AWS パートナー企業向けの実践型プログラム「ANGEL Dojo」。

このプログラムでは、参加者がチームを組み、社会課題を起点にプロダクトを企画・設計・開発し、最終発表までを行ないます。
単なる技術研修ではなく、実際のプロダクト開発に近いプロセスを体験できる場として、多くのエンジニアが参加しています。

今回アイレットのメンバーが挑戦したのは、ハラスメントチェック機能を備えたチャットアプリ「SafeTalk」の開発。
ARアドバンストテクノロジ株式会社様のエンジニアとの混合チームが結成され、異なる企業のメンバーが協力しながら課題設定からプロダクト設計、開発、最終発表までを進めていきました。

エンジニアとしての視野を大きく広げる経験となった、約4カ月にわたるプロジェクトについて、本記事ではその裏側を振り返ります!


リモートワークの不安から始まった課題探し。Working Backwards の第一歩

ANGEL Dojo では、Amazon 独自のプロダクト開発思想である Working Backwards を実践します。

これは「作れるもの」から考えるのではなく、顧客の課題から逆算してプロダクトを設計する考え方です。

今回、チームが着目したのは、リモートワーク環境におけるコミュニケーションの課題でした。

Slack などのチャットツールでは、「この言い方は問題ないだろうか」「相手を傷つけてしまわないだろうか」といった不安を感じる場面があります。

皆がリモート環境での発言に対して不安を抱えているのではないか。この仮説を検証するため、両社の社員286名へのアンケート調査を実施。
その結果、『6割以上がチャットでの発言に不安を感じている』という結果が得られました。

今回メンバーとして参加した23卒社員の大嵩は、SafeTalk の着想についてこう振り返ります。

大嵩
大嵩
課題を考える中で、リモート環境での発言への不安に着目しました。その後、アンケートで仮説を実証したことで、データに基づいた確実な顧客ニーズを掘り起こすことができ、プロダクトの方向性に確信が持てました

この結果をもとに、チームはハラスメントの可能性を AI で検知するチャットアプリの構想を具体化していきました。

AI でハラスメントを防ぐ。「SafeTalk」というプロダクトの構想

SafeTalk は、チャットの内容を AI が分析し、ハラスメントの可能性をチェックするアプリケーションです。


Web 版 画面イメージ


Web 版 ダッシュボード画面イメージ

発言する前に内容を確認できることで、相手を傷つけてしまう可能性や、ハラスメントのリスクを減らすことを目的としています。

ハラスメント対策というと「被害者側」の視点で語られることが多いですが、SafeTalk では発言する側の不安を減らすという視点を重視しました。

SafeTalk では、AWS のさまざまなサービスが活用されました。

主な構成は次の通り。

  • AWS Amplify Gen 2
  • Amazon Bedrock
  • Amazon DynamoDB
  • Amazon Aurora Serverless v2
  • Amazon QuickSuite など

AI によるハラスメント検知には、Amazon Bedrock Knowledge Base と Amazon S3 Vectors を活用。AI モデルやプロンプトを比較しながら精度を検証するなど、AI を活用したプロダクト開発にも取り組みました。

フロントエンドには Next.js を採用し、開発手法としてはモブプログラミングを取り入れたアジャイル開発を実践しています。

この開発基盤の整備を主導したのが、23卒社員の熊谷でした。

AWS Amplify を活用した CI/CD パイプラインを構築することで、開発者がインフラを意識せず機能開発に集中できる環境を作りました
熊谷
熊谷

また、プロジェクトにメンターとして関わった22卒社員の井上は、SafeTalk の開発を次のように振り返ります。

井上
井上
開発の進め方という面では、メンバー皆がアジャイル開発におけるベストプラクティスをなるべく実践してみようとしていたように思います。DevOps 観点においても、AWS CDK を使用してインフラを管理するなど、自動化・効率化にも取り組んでいました

ペアプログラミングによって開発を加速。そして新卒メンバーが1週間で作り上げた Slack Bot

開発では、実務に近い課題にも直面しました。

例えば

  • 企業ごとの PC 制約
  • 生成 AI による不要コード生成
  • 環境差異によるエラー

といった問題です。

こうした問題は、リモートで画面共有を行ないながら、ペアプログラミング形式で1行ずつコードを確認して解決していきました。

1行ずつコードを紐解くという地道なやり方でしたが、粘り強くコミュニケーションを取ったことによって、異なる企業文化の壁を乗り越え、結果的にチームの結束を深めることができました
熊谷
熊谷

また SafeTalk では、Slack Bot 版も開発されました。


Slack 版 画面イメージ

この部分を担当したのは、25卒社員の榊谷と寺田。

Slack という既存 SaaS にはさまざまな制約があります。

その中で二人は、MVP 設計やコマンド操作、非公開設定(エフェメラルメッセージ)などを活用し、ユーザーが周囲の目を気にせずハラスメントチェックを行なえる設計を実現しました。

寺田
寺田
ユーザーのアイコンや名前に bot を擬態させ、自然な投稿に見せる実装にこだわりました。随時メンターやチームメンバーのアドバイスを仰ぎながら、技術的な壁を一つずつクリアして進めていきました
開発着手前に『本当に必要な機能か』をターゲット視点で精査したことで、新卒2人の体制でも効率的な開発を実現できたのだと思います
榊谷
榊谷

寸劇から始まるプレゼン。体験型デモで伝えたプロダクト

最終発表では、チームはユニークなプレゼンを行ないました。

導入ではパワハラをテーマにした寸劇を実施。
その後、QR コードから SafeTalk を体験できるデモを披露しました。


発表の様子。リアルな寸劇に驚く視聴者も…!

この構成が評価され、チームは技術面で第2位を獲得しました。

プレゼン構成をサポートしたメンターの尾田はこう語ります。

尾田
尾田
技術的な詳細アドバイスはもう一人のメンター(井上)に任せ、自身はプレゼン資料の構成や『伝わる表現』の指導に重点を置きました。聞き手が自分事として課題を理解できる構成を意識しました

その後は見事、頂上決戦に進出。
目黒にある AWS Japan の本社にて、100人規模の観客に見守られつつ、加えて YouTube 配信がされている中、長きにわたって取り組んできた成果をアピールしました。

質疑応答では、なんと AWS Japan の社長からの質問も飛びました。

大嵩
大嵩
鋭い質問に堂々と回答できた瞬間、アイレットでの3年にわたるこれまでの経験の積み重ねが自信へと変わったと感じました

技術だけでなく、料金プランや運用面まで徹底的に定義されたプロダクトとしての完成度も評価され、会場からは「面白い」「すぐに使いたい」という声も上がりました。

2025 ANGEL Dojo 頂上決戦 – AWS 初心者が 3 か月で DX に挑戦!(アイレットは24:30辺りから発表)

裏側で起きていた“もう一つの物語”

ANGEL Dojo は、単なる実践型プログラムではありません。

チームの中では「リーダーシップ」「技術的挑戦」「新卒メンバーの成長」「メンターの葛藤」など、さまざまなドラマが生まれていました。

次の記事では、4カ月で起きたメンバーとメンターの成長とは何だったのか、ご紹介します。

ANGEL Dojo の4カ月で見えた、エンジニアの成長。参加メンバーとメンターの挑戦とは