こんにちは!KDDIアイレット株式会社 26卒新卒の中澤です。
(※本記事は26卒向け新卒研修プログラム(模擬ケース)での実体験をもとに執筆したレポートです)

「AIを活用した新規事業を企画し、提案せよ」

これは、新卒研修の集大成となる企画提案研修のプログラムについて、私たちに与えられたミッションです。

実際の稼働期間はわずか4日間。
調査・役員ヒアリング・企画立案・資料作成・プレゼンまでをすべてやりきる実際の業務さながらの研修でした。(ヒアリング自体は、前倒しで1週間前から可能でした)

私たちが提案したのは、AIのインフラコストを劇的に下げる『マルチクラウドAIコスト最適化・ FinOps基盤』。

この記事では企画の内容だけでなく、

  • どのようにチームを動かしたのか
  • 執行役員との壁打ちから何を学んだのか
  • KDDIアイレットだからこそ感じた風通しの良さ

を実際の研修を振り返りながらご紹介します。

【※注記】
本記事でご紹介する内容は、アイレットの「新卒研修」の中でチームとして検討・発表した企画および構想です。既存の提供サービスや正式発表された事業計画ではない点をご了承の上、研修の熱量やカルチャーを伝えるブログとしてお楽しみください。

目次

1. 4日間の超短期決戦!KDDIアイレットの新卒研修で「強みの掛け算」に挑んだ舞台裏

今回の研修は、単なるアイデア出しの場ではありませんでした。
与えられたミッションは、「AIを活用した新規事業を企画し、役員へ提案すること」

私たちは常に、プロジェクトマネジメントで重要となる QCDS(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期、Scope:要件)を意識しながら、チームで意思決定を重ねていきました。

新卒研修のチーム議論の様子

「まず仕組みを作る」ことから始めた

私は今回、5人チームのリーダーを担当しました。
新規事業企画のような正解のない非定型業務では、各メンバーがそれぞれ違う方向を向いてしまうと、議論がまとまらず、成果物の品質にも大きく影響します。
そこで最初に取り組んだのは、「メンバー全員が同じ目線で考えられる土台づくり」でした。
「何を、いつまでに、どんな観点で調べるのか」を明確にし、全員が共通の基準で市場調査や企画立案を進められる環境を整えることを意識しました。

チームで活用した4つの管理シート

そのために、スプレッドシートを活用して以下のような管理シートを作成し、チームで運用しました。

KDDIグループアセット一覧
KDDIアイレットやKDDIグループが持つ技術・サービス・アセットを整理し、企画立案に活用。

KDDIグループアセット一覧シート

 

②WBS・スケジュール管理シート
4日間という短期間でやるべきタスクを洗い出し、担当者と期限を可視化

WBS・スケジュール管理シート

 

③役員ヒアリングQ&Aシート
経営層へ確認したい内容や得られた知見を蓄積し、チーム全体で共有。

 

役員ヒアリングQ&Aシート

 

④企画アイデア集約シート
メンバー全員のアイデアを一覧化し、客観的に比較・議論できるように整理。

 

 

💡 リーダーとして意識したこと
私が意識していたのは、
「とりあえずアイデアを出していこっか」と丸投げしないこと。
メンバーが迷わず動けるように、

  • 何を調べるのか
  • いつまでに進めるのか
  • どんな視点で考えるのか

という“考えるための土台”を先に作ることを大切にしました。
その結果、全員が同じ方向を向いて議論を進められるようになり、限られた4日間でも効率よく企画をブラッシュアップすることができました。

2. 役員に直接ガチ提案!KDDIアイレットならではの「風通しの良さ」を実感した本気の壁打ち

今回の研修で特に印象的だったのが、役員の方々と直接ディスカッションできる環境でした。
私たちは企画を完成させてから提案するのではなく、企画を磨き上げるプロセスそのものに役員の方々に参加していただこうと考え、2回のアポイントを自分たちで取得しました。

1回目 インプットアポ 経営視点や市場課題、KDDIアイレットの強みについてヒアリング
2回目 アウトプットアポ ブラッシュアップした企画を提案し、フィードバックをいただく

1回目は「企画を見せない」ことを選んだ

1回目のアポイントでは、あえて企画案を持っていきませんでした。
まずは経営層がどのような視点で市場を見ているのか、どんな課題を重要視しているのかを理解したいと考えたからです。
事前にチームで整理した質問シートをもとに、

  • KDDIアイレットが今後注力していきたい領域
  • AIビジネスにおける市場のリアル
  • 投資判断で重視するポイント
  • AIコスト高騰への考え方
  • BtoC領域への展開可能性

など、普段なかなか聞くことのできない内容まで率直に質問させていただきました。
正直、「ここまで踏み込んで質問して大丈夫かな……」という不安もありました。
しかし、役員の方々は一つひとつの質問に対して、ビジネスの第一線に立つ経営者としての視点を交えながら、非常に丁寧に答えてくださいました。

