DX開発事業部の前野佑宜です。
AWS re:Invent 2025の2日目の、AWSのCEO Matt Garman氏によるKeynote(Opening Keynote with Matt Garman (KEY001))で発表されたAIサービス系のアップデートについてまとめていきます。
本記事ではAmazon S3 Vectorsについて整理します。

Amazon S3 Vectorsとは?
Amazon S3 Vectors は、ベクトルの保存とクエリをネイティブにサポートする初のクラウドオブジェクトストアで、S3に直接ベクトルデータを保存・検索できる機能を持っています。参照
従来は専用のベクトルデータベースの構築(Amazon OpenSearch Serviceなど)が必要だった作業を、S3 Vectorsの登場によりS3上で完結できるようになりました。
S3 Vectors アップデートの概要
これまで、S3 Vectorsはプレビュー版として提供されていましたが、2025年12月2日(現地時間)に正式に一般提供開始となりました。
それに伴い、プレビュー版からいくつかの変更点があるようです。(主に機能拡充)以下にその概要をまとめます。
提供リージョンが5リージョンから14リージョンへ拡大
プレビュー版では5リージョンのみの展開でしたが、一般提供開始後は東京リージョンを含む14リージョンへ拡大しました。
プレビュー版の対応リージョン
米国東部 (オハイオ州、バージニア州北部)、米国西部 (オレゴン州)、アジア太平洋 (シドニー)、および欧州 (フランクフルト))
一般提供後の対応リージョン
上記の5リージョンに加え、アジアパシフィック (東京)、アジアパシフィック (ムンバイ、ソウル、シンガポール)、カナダ (中部)、欧州 (アイルランド、ロンドン、パリ、ストックホルム) が追加されました。
スケーラビリティの向上
インデックスあたりの最大ベクトル数がプレビュー版の40倍に増加し、最大20億のベクトルを単一インデックスで保存・クエリ可能になりました。 巨大なベクトルデータセットを複数のインデックスに分割する必要がなくなり、管理コストが減ることが期待できます。
パフォーマンスの最適化
クエリレイテンシの改善
より頻繁なクエリに対し、レイテンシが100ミリ秒以下に最適化されました。(低頻度のクエリは引き続き1秒未満で結果を返します。)
書き込みスループットの向上
単一ベクトル更新のストリーミング時に毎秒1,000ベクトルの書き込みスループットを実現し、新データの即時検索性が向上しました。
検索結果の上限増加
クエリごとに取得できる検索結果の数がプレビュー版の30件から最大100件に増加し、RAG(検索拡張生成)アプリケーションへのコンテキスト提供能力が強化されました。
セキュリティとガバナンスの強化
インデックスレベルの暗号化
インデックス作成時に専用の顧客管理キー (SSE-KMS) を設定できるようになり、セキュリティと規制要件への対応が強化されました。
タグ付けと統合
ベクトルバケットとインデックスにタグ付けが可能となり、コスト配分や属性ベースのアクセスコントロール (ABAC) に利用できます。

運用管理機能の拡充
AWS CloudFormationおよびAWS PrivateLinkに対応し、デプロイとプライベート接続による管理性が向上しました。
OpenSearch Serviceとの統合
OpenSearchを検索および分析機能に使用しながら、S3 Vectorsをベクターストレージとして使用する、というような運用も可能になりました。(詳細)
まとめ
S3 Vectorを使用することで低価格でRAGを実現できる、という期待はプレビュー版から高まっていましたが、東京リージョンにおいて一般提供されたことで、国内リージョンに閉じて構築をしたい、という要望を持つお客様に対して、S3 Vectorsを活用したソリューションを提供する、というような選択肢が増えたのではないかと思いました。パフォーマンスも改善されているとのことで、色々と触ってみて検証ができればと思います。
出典
Amazon S3 Vectors now generally available with increased scale and performance
Amazon S3 Vectors is now generally available with 40 times the scale of preview