AI 駆動開発による開発者体験の変革のまとめ

セッションスピーカー

  • 山下 裕記 氏
    • 東京海上日動システムズ株式会社 開発企画本部 戦略企画部長

クラウドジャーニー

2018年から戦略の立案を開始し、現在はAWSを中核としたクラウド推進を展開。クラウドへの「LIFT(移行)」は7割ほど完了しており、今後は「SHIFT(最適化)」が主戦場になると語られた。

AWS利用に関する考え方:戦略的ロックイン

多様なクラウドを併用するマルチクラウド体制をとりつつも、スクラッチ開発の領域においては「大きな波に乗る」という方針でAWSに集約。その大きな理由として、AWSがユーザーの声を真摯に聞いてくれる点を強調していた。

クラウドの次はAIで変える

冒頭では、保険ビジネスが急激に大成長を遂げることの難しさに言及。その上で今できるアプローチとして、「既存システムをより低コスト・高品質・スピーディーに提供すること」、そしてそれによって生み出された「余力」を、「人にしかできないビジネス側の業務に投入すること」の2点を強調されていた。

生成AI活用 for BIZ

ベテラン社員に属人化しがちな専門性の高い判断業務において、AIを活用するシステムを開発。システム構成にはAmazon Bedrock AgentCore と Mastraを用い、4つのエージェントを稼働させているとのこと。

人に依存することはよくないので、専門判断の均質化という目的でAIに引き継ぐことが大事であるということが効果と気づきとして紹介。

生成AI活用 for IT

現状(AS-IS)の課題として、加速する人材不足と、増加し続けるビジネスニーズ(需要)とのギャップが挙げられた。これらを解決するために生成AIの活用は不可欠であり、導入によって高い生産性と競争力を持つ企業を目指せると説明。
ただし、現状でAIがカバーできている範囲はまだ全体の一部であり、「点」にとどまっているとのこと。今後は開発プロセス全体にAIを組み込み、「面」へと広げていくことが重要であると主張。

AI駆動開発

3年前のChatGPT登場時、ゲームチェンジャーになると確信したものの、当時はそこまでの変化に至らなかったとのこと。しかし、AWS SummitでAI駆動開発の取り組みを目にし、今度こそゲームチェンジャーになると確信したエピソードが紹介された。
現在では、開発プロセスで生まれるすべてのアウトプットにAI駆動開発を導入。その効果として、スピード約10倍、生産性(プロダクティビティ)約3倍という驚異的な成果を得られる可能性があると主張。また、AIの出力品質の高さに加え、ベテランの暗黙知がプロンプトやログとして残るため、「組織知」化できるというメリットも共有。
一方で、見えてきた課題として「ドキュメント・技術環境」「人材・スキル」「生産物の品質・レビュー」「UI/UX」を提示。アウトプットが格段に速くなったからこそ、それを正確かつ迅速にレビューするスキルが求められる。また、人間では思いつかないようなUI/UXが生成されることもあると述べた。
そんな中、最大の課題は人間の「問い」のスピードがAIに追いつく必要がある点。素早い技術的判断が求められ、このスピード感は開発者だけでなくビジネスオーナー側にも求められる。

今後の最重要テーマとして「ハーネス(Harness)エンジニアリング」が挙げられ、特定の技術者のスキル依存から脱却し、組織全体を均質化するために、いかにこの「ハーネス」を作り込めるかが鍵になると主張した。

所感

最近トレンドとなっている「AI駆動開発」だが、単に「開発速度が爆発的に上がる」という表面的なメリットだけでなく、「人間のレビュー力」や「問いのスピード」が試される手法なのだと改めて強く実感させられるセッションであった。

特に印象的だったのは、開発者だけでなく「ビジネスオーナー側もそのスピードについていく必要がある」という点だった。どれだけAIが高速にアウトプットを出しても、ビジネス側の判断やコミュニケーションがボトルネックになっては意味がないのでAI駆動開発を真に成功させる鍵は、技術の導入そのものよりも、レビュー体制の確立や、ビジネス側を巻き込んだ意思決定の高速化にあると感じた。