要旨

Google Cloud Next Tokyo ’23 Day2 Keynote のレポートです。

本日も、朝早くから会場入りして、速報をお伝えいたします。
今日は、最大 6件ブログを書きますのでお楽しみに! (99割無理)

Keynote レポート

オープニングトーク

Keynote は Google 渕野さまのオープニングトークで始まりました。
新しいクラウドの使い方が、Developer Experience にどのように寄与するかが Keynote のテーマとなります。

Google は、25年の歴史の中で様々な困難に直面しています。

Google は検索エンジンの提供から始まり、一般の PC で稼働していたとのことです。
(エンジニアの中では有名な逸話ですね)

当初は、データがどこに有るか追跡するのが難しく、PC のディスクは頻繁に壊れるということもあり、拠点間を車のトランクに乗せてディスク搬送を行っていたとのことでした。

この課題を解決するため分散ファイルシステムを開発し、今の Colossus へと進化しているとのことです。
現在では、Google Cloud の仮想マシン、オブジェクトストレージ、データベース、Google Drive などのドライブに Colossus が利用されているとのことです。

また、サーバー管理のために当初は Python と MySQL で作られたアプリを利用していました。
サーバー管理を容易化するためのシステムとして Borg を構築したとのことです。

これは、サーバーをオーケストレーションする仕組みであり、これを OSS 化したアプリが Kubernetes とのことです。

Load Balancer として、Google は当初 3rd Party Appliance を使用していましたが、ARP ストームにより、たびたび壊滅的な影響が発生していたとのことです。
しかし、Appliance ベンダーによる解決が難しいため、自社でソフトウェアベースの Load Balancer を開発。

Maglev をソフトウェアベースのロードバランサーとしてリリースしたとのことです。

Colossus、Borg、Kubernetes、Maglev 、これらが Google を支える革新的なサービスであり、Google Cloud はこれらの強固な基盤の上に成り立っているとのことでした。

モダンインフラストラクチャクラウド

Google 安原さま

Google の モダンインフラストラクチャクラウドについて、以下の軸でお話がありました。

  • AI Optimized
  • Modern and Enterprise Workloads
  • Reliable and Scalable

詳細は下記のとおりです。

AI Optimized

Google Cloud の AI インフラストラクチャとして、Vertex AI や AI IaaS などの基盤が提供されています。
その中で、昨日の基調講演にもありましたが、Cloud TPU v5e は過去のモデルより高速かつ効率的に処理できる基盤とのことです。

VM としては、 機械学習に特化した A3 VM と、推論に特化した G3 VM を要しており、A3 VM は 2024年 6月より東京リージョンでも利用できるようになるとのことです。

また、AI などの大量のデータを転送するための基盤として、Transfer Appliance の話がありました。
Trannsfer Appliance を利用することで、大規模なデータをオフラインで高速に転送することが出来ます。
こちらは、東京リージョンで一般提供となっています。

Modern and Enterprise Workloads

ガートナーの予測では、2027 年までにグローバル組織の 90% が本番環境のワークロードをコンテナ化すると予測されています。

Google では、簡単にクラウドを利用できる Cloud Run と、マルチクラウド化が容易な Google Kubernetes Engine (GKE) を用意しています。
また、Cloud Run では Sidecar というコンテナの動作を拡張する仕組みが利用できるとのことで、エンタープライズ用途に更に使いやすくなったとのことです。

(筆者コメント: Cloud Run の Sidecar はかなり嬉しい! セキュリティ対策にも Sidecar はよく利用されています)

Enterprise Workloads では、最近 GA になった Kubernetes Enterprise の話もありました。

これは、マルチクラスターをまとめて管理できる機能で、複数環境に対してセキュリティやマネジメントの管理が容易になるとのことです。

Kubernetes Enterprise がクラスターをまとめて Fleet として管理する様子がデモされました。
チーム機能を用いて、複数のクラスターに対して一括でメンバーを追加したり。
クラスターをまたがる脆弱性や、コンプライアンス対応の確認ができるとのことです。

脆弱性管理では、ワークロードの脆弱性の他、パッケージ脆弱性も管理できるとのことでした。
ポリシーでは、PCI DSS のような業界の標準の他、Google のベストプラクティスを標準として利用できます。

これにより、ワンクリックで業界標準へのチェックができ、基準の厳しい業界でも利用できます。

サービスメッシュ機能では、マイクロサービス間の接続状況を管理することが出来ます。

Reliable and Scalable

ここでは、信頼性があり、スケーラブルな環境について話がありました。

新しい Google Cloud の管理基盤である Titanium では、コンピュートのさらなる機能向上が図られているとのことです。
Borg などのグーグルインフラストラクチャに機能の一部をオフロードすることにより、機能向上が図られています。

Hyperdisk Storage Pool というサービスでは、Google のストレージをプール化して、シンプロビジョニングでディスクを割り当てることができるようになったとのことです。

また、これらに合わせて SLA が 99.5% に向上し、一部インスタンスでは 99.9% になるとのことです。

Cross-Cloud Network の提供開始についても話があり、Cross-Cloud Interconnect が一般提供となり、 Google Cloud と他クラウドの接続を Google が SLA 付きで提供するとのことです。

また、Cloud NGFW の話もあり、Palo Alto Networks や Mandiant の協力により、次世代ファイアウォールを Google Cloud 上で利用できるとのことです。

CAPCOM ゲーム開発事例

CAPCOM 井上さまから、CAPCOM におけるゲーム開発の事例が紹介されました。

CAPCOM では、ストリートファイター6 のインフラを Google Cloud 上で構築しているとのことです。

書き込みの多いデータベースとして Spanner を利用して、全世界で安定した品質の書き込みを担保し、Anthos による障害に強いプラットフォームを構築して、その上でゲームを提供しているとのことでした。

