クラウドインテグレーション事業部の小谷です。

2025年10月13日〜16日の4日間で開催された「Oracle AI World 2025」に現地参加してきました。最新情報を皆さんにお届けするために随時ブログをアップしていきますので、よろしければご覧ください。

今回ご紹介するセッションは、キーノートと呼ばれる基調講演となります。

キーノートセッション名:Oracle Vision and Strategy

OracleのCTOであるラリー・エリソン氏が登壇するセッションで、オラクルがどのように最新のAIイノベーションを活用して、企業が直面する課題を解決し、業界全体の「エコシステム」をどう変革しようとしているのか、その壮大なビジョンが語られました。

本記事では、この注目のセッションで何が語られたのか、その要点をレポートします。

セッションの概要

ラリー・エリソン氏によるとAIが単なるツールではなく、企業のプライベートデータを安全に活用し、業界全体のプロセスを自動化する「エコシステム」を構築するための核となる技術である、という事でした。

特に強調されていたポイントをまとめると、以下のようになります。

  • AIは人類史上最も重要なテクノロジーであり、その進化はまだ始まったばかりである
  • AIの真価は、インターネット上の公開データだけでなく、企業が持つ価値の高い「プライベートデータ」と組み合わせてこそ発揮される
  • Oracleは、顧客が好きなAIモデルを選び、自社のプライベートデータを安全に連携させることができる「Oracle AI Data Platform」を提供している
  • 最終的なゴールは、一企業だけでなく、医療や公共など業界全体(エコシステム)を自動化し、社会が抱える大きな問題を解決することである

セッション内容の詳細

現代のAIモデルと人間の脳の共通点

セッションの冒頭、エリソン氏はAIモデルが人間の脳に非常によく似ていると語りました 。最近のAIは、テキスト、画像、動画など複数の種類のデータを扱う「マルチモーダルAI」が主流です 。これは、まるで人間が目で見たり、耳で聞いたりして世界を認識するのと同じ仕組みだと言います。

そして、このAIというテクノロジーは、人類の歴史上、最も速く成長しているビジネスだと述べ、その重要性を強調しました 。

AIの最大の課題:プライベートデータをどう扱うか?

ChatGPTのようなAIモデルの多くは、インターネット上にある公開データでトレーニングされています 。しかし、ビジネスで本当に価値のあるデータの多くは、企業内にあるプライベートデータです 。

「自社のデータをAIの学習に使われたくない、でも、このパワフルなAIを自社のデータ分析に使いたい 」。このジレンマこそが、AIをビジネス活用する上での大きな壁だとエリソン氏は指摘します。

Oracleの答え:「Oracle AI Data Platform」

この課題に対するOracleの答えが、「Oracle AI Data Platform」です 。これは、顧客が自社のプライベートデータを外部と共有することなく、安全にAIと連携させるための仕組みです 。

  • 好きなAIモデルを選択可能: 顧客はGrok、ChatGPT、Llama、Geminiなど、主要なAIモデルを自由に選んで利用できます 。
  • 「Vectorize」技術でデータをAIに: Oracle Databaseには、AIモデルが理解できる「ベクトル形式」にデータを変換する機能が備わっています 。これにより、データベース内のデータだけでなく、OCIやAmazonのクラウドストレージにあるデータでさえも、AIの分析対象にできるのです 。
  • 巨大なAIインフラ: OracleはこれらのAIモデルを支えるため、世界最大級のAIクラスタを構築しています 。テキサス州に建設中のデータセンターには、最終的に45万基以上のNVIDIA製GPUが搭載される予定です 。

実践例:AIが営業活動を自動化する「AIエージェント」

エリソン氏は、Oracle社内で実際に行ったプロジェクトを例に挙げました。 自社の顧客データをAIに分析させ、「今後6ヶ月以内にOracle製品を買いそうな顧客は誰か? 」「どの製品を買う可能性が高いか? 」を予測させました。

さらにすごいのは、その次のステップです。「予測された見込み客一人ひとりに対して、最適な導入事例を3つ選び、メールを自動送信せよ 」と指示するだけで、「AIエージェント」と呼ばれるプログラムが自動で生成されタスクを実行しました 。これは、顧客の業種や国などを考慮して、スイスの銀行にはスイスの銀行の事例を送る、といったパーソナライズまで自動で行われたそうです 。

最終目標:業界全体を最適化する「エコシステムの自動化」

エリソン氏のビジョンは、単一の企業を効率化するに留まりません。彼が強調したのは、業界全体、つまり「エコシステム」の自動化です 。

その最大の例が、Oracleが注力するヘルスケア分野です。 病院やクリニックを自動化するだけでなく、患者、保険会社(支払人)、規制当局、製薬会社、金融機関といった、医療に関わるすべてのプレイヤーを繋ぎ、エコシステム全体を自動化することを目指しています 。

例えば、AIエージェントは、患者の最新の医療情報と保険会社の支払いルールをリアルタイムで照合し、「患者にとって最高の治療法で、かつ保険で全額カバーされる選択肢」を医師に提案します 。これにより、医師や看護師は事務作業から解放され、患者のケアにより多くの時間を費やせるようになります 。

AIが拓く、さらに先の未来

セッションの最後には、AIによって実現可能になる未来のテクノロジーが紹介されました。

  • パスワードレス:顔や音声、指紋などの生体認証でログインするのが当たり前になり、パスワードは不要になります 。
  • より安全な医療:IoTデバイスで患者を自宅から遠隔モニタリングし、病院にいるのと同じレベルのケアを提供できるようになります 。
  • 超早期がん発見:血液検査だけで、ごく初期のがん細胞のDNA(循環腫瘍DNA)を発見できるようになるかもしれません 。
  • 食料問題の解決:ロボット化された屋内農場(グリーンハウス)で、水の使用量を90%削減しながら、都市の近くで新鮮な食料を大量生産できます 。

これらの事例は、AIが単なる業務効率化ツールではなく、人類が直面する大きな課題を解決する力を持っていることを示唆していました。

まとめ

今回のラリー・エリソン氏のセッションは、OracleがOCIを単なるIaaS/PaaSとしてではなく、AIを活用して未来の社会を変革するためのプラットフォームとして捉えていることを強く印象付けるものでした。

今まで夢物語であったようなものや、人間の手では時間が掛かって実現が困難であったものがAIを活用することによって現実のものとなってくる、そんな未来がすぐ目の前に来ているという事を熱く感じる内容となっていました。

弊社Purposeにもある通り、
“技術と探究心で 今日の「できない」を 明日の「できるに」”
の精神で、私も日々の業務にAIを活用しチャレンジしていきたいと思います。