2023年11⽉15日 (水) 〜 16⽇ (木) に東京ビッグサイトにて開催された「Google Cloud Next Tokyo ’23」。

本イベントでは、機械学習やデータ分析、さらには SDGs まで幅広いテーマに関するセッションが実施され、各社が出展するブースも沢山展示されていました。

そんな最新情報が満載の「Google Cloud Next Tokyo ’23」において、
11⽉15日 (水) にアイレット 執行役員 / エバンジェリストの後藤和貴が登壇し、イトーキ様のオフィス分析ツール開発事例について解説しました。

本記事では、セッションの様子を一部ご紹介します。

アイレットが出展したブースは別記事でご紹介していますので、そちらもぜひご覧ください!

最新トレンド満載の「Google Cloud Next Tokyo ’23」! アイレットのブースをご紹介します

日本におけるデータ活用の実態

まず初めに後藤がお話ししたのが「日本におけるデータ活用課題」について。

総務省が行なった、日本・米国・ドイツの企業におけるデータ収集、データ蓄積の導入状況に関する調査によると、日本における導入状況は約2割とのこと。一方で米国やドイツは5割を超えていました。
海外と比較すると割合の差は明らかであり、かなり遅れを取っていることが分かります。

さらに、情報通信白書では以下のようにまとめられています。

「日本におけるデータの活用は米国やドイツに比べると進んでいないといえる。」
「各企業がより容易に幅広いデータを入手することが可能となれば、これまで利用可能なデータが入手できなかった企業においてもその経営に生かすことができるようになる。」

つまり、“企業がデータを収集し、経営に活かすべき”だと考えられるとのことでした。

そのような現状の中、国内でのデータ活用はどうなっているのか。
イトーキ様におけるオフィス環境のデータ活用方法を一例として、本セッションにてご紹介しました。

イトーキ様が行なったアンケートによると、コロナ禍においてリモートワークを利用している企業が多かった状況から一変、今では平均出社日数が4.6日/週と、オフィスワークへの回帰の傾向が見受けられるとのこと。

また同時に、オフィス内での Web 会議実施場所が不足するという課題も浮上しているとのことでした。

これらを踏まえ、「オフィス利用の在り方が変化する中で、さまざまな用途に対応していく必要がある。また、今後も生産性を上げるための準備をすべき状況だ。」と後藤は述べました。

そのために我々アイレットができるのは、データを収集し分析すること、その結果を活用・今後反映していくこと。

そこで、実際にご支援した具体例として、イトーキ様の事例を挙げました。

データ分析サービス「ITOKI OFFICE A/BI」開発事例

イトーキ様が取り組んでいる、オフィス利用のデータ分析サービス「ITOKI OFFICE A/BI」。

本サービスは、オフィスレイアウトのプランニングデータと場所の稼動データ、環境的なデータ、そして人の活動データを Google Cloud 上で統合し分析可能とするシステムです。

イトーキ様では、この「ITOKI OFFICE A/BI」に関して、さらなるオフィスワーカーの生産性向上サポートなど、今後のサービス拡充・発展に取り組まれています。

この取り組みに対し、アイレットは「ITOKI OFFICE A/BI」およびオフィスデータ分析サービスの開発を支援しました。

導入事例:データドリブンなオフィス構築サービスの実現に向けて、データ分析サービスのインフラ構築からアプリ開発、Web ページのデザインまで一気通貫でサポート!

“オフィスに関するデータ”として、レイアウトデータ・稼動データ・環境データ・活動データが挙げられますが、これらを取得するために、イトーキ様は以下2つのソリューションサービスを提供しています。

  • Workers Trail(IoT センサーを活用した位置情報提供サービス)
  • Performance Trail(組織と個人のパフォーマンス診断サービス)

「Workers Trail」は、IoT センサー「EXBeacon」を活用し、オフィス内での活動など、働き方の見える化ができるアプリケーション。「Performance Trail」は、個人や組織のパフォーマンス向上に向けた課題発見のためのクラウド型アンケートサービスです。