「Slackで送ってくれていいよ」の一言に驚いた

そしてアポイントの最後。
役員の方から、

「2回目のアポイントももちろん歓迎するし、なんならSlackで直接投げてくれていいからね。」

という言葉をいただきました 。

正直、とても驚きました。

「役員に相談する」というと、どうしても距離があり、気軽に話しかけられないイメージを持っていたからです。

しかしKDDIアイレットでは、新卒1年目であっても役員層に意見を伺い、相談できる文化があります。
今回の研修を通して、

この距離感こそ、KDDIアイレットの風通しの良さを象徴していると強く感じました。

3. あえて”プレイヤー”ではなく、チーム全体を動かす役割を選んだ

1回目の役員ヒアリングを終えたことで、市場のリアルな課題やKDDIアイレットの強みが見えてきました。
ここからは、限られた時間で最も良い企画を作るために、5人チームを2つの役割に分けて進めることにしました。

役割 人数 内容
新規立案班 2名 1回目のインタビューを基に全く新しい案をゼロから検討
ブラッシュアップ班 2名 メンバーが以前から温めていた企画をさらに磨き上げる

 

リーダーだからこそ、“どちらにも入らない”という選択

ここで私は、あえてどちらの班にも所属しませんでした。

理由は、チーム全体を俯瞰しながら、それぞれの進捗や課題を把握し、必要に応じて方向性を調整する役割が必要だと考えたからです。

どちらか一方の議論に深く入り込むよりも、

  • ボトルネックを見つけること
  • 情報を整理してチームへ共有すること
  • 必要なタイミングで意思決定をすること

に集中した方が、チーム全体の成果につながると判断しました。

点と点がつながった瞬間

そんな立場で議論を見ていたからこそ、
市場課題、KDDIアイレットの強み、そして以前ニュースで見かけた生成AIによる電力消費の課題が、自分の中で一本の線につながりました。
そこから生まれたのが、
今回の「マルチクラウドAIコスト最適化・FinOps基盤」という企画です。

採用されたあと、本当の勝負が始まった

2回目の役員ヒアリング後、相談の結果、
3つの企画案の中から私の提案した「マルチクラウドAIコスト最適化・FinOps基盤」が採用されました。

あのとき、自分を信じて選択してくれたメンバーには感謝してもしきれません。

しかし、ここからが本当の試練でした。
頭の中ではシステム全体のイメージができていても、それをメンバー全員と共有し、同じ解像度で理解してもらうことは想像以上に難しかったのです。

「説明する」ではなく、「伝わる仕組み」を作る

そこで再び、仕組みづくりに取り組みました。
まずはシステム全体を図や身近な例を使って説明し、

なぜこの社会課題を選択したのか
なぜKDDIアイレットだから実現できるのか
企画全体がどのようにつながっているのか
という背景から共有しました。
その上で、チームが自走できるようにタスクを再配置しました。

  • 1枚企画書作成:2名
  • アーキテクチャ・ルーティング・セキュリティなど技術検討:3名

さらにSlackでは技術検討専用のスレッドを立て、議論やドキュメントを一元管理しました。

技術検討専用のSlackスレッド

一元管理したドキュメント類

“共通認識”がチームのスピードを変えた

議論を可視化し、情報を整理したことで、
メンバー全員が企画の背景や目的を理解した状態で議論できるようになりました。
結果として、意思決定のスピードが上がり、技術面・ビジネス面ともに企画のブラッシュアップが一気に進みました。

振り返ると、このプロジェクトで最も重要だったのは、「答えを持っている人が引っ張ること」ではなく、
チーム全員が同じ方向を向ける環境をつくることだったと感じています。

4. AI時代のインフラコストに挑む『マルチクラウドAIコスト最適化・FinOps基盤』

※本企画は既存サービスを紹介するものではなく新卒研修内で検討した企画・構想です。

こうしてチーム全員で議論を重ね、完成したのが「マルチクラウドAIコスト最適化・FinOps基盤」です。

KDDIアイレットにはすでにAI導入を支援する『gaipack』がありますが、

今回の企画は『AIを使う』こと自体ではなく、gaipackも含めたAIを動かすインフラそのものを最適化・持続可能にするという提案です。

着目した課題

生成AIの普及により、企業ではAIの利用量に比例してGPUやクラウド利用料、通信コストが増え続けています。
一方で、複数のクラウドやAIモデルを組み合わせる環境では、「どこで・どのAIを使うのが最適なのか」を人がリアルタイムで判断し続けることは容易ではありません。

解決策

そこで私たちは、
「AIを効率的に使う」のではなく、“AIを動かす仕組み”そのものを最適化することに着目しました。
具体的には、

  • 入力内容を最適化し、不要な処理を削減する
  • 質問内容に応じて最適なAIモデルを選択する
  • マルチクラウド環境から、その瞬間に最適な推論先を選択する

