こんにちは、デザイン事業部の田村です。
自分の行動や思考をより良い方向にコントロールしていくためのひとつの考え方をご紹介します。
選択理論とは
もし電話が鳴ったら電話に出ますか?
もし買い物に出掛けてお目当ての品がなかった場合落ち込みますか?
電話が鳴ること、お目当ての品がないこと、それぞれはあくまで「できごと」、「情報」でありその情報によって自分の取る行動は選択できます。電話が鳴ったら反射的に取ることがありますがが取らない選択肢もあります。同様にお目当ての品がなくても落胆するのではなく気持ちを切り替えて落胆しない選択肢を取ることができます。
日常生活を送る中で何か悲しいできごとがあった際に、落ち込んだ経験があると思います。「できごと」と「落ち込む」ことは繋がっていて、「できごと」によって自動的に「落ち込まされている」と思うかもしれません。これを選択理論で捉えると、「できごと」はあくまで「情報」であり、「情報」によって自動的に「落ち込まされている」のではなく「落ち込む」はあくまでも「落ち込む」という行動を自分で選択しているという考え方です。
ほとんどの人間関係は、選択理論を理解し、それを一貫して実践することで向上させることができます。この理論は、人々がより良いリーダー、教師、配偶者、友人になるのに役立っています。また、最も重要な関係である自分自身との関係を改善する手助けにもなるとされています。
全行動(Total Behavior)は4つの構成要素から成り立つ
選択理論において 全ての行動は、次の2つの基本的な考えから始まります。まず、行動は選択から分離できないということ。私たちは常に自分がどう行動するかを選んでおり、どんな時もその選択をしているという考えです。次に、他人の行動をコントロールすることはできず、コントロールできるのは自分自身の行動だけという点です。
グラッサーの理論における「全行動(Total Behavior)」は、以下の4つの要素で構成されています:
- 行動(Acting)
- 思考(Thinking)
- 感情(Feeling)
- 生理的反応(Physiology)
グラッサーは、私たちは最初の2つ、つまり「行動」と「思考」についてはかなりのコントロールや選択ができるとしています。しかし、「感情」と「生理的反応」に関しては、これらが無意識的であるため、直接的に選択する能力は少ないとしています。それにもかかわらず、これら4つの要素は密接に結びついており、「行動」や「思考」で行った選択は、「感情」や「生理的反応」に大きな影響を与えるとしています。
例えば急に「涙を流してください。」と言われてもなかなか難しいですよね。涙を流すためには悲しい記憶を思い出したり感動的な映画を見たり、目をずっと開けておいて強制的に涙を流すことならできるかもしれません。反対に突然「笑ってください。」と言われても何もない状態で笑うのは難しく面白かった思い出を思い出したりして自分の「行動」や「思考」で行った選択で「感情」や「生理的反応」をコントロールできることは想像がつきやすいと思います。
私たちは各々、世界を主観的フィルターを通して知覚している
知覚された世界(Perceived World)
選択理論では、現実世界を経験する唯一の方法は自分の知覚システムを通じてだと説明されています。現実世界からの情報はまず、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚という5つの感覚を通して入ってきます。次に、これらの感覚はあなたの知覚システムを通過し、「トータル・ナレッジ・フィルター(Total Knowledge Filter)」 から始まります。これは、あなたが人生で知っていることや経験したすべてを表すフィルターです。
このフィルターを通じて、現実の情報が処理され、あなたが現実をどう理解し、どう反応するかが決まります。すなわち、私たちの現実理解は、過去の経験や知識によって形成されており、現実をそのままではなく、自分自身のフィルターを通して認識しているということです。
情報がトータル・ナレッジ・フィルターを通過すると、次の3つのいずれかが起こります。
- その情報があなたにとって意味がないと判断され、知覚はそこで止まります。
- その情報をすぐには認識できないが、意味があるかもしれないと感じ、さらに調査する動機が生まれます。
- その情報があなたにとって意味があると判断され、次のフィルターである価値フィルター(Valuing Filter)に進みます。
情報が価値フィルターを通過すると、次の3つのうち1つの価値が与えられます。
- その情報が快楽的な場合、ポジティブな価値が与えられます。
- 苦痛を伴う場合、ネガティブな価値が与えられます。
- どちらでもない場合、その情報は中立として残ります。
これが、私たちが現実世界をどのように知覚し、評価し、行動に移すかを決定するプロセスです。すなわち私たちが現実と考えているものは、実際には個々の主観的なフィルターを通じて構築されており、私たちの価値観や経験によって、現実の認識は大きく異なります。私たちは自分が感覚を通じて経験した情報や現実が「正しい」と信じがちです。しかし、他の人が同じ情報を異なる方法で見たり、聞いたり、感じたりする可能性があることを理解するのは難しいものです。
選択理論の実践