これらの取得データを統合し、分析に使う上で発生するのが「データの取得方法が異なる」という課題です。
「Workers Trail」は API からデータを取得できますが、「Performance Trail」は他のクラウド上で実装されており、かつファイル形式でした。

各データを統合し課題解決を目指すために PoC を行ない、すでにプロトタイプアプリケーションが開発されていましたが、テストマーケティングフェーズにおいても別の課題が浮上したとのことです。

そこで、これらの課題へどのように取り組んでいったのか。大きく3つが挙げられます。

提案型でのアプリ機能絞り込み

元々、プロトタイプアプリケーションは多機能である故に、扱い方や修正が複雑であったとのこと。

後藤は生成 AI で作成したアーミーナイフをイメージとして挙げ、「本来はスマートでデザインもよく使いやすいナイフが、機能追加を施した結果、逆に扱いづらくなり、そのまま次のフェーズに持ち込むことができない状況だった」とご紹介しました。

そこで、「何ができるか」から「サービスとして必要な機能はなにか」へフォーカスし、イトーキ様と都度議論をして選定していく手法を取り、変更後の機能的・デザイン的な整合性は、アイレット側で確認・調整する方法で進めていきました。

分析機能の向上

前述の通り、「Workers Trail」と「Performance Trail」はデータの取得経路が異なります。

そのため、流れを統一的に扱うために、一度 Cloud Storage にデータを格納し、Cloud Functions を通じて ETL 処理を実施、BigQuery へ移行・保管する形を取りました。

※「Extract (抽出)」・「Transform (変換)」・「Load (書き出し)」の略語

元々、プロトタイプのアプリではローカル環境に配置したファイルを読み込む方法をとっていましたが、BigQuery へ移行し、かつ事前に多くの分析向けの前処理を行なうことで、参照時のパフォーマンスを出す方向で調整。

また、主キーと外部キーで結合を最適化する最新のアップデートを適用し、さらなるパフォーマンスの向上を目指した結果、高速化を実現しました。

【改善結果の一例】

  • 実行時間 1 s ⇒ 262 ms
  • 消費したスロット時間 7 s ⇒ 39 ms

PoC で10秒以上かかっていた処理を、数秒程度まで短縮することに成功!

UI/UX の改善

可視化に関して、イトーキ様がご要望として挙げられたのが以下の3つ。

  • オフィスの利用状況だけでなく、その場所を利用した従業員のパフォーマンス傾向を可視化する
  • Workers Trail、Performance Trail 以外のデータも組み合わせて分析することを想定した作り
  • 観点を切り替えながら分析することを想定したパフォーマンス

これらのご要望に応える上で、またもや課題が発生しました。

PoC フェーズで使っていたウェブアプリでは Dash が採用されていましたが、画面要素の定義と Python のコードが密接に絡むため、デザイン性のみの改善などは容易ではありませんでした。

そのため、アイレットの開発チームだけでなくデザインチームも参画することで、開発効率を落とさずに、機能性とデザイン性の両立を実現しました。

結果として、ご要望全てにおいて改善を達成することができました。

※具体的にどのような実装をしたのかは、12月中旬に配信されるアーカイブにてご覧ください。

まとめ

全体を通して、Google Cloud の各サービスを多様に活用した結果、アプリケーションを実装でき、開発スケジュールも遅れることなく達成できました。

後藤は最後に、「今後もアイレットは Google Cloud のパワフルなサービスを生かしながら、イトーキ様に寄り添って、さまざまな要望や課題へ取り組んでいきたい。」と述べ、セッションを締めくくりました。

編集後記

今回ご紹介したのは、セッションの一部です。

より詳細な内容に興味がある方、実際の様子を体感したい方は、12月中旬より公開されるアーカイブをぜひご覧ください!

なお、株式会社イトーキ 藤田 浩彰様による講演「家具メーカーのイトーキがGoogle Cloud で挑戦する「オフィス 3.0」とは」も後日配信予定です。こちらも併せてご覧ください!

それでは、最後までお読みくださりありがとうございました!