これにより、ローンチ時の負荷によってサーバーが落ちることもなく、安定したアクセスが提供できたとのことです。

CAPCOM ではリソースの最適化を図っており、マネージドサービスの活用によってコスト最適化を実施しています。
余ったリソースを『おもしろさ』に再投資しているとのことです。

テクノロジーは「おもしろさ」のために。 という言葉で締めていましたが、クラウドによってビジネスのコアに再投資を行うのはとてもためになりました。

北國FHD マルチクラウド事例

北國FHD 杖村さまから、北國FHD におけるマルチクラウド事例の紹介がありました。

北國FHD さまは、地方銀行でありながらデジタルバンクのリリース、ノルマの廃止などに積極的にチャレンジしているとのことです。

IT 面においても、ATM を自社開発したり、勘定系を Microsoft Azure に Lift & Shift するなど、次世代地域デジタルプラットフォームとしてシステムの刷新を行っているとのことでした。

銀行は『超ミッションクリティカルシステム』のとのことで、クラウドであっても自社でコントロールすることが求められています。
そのため、Microsoft Azure と Google Cloud のマルチクラウド構成を組んでいるとのことでした。
それに伴い、Cross-Cloud Interconnect も実環境で性能テスト中とのことです。

Google Cloud を選定した理由としては、以下の点を挙げられていました。

  • 安全面
    • Google Cloud は他社クラウドに比べ、全面障害が少ない。
  • コンテナ技術の実績
    • Google は他社と比べるべくもないコンテナ技術を持っているため、技術的な相性が良かった。
  • カルチャー面の親和性
    • 北國FHD さまと、カルチャー面の親和性が高かった。
    • Google Mind の研修を受け、心理的な安定性が向上した。

北國FHD さまは、Google とともに次のステージへ。 として締めていました。

データクラウド最新情報

ここでは、LLM の活用について話がありました。

企業が集めているが活用が難しい、音声、画像、ドキュメントの活用に LLM を利用する事例がデモされました。

デモでは、コールセンター業務から必要な経営判断を行うまでが行われました。

コールセンターで蓄積している音声データを BigQuery で文字起こしすることを皮切りに、BigQuery で PaLM を用いてテキストデータから要約を作成。
さらに、苦情内容の分類を行うまで、すべて BigQuery の既存機能で解決されていました。

BigQuery で構造化データに分類した後は、既存の構造化データに分類し、Looker Studio で意思決定に必要な情報まで分析していました。

AI Lakehouse では、生成 AI の真価を引き出すとしていました。

構造化データストアと非構造化データストアを活用し、データ基盤はナレッジ基盤へ進化するとのことです。

Google Workspace

Google Workspace では、Google 上野さまと、TBS 山本さまの対談形式で話が進みました。

TBS は GSuite を導入以来、Google Workspace を活用されているとのことです。

目に見える変化としては、JNN グループ 28社中 27社で導入が進んでおり、企業間のコミュニケーションがスムーズになったとのことでした。

また、 AppSheet によるノーコードによる開発をグループ全体で推進しているとのことです。
現場で 非 IT 人材が自らアプリを作り、業務を改善していく文化を目指しているとのことです。

社内のハッカソンや、アイディアソンを行い、積極的に DX を推進しており、これをベースにしたアプリもリリースされたとのことです。

今後は、Duet AI に期待しているとのことで、Documents や Slides と連動した生成 AI に期待しているとのことでした。

Duet AI は 2024年中に日本語サポートされるとのことです。

Luup スタートアップにおける活用

Luup 岡田さまより、スタートアッププロダクトにおける Google Cloud の関わりについて話がありました。

Luup は電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを展開しており、街中を「駅前化」する理念の会社とのことです。

そのサービスのため、下記の要素が重要とのことです。

  • ポート密度
    • 利便性が向上し、どこでも利用できる。
  • 車両の種類
    • 車両のバリエーションを増やす。
  • 安定性、信頼性
    • いつでも利用できるように、サービスの品質を向上させる。

また、システムとしては以下の点に注目しているとのことです。

  • 可用性
  • 安定定性
  • スケーラビリティ
  • スモールスケールでのスタート

これらを実現するため、バックエンドとして Firabase を選択しているとのことです。
Firebase はレスポンスが高速であり、スケールできることが利点とのことでした。

システム改善のため、BigQuery による分析を行い、利用動態の解析、エリア展開計画へのフィードバック、オペレーション業務 (車両メンテナンス、バッテリー交換、配置作業)の最適化など、ビジネスの意思決定に利用しているとのことです。

Google Workspace や Google Maps を活用していることもあり、Google Cloud が最適であったとのことでした。

クロージング

Google 渕野さまの、銀行、ゲーム、イノベーティブな現場で活用される Google Cloud を活用することで、ビジネスイノベーションを進めるとの熱い想いでクロージングとなりました。

次回の Next Tokyo は 8/1 8/2 パシフィコ横浜で行われるとのことです。

感想

個人的に一番印象に残ったのは、CAPCOM さまの “余ったリソースを『おもしろさ』に再投資” という点です。

ビジネスのリソースは、人的・金銭的・時間的に有限です。
セキュリティを含め、必要な投資を行う必要が求められています。

複雑になったシステムを、Kubernetes Enterprise などでシンプルにして、開発・運用・保守のリソースを最適化。
余ったリソースを、セキュリティやコアビジネスなどに再投資することが、今求められていることかと思います。

クラウド利用を IaaS や PaaS で終わらせず、システムをクラウドネイティブ化することが今の経営に求められていると思いました。