概要
2022年の高校生向け新学習指導要領で、情報Iが必履修科目、情報IIが選択科目として登場しています。
実質2023年に情報IIが実際の教育現場での指導が始まったのですが、その教科書が凄いとXで最近話題になったのを覚えている方がいるかもしれません。
そこで、情報というカリキュラム自体がなかった世代の筆者が、実際に目次などをみてどんな事を勉強するのかを簡単に確認してみます。
ここでは文部科学省が公開している、教員研修用の教材を元に記載をしてまいります。
高等学校情報科「情報Ⅱ」教員研修用教材(本編)
第1章 情報社会の進展と情報技術
こちらでは、簡単なコンピューター・インターネットに関する歴史と変化から、情報セキュリティの必要性の解説、コミュニケーション手段の多様化についての解説、コンテンツの創造と活用についての解説、求められる資質・能力の変化について、将来の情報技術についてなど、浅めではあるものの私たちが知っておいても全く損がない内容について学習する内容となっています。
しかも、WiFiのセキュリティといった家庭内でも考える内容から組織におけるセキュリティ対策の概要までが含まれていたりもします。
この章で特に気になった点としては、求められる資質・能力の変化の部分でAIに関する記載があることです。
生成AIが代表するように、業務にAIを活用するケースが少しずつ増えてきたと感じています。これからの高校生は将来に求められる能力としてAIを適切に扱う必要があるという事を学習してくるのですね。
第2章 コミュニケーションとコンテンツ
こちらでは、コンテンツ制作に関わる内容を学習する内容となっています。
筆者は直接的な業務で関連する内容ではないのですが、軽く眺めてみるだけでもプロトタイピングによってUI/UXをどのような設計にするかなど、アプリケーション設計にも役に立つ知識が学習できるような内容があります。
また、発信手段としてのWeb・SNSによる情報発信についての考え方なども記載されており、また分析によっての改善などを行う点が解説されています。
第3章 情報とデータサイエンス
ここからが個人的には本番です。
こちらでは、データの信憑性・信頼性について考えさせ、適切に処理を行う力を養う内容や、データ形式の違いや蓄積方法の重要性を理解し適切に扱う為の思考を身につけさせるなど、ITに関わる仕事を行いたい場合には知っておいた方が良い内容が記載されています。
また、実際にRDSの操作なども行うカリキュラムとなっており、実業務においても知っておいて損はない内容となっています。
ビックリするのが、重回帰分析の実施や主成分分析の実施、クラスタリングによる分類など、データサイエンティストを目指すならば知っておきたい解析手法についての学習が含まれている事です。またAI学習の基礎となるニューラルネットワークの解説や、テキストマイニング・画像認識を実際に行うなど、AIに関連した内容の学習も存在します。
我々の業務では直接的に扱う事が少ない点ではありますが、データ形式の違い、それに伴う蓄積方法の観点についてはお客様に提案する内容に反映されたりもするので知っておくとアドバンテージとなりそうな項目です。
それ以外にもテキストマイニングの項に含まれているテキストからベクトル変換を行って感情分析を行うなど、生成AIで活用されている技術の足がかりとなるような内容があります。
第4章 情報システムとプログラミング
こちらでは、情報システムの情報の流れや、ネットワーク構成、開発についての内容が記載されています。
データの処理形態(バッチ処理やトランザクション処理等)や集中処理・分散処理、3層クライアントサーバー構成なども例として記載されており、実際のシステム構築に関連する内容が多く出てくる項になっています。
また、セキュリティとして暗号化・復号に関する知識や、ファイアウォール、アクセス権、ネットワークのセグメント化についても記載がされており、基本的な知識を獲得できます。
また、実際の開発時に行う設計の考え方やテストについて、またウォーターフォール開発のV時モデルなど、専門的な学習の際に学んできたような内容となっています。
アプリケーション開発をやっている方であれば知っておくととても良い内容ですね。
第5章 情報と情報技術を活用した問題発見・解決の探究
4章までの内容を用いて情報技術を活用した問題の発見と解決に関する活動が設定されるようです。
情報Iと合わせて内容を身につけた時には簡単なシステムが作成出来るという前提にたったシステム開発等を実際に行うなどが課題例として上げられています。
筆者が専門学校時代にやった、簡単ではあるが実際に動作するレベルのアプリケーション開発を行い、発表するといった内容が高校時代から経験出来るのはとても面白いなと思っています。
感想
簡単にはなりましたが、資料を読んで大まかな内容について記載いたしました。
個人的に知らない分野だったりが高校生の教科書にて学習が行われているという状況が凄いなと思っています。
これから未来、ITの現場に入ってくる一定数の人はこのような学習が行われているので知らずにいるより、同程度については学習しておく方が良いのではないかと考えています。
軽く資料を読んだ結果、直接的に弊社の業務にすぐに繋がるというわけではないと判断しましたが、幅広い知識を持つことでお客様への提案などにも生かせそうな感覚を持っています。
目次レベルではクラウドに関連する内容自体は無いように見受けられるのですが、それでもアプリケーション開発の基礎部分を学習する事でクラウドインフラ構築の考え方に生かすことが出来るのではないかと思っています。
正直、高校でこのレベルの内容を授業して貰えるのがとてもうらやましいです。
なお、教科書は一般でも購入が出来る場合があり、全国の一部書店で生徒への販売が終了した後に購入できる場合があります。
情報IIについては高校用教科書となるので、主に4月1日頃から書店で購入可能です。但し、学校への供給・販売が完了していない場合は完了後に一般発売となるようです。
各地で購入できる可能性がある書店については下記から探す事が出来ます。
気になった方は購入を検討してみてはいかがでしょうか。
筆者は購入しようと待ち構えています。