はじめに
こんにちは、「相手は関西人だよ」と言われたヤマダ(北野)です。
この記事は「FinOps+: A New Era of Accelerating Value (COP211-S)」のセッションレポートです。
Kion の Senior Product ManagerであるTatum Tumminsさんが「FinOps+」という新しい進化形を紹介しました。従来のFinOpsにAIと自動化、そしてパブリッククラウド以外のコスト管理を組み合わせた次世代のアプローチです。
概要
FinOps is evolving and AI is accelerating the shift. As organizations face increasing complexity, traditional FinOps approaches are no longer enough. We are entering a new era of FinOps; one that requires automation, governance & scale. FinOps+ introduces an AI-powered approach that unifies CloudOps, emphasizes automation and expands into holistic spend management within a single platform. This talk will show how AI-driven FinOps and proactive governance can transform the way teams manage technology, enabling smarter decisions, streamlined operations & accelerated value. Whether you’re beginning your FinOps journey or looking to scale, you’ll leave with a clear vision for how to move beyond traditional practices into the future of FinOps. This presentation is brought to you by Kion, an AWS Partner.
セッションではFinOpsが進化し続ける中で、従来のアプローチだけでは不十分になってきているという背景が語られました。特に印象的だったのは自動化されたガバナンス、AI駆動、パブリッククラウドを超えた範囲という3つの柱で構成される「FinOps+」という新しいフレームワークです。
FinOpsの現状:この1年で見えてきた課題

FinOps Foundationが毎年実施している「State of FinOps」調査の結果が紹介されていました。2025年初頭の調査ではFinOps実践者の主要な優先事項として以下の3つが挙げられました。
- 無駄の削減とコスト最適化
- クラウドコストの配分
- 予測精度の向上
これらは今までも重要視されてきた項目です。そして今後12ヶ月で重視する項目として新たに2つのテーマが追加されました。
- FinOpsのガバナンスとポリシーのスケール化
- パブリッククラウド以外のコスト管理
また、FinOps Foundationが「Scopes」という概念を導入したことも紹介されていました。これは技術投資のさまざまな領域でFinOpsを実践すべき範囲を定義したものです。さらにFocus 1.2(Common Billing Schema)がリリースされ、実践者やベンダーがこのスキーマを採用し始めています。
FinOps+の3つの柱
FinOps+は以下の3つの柱で構成されています。
- 自動化されたガバナンス(Automated Governance)
- AI駆動(AI Driven)
- パブリッククラウドを超えた範囲(Beyond Public Cloud)
FinOps+は既存のFinOpsを再定義するのではなく、より効率を高めてスマートな意思決定を可能にするためのアプローチです。既存のプロセスに適用して自動化とAIで作業時間を節約することを目指しており、あらゆる成熟度レベルの組織に適用可能です。
第1の柱:自動化されたガバナンス

これは「ポリシーを定義し、自動化し、ガバナンスにする」というステップで実現されます。
ポリシーの例:
- 無駄(孤立リソースなど)の定義
- スナップショットやストレージの保持ポリシー
- サンドボックスや開発環境の「消灯ポリシー」(夜間シャットダウン)
- リソースのタグ付け定義
これらのポリシーをツールで自動化することで、無駄が発生する初期段階で食い止め、人間によるレビュー・アクションにかかる30〜60日の遅延をなくします。結果として手作業が削減され、クラウド利用の拡大に合わせてプロセスが維持可能になりスケーラビリティが向上します。
第2の柱:AI駆動

FinOpsにおけるAIの実用的な活用は以下の3つの領域で紹介されました。
1. ガイダンス(Guidance)
AIアシスタントがプロンプトを提供し、初心者や財務・経理などのステークホルダーが必要な情報を見つけやすくなります。FinOpsを組織全体の文化として浸透させることに役立ちます。
2. 効率性(Efficiency)
タスクの完了時間を短縮します。例えば月次の予算更新プロセスがAIのスキャンと自動更新により45分から5分以内に短縮された事例が紹介されました。
3. ガバナンス(Governance)
AIを使ってクラウドをガバナンスする発想です。非技術者でも、「未アタッチのEBSボリュームをクリーンアップするポリシーを作成してください」といったプロンプトをAIに依頼するだけで、Cloud Custodianなどの言語で自動的にポリシー(例:7日間非アタッチのボリュームを探してスナップショットを取得後削除する)が生成されます。これによりFinOpsの民主化が促進されます。
第3の柱:パブリッククラウドを超えた範囲

FinOpsの対象をパブリッククラウドだけでなく、SaaSツール、データセンター、ライセンス費用、生成AIツールなどのすべての技術支出に拡大します。
なぜ重要か:
- 可視性の獲得: 単一のダッシュボードでクラウド外の支出も一元管理できます。
- より良いビジネス判断: すべての支出を把握することで、総所有コスト(TCO)が明確になり、製品やアプリケーションの真の収益性についてより良い判断ができるようになります。クラウドコストだけでは、実際の収益性は見えてきません。
FinOps+の実践と次のステップ

FinOps+は、既存のFinOps活動(レポート作成、予算管理、最適化など)に3つの柱を適用し、FinOpsと運用の卓越性を橋渡しすることを目指しています。
- 自動化されたガバナンス: 無駄が発生する前に防ぐ。
- AI駆動: 効率を高め、戦略的な領域でクラウドをガバナンスする。
- パブリッククラウドを超えた範囲:より良い判断を下し、総技術投資を理解する。
Tatumさんは次のステップとして組織にとってFinOps+が意味することを特定し、今日から実装するためのアクションを起こすことを勧めていました。
まとめ
FinOps+はFinOpsに、新しい3つの要素(自動でルールを守らせる仕組み、AIの活用、クラウド以外の費用もまとめて管理)を加えた進化版です。 これは今のやり方を変えるのではなく、もっと効率的で賢い方法にするための考え方です。
特に大事なのは、AIを使ってクラウドの利用ルールを簡単に作れるようになること(専門知識がなくてもルールが作れる)と、SaaSやデータセンターなどすべての技術的な出費をまとめて見ることです。これによって、実際のビジネスでどれだけ利益が出ているかを正しく把握できるようになります。
私はFinOpsについてもまだ明るくありませんが、最初からFinOps+を意識して学んでいきたいと思います。