ことで、性能を維持しながらAI利用コストを抑えることを目指しています。

また、この企画の大きな特徴は、

KDDIアイレットだからこそ実現を目指せる構成であることです。

KDDIアイレットが培ってきたAWS/Google Cloud等のメガクラウドパートナーとしての認定実績、MSPの知見に加え、ネットワーク構築力やKDDIグループの通信基盤など、それぞれの強みを掛け合わせることで、AIを「賢く使う」だけでなく、「効率よく動かし続ける仕組み」まで提案したことが、この企画のポイントです。

 

5. 年間82.5%のコスト削減を試算

企画の実現イメージを具体化するため、研修では料金シミュレーションも行いました。
今回は、月間1,000万回のAI推論が発生する企業をモデルケースとし、一定の前提条件を置いて試算しています。
※研修内でのシミュレーションであり、実際の導入時には業務内容や利用状況に応じて試算結果は変動します。

今回の試算では、分かりやすさを重視し、プロンプトの文字数を基準に「軽タスク」と「重タスク」を分類しました。

  • 軽タスク:要約や定型的な質問など
  • 重タスク:高度な推論や複雑な分析など

軽タスクは高速・低コストなモデルへ、重タスクのみ高性能モデルへ自動でルーティングすることで、品質を維持しながらコストを抑えることを目指しています。

 

AI推論タスクのモデル振り分けイメージ

※注:本試算におけるモデル構成(GPT-4oやGemini Flash等)は研修発表当時のケーススタディ用試算です。実際の運用では、その時々の最新モデルや市場価格に合わせて構成をアップデートする前提として設計しています。

その結果、AI推論1回あたりの平均コストは

導入前:約1.60円
導入後:約0.28円

という試算になりました。
この前提で年間コストを比較すると、

年間コスト比較グラフ(導入前と導入後の削減効果)

導入前:約1億9,200万円
導入後:約3,360万円
となり、
年間約1億5,840万円(82.5%)のコスト削減という結果になりました。
※研修内でのシミュレーションであり、実際の導入時には業務内容や利用状況に応じて試算結果は変動します

ビジネスモデルもあわせて検討

今回の企画では、導入企業が初期投資を抑えられるよう、削減できたコストの一部を成果報酬としていただくモデルもあわせて検討しました。
お客様は削減効果を実感した分だけ費用を支払い、KDDIアイレットは継続的な価値提供によって収益を得る――そんな双方にメリットのある形を目指した提案です。

 

6. 最優秀賞。でも、教わった「事業化」の難しさ

発表ではありがたいことに最優秀賞をいただくことができました。

最優秀賞を受賞したチームでの集合写真

 

しかし、印象に残っているのは結果以上に、その後の質疑応答でした。

役員やAWS・Google Cloud のTop Engineerの方々や営業部の方からいただいた質問は、
技術そのものではなく、「本当に事業として成立するのか」という視点でした。

例えば、

  • 成果報酬モデルの場合、初月以降の継続的な収益はどう確保するのか。
  • AIモデルの価格が下がったり、高性能モデルが安価になった場合、このサービスの価値はどう変化するのか。
  • まずは自社導入で成功事例を作ると言っていたが、KDDIアイレット全体のAPI利用量を考えると、本当に運用できる規模なのか。

どれも企画を否定する質問ではなく、「サービスとして世の中に出すなら、そこまで考えよう」という
視点からのフィードバックでした。

この質疑応答を通して強く感じたのは、
優れた技術やアイデアだけでは、事業にはならないということです。

継続的な収益モデル、スケーラビリティ、市場変化への対応など、
ビジネスとして成長し続けるための視点まで考えて初めて、サービスとしての価値が生まれるのだと学びました。
今回の企画は研修での提案ですが、もし今後さらにブラッシュアップする機会があれば、こうしたフィードバックも踏まえながら、より実現性の高いサービスへ発展させていきたいと思っています。

7. おわりに 〜この研修から学んだ、一番大きなこと〜

私にとって今回の研修は、「新規事業を考える研修」以上の経験になりました。

もちろん、最優秀賞という結果は素直に嬉しかったです。
しかし、それ以上に印象に残っているのは、

アイデアを考えることと、事業として成立させることは全く別
ということでした。

技術的に面白いだけではなく、

本当にお客様に価値があるのか
継続して収益を生み出せるのか
市場の変化にも耐えられるのか

そうした視点まで考えて初めて、一つのサービスになる。
役員の方々との壁打ちや質疑応答を通して、その難しさと面白さを肌で感じることができました。

そして、何より印象的だったのは、
新卒の提案に対しても、本気で向き合ってくださるKDDIアイレットの文化です。

役員へ直接相談し、Slackでも気軽にコミュニケーションを取りながら企画をブラッシュアップできる。
こうした環境があったからこそ、4日間という短い期間でも、ここまで考え抜くことができたのだと思います。

KDDIアイレットには挑戦したい人の背中を押してくれる環境があります。

この記事を通して研修の雰囲気やKDDIアイレットらしさが少しでも伝わっていたら嬉しいです。

また今回の経験を活かし、これからも「もっとこうしたら良くなる」という視点を持ちながら、お客様や社会に新しい価値を届けられるエンジニアを目指していきます。