが、今後の3D制作現場におけるスタンダードな在り方と言えるでしょう。