選択理論の重要な前提の一つは、「すべての行動には目的がある」 ということです。つまり、あなたの行動は常に、その時点での情報をもとに欲しいものを得て、ニーズをより効果的に満たそうとする最善の試みです。選択理論を実生活で実践するには、外的コントロールから内的コントロールへの変革が必要です。外的コントロールとは、自分の経験や行動が運、状況、他人、外部要因によって決定されているという考え方です。私たちの行動や選択が周囲の環境や他人によって影響を受けていると見なします。これに対して、内的コントロールは、人間の行動は外部の刺激や他者によるコントロールに依存するのではなく、内的な動機づけによるものであり自己決定に基づいているという考え方です。以下に実践にあたってポイントとなる3点をご紹介します。
1.自己評価の重要性
選択理論では、私たちのすべての行動は自分の基本的なニーズを満たすために選択されているとされています。しかし、その行動が本当に効果的かどうかは、定期的に見直す必要があります。ここでの「自己評価」は、自分が取っている行動が自分が望む結果を生み出しているかどうかを客観的に振り返るプロセスです。
例えば、「人とのつながり」を満たしたいと思っているのに、他人と対立するような行動をとっている場合、その行動は自分のニーズを十分に満たしていないかもしれません。自己評価によって、自分の行動を改善し、より効果的な行動を選択することができます。
2.他者のニーズを妨げない行動
選択理論は、単に自分のニーズを満たすことだけを強調しているわけではありません。他者との関係性も非常に重要です。あなたの行動が他者のニーズを阻害すると、長期的には信頼関係が損なわれ、自分のニーズを満たすことも難しくなります。
他の人のニーズを妨げない方法で行動することは、選択理論の中で「つながりを保つ習慣」の一部であり、これは「愛と所属」のニーズを満たすためにも不可欠です。たとえば、他者に対して支配的になったり、批判的な態度を取ることは、つながりを弱め、最終的には自分自身の「愛と所属」のニーズを満たすことが難しくなります。
3.バランスの取れた行動選択
選択理論では、他者と自分のニーズをバランスよく満たすことが理想的です。自分の行動がどのように他者に影響を与えているのかを意識し、必要に応じて行動を修正することが求められます。これは、外的コントロールの放棄と関係しています。外的コントロールは他者を操作して自分のニーズを満たそうとする行動ですが、それは信頼関係を損ない、長期的には有効ではありません。
このように自己評価によって自分の行動を振り返り、他者のニーズも考慮に入れた行動選択をすることが大切です。
良好な関係を築くために身につけたい習慣と避けたい習慣
身につけたい7つの習慣
- サポートする
- 励ます
- 耳を傾ける
- 受け入れる
- 信頼する
- 尊重する
- 違いを交渉する
これらの「身につけたい習慣」と対極にあるのが、外的コントロールに基づく避けたい習慣です。これらの習慣は、関係の崩壊を引き起こし、人々を孤立させます。孤立は多くの人間が直面する問題につながる可能性があります。またこれらの習慣は、人をコントロールしようとするために使われますが、これを利用することは誤解や反感を生むことが多く、関係を悪化させる要因となります。
避けたい7つの習慣
- 批判する
- 非難する
- 不平を言う
- しつこく言う
- 脅す
- 罰する
- 賄賂や報酬を使ってコントロールする
健全な関係を築くためには、互いをコントロールしようとするのをやめ、代わりにサポートし、励まし、受け入れ、信頼し、尊重し、耳を傾けることが非常に重要です。幸せは選択であるように、幸せな関係も選択です。身につけたい習慣を使うか、避けたい習慣を使うかは、あなたが選ぶことができます。
まとめ
つい自分の見方で物事を考えて他の人も同じ尺度で物事が見えている前提で考えてしまい、目線を揃えずに意見だけ出し合っていると変なふうに意見が食い違ってしまったり、発生せずに済んだ諍いを生んでしまう可能性があります。個々人それぞれ異なる認識を持つことを忘れずに、サポートし、励まし、受け入れ、信頼し、尊重し、耳を傾けることを大切にすること。
日々、業務を続けていく中で、自分のコントロール外のことには執着せずに、何か落ち込むことがあった場合も自分が「落ち込む」という行動を選択してとっているという視点を持って客観的に日々自分にとっていい選択をしていきたいと思います。
「電話が鳴るので取る。」ように同じ選択をし続けていると、「選択した」という意思の部分がなくなってしまったかのように、「こうされたらこうなっちゃうよね。」と受け止めがちですが元々は自分で選んだことだという意識を忘れずに外的な要因に振り回されるのではなく、自分自身で意思決定していこうと思います。
今回の記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
参考
選択理論.jp―ウィリアム・グラッサー博士の提唱する、より良い人間関係を築くための心理学 https://www.choicetheory.jp/
GLASSER INSTITUTE for CHOICE THEORY https://wglasser.com/
Little Book of Choice Theory®