こんにちは、アイレットの向井です。AWS re:Invent 2024 のセッションレポートです。

セッション情報

Empowering women in AI: Celebrating women leading the gen AI frontier

「生成AIの最前線を切り拓く女性たち」というセッションです。

This session features a panel of seasoned AI startup founders and investors, alongside a tactical demo of Amazon Bedrock, and wraps up with the reveal of the Women of Gen AI Portrait Project, spotlighting leaders in the space. The goal of this session is to foster a community of women building and investing in AI, demonstrating how AWS can empower and elevate your success.

(以下翻訳)このセッションでは、経験豊富なAIスタートアップの創業者や投資家によるパネルディスカッションに加え、(省略)AI分野で活躍する女性リーダーが紹介されます。本セッションの目的は、AIの構築と投資に携わる女性たちのコミュニティを育み、AWSがどのようにあなたの成功を支援し、向上させるかを示します。

3名の女性創業者をゲストスピーカーとして迎え、彼女達の企業の立ち上げや取り組みについて、インタビュー形式で進むセッションでした。
re:Invent には、ハンズオンやサービスデモの他にもこういったゲストスピーカーがお話をするものも多くあります。
私も男性が多いIT業界で女性エンジニアとして働く中で、やはり海外で活躍する女性リーダーのお話は気になり、楽しみにしていたセッションの1つでした。参加者も女性が多かったです。

セッション詳細

女性創業者の資金調達の難しさ

まず司会の方が、女性創業者が投資を受けることの難しさについて話していました。

女性創業者が投資家から支援を受けるのは難しく、実際に女性にはわずか2%しか資金が提供されていないとのことでした。投資家の中で女性が運営する共同出資社は全体の11%にとどまっています。また、司会者が「この中で創業者や投資家は?」と尋ねると、手を挙げたのは5,6人だけで、逆に「開発者は?」と聞いた時には2/3以上の人が手を挙げていました。

女性開発者は増えてきているものの、女性創業者や投資家はまだまだ少ないことを実感しました。

ゲストスピーカー

ゲストスピーカーは以下の方達です。

まず左から2番目のベリンダさんは、HubblelQ という会社のCOO兼創業者で、リモートワークを行うユーザー向けのITサポートツールを開発しています。
コミュニケーションとマネージドITサービスの専門知識を持ち、AIを活用しユーザーが自分で技術的な問題を解決し、生産性を向上させコストを削減できるようなプロアクティブなツールを提供することを目指しています。

その右側は、EngFlowの創業者であるヘレンさんです。
EngFlowは、クラウド環境に最適化されたコスト効率の良い方法でビルドとテストを高速化を支援する企業です。彼女はエグゼクティブ・ディレクターやCTO、Googleのエンジニア・マネージャーとしての経験を活かし、現在はデベロッパーエクスペリエンス戦略のアドバイザーとして活躍されています。

一番右側は、AudioShakeの共同創業者兼CEOであるジェシカさんです。
AudioShakeは、音声分割AI技術を使用して音声をより編集しやすく、便利にするサービスで、世界最大級のメディア、スピーチ企業でも採用されています。ジェシカさんはGoogleで10年以上勤務し、その後、ニューヨーク・タイムズなどでもその活躍が紹介されています。


– 会社を設立するきっかけはどのようなものでしたか?

ベリンダ:私が起業したのは、リモートワークがきっかけでした。以前から技術サポートの工程にイライラしていて、おそらく皆さんも共感できる部分かと思いますが、問題が起きるとチケットを起票し対応を待つ、これが非常に手間で時間がかかりストレスが溜まるんです。一方で、マネージドITサービスにも関わっていたので、ITサポートのプロセスをもっと簡単で効率的にできないかと思ったんです。

ジェシカ:東京のGoogleに勤めていた時、私はカラオケが大好きでした。共同創業者とよく行っていたんですが、ある日、「どうして昔のパンクやヒップホップとか、自分の好きな曲が歌えないんだろう?」って思ったんです。全部の曲からボーカルだけを分けられたら面白いなと思い、これが10年前のアイデアでした。その後、ディープラーニングが進化しているのを見て、音楽を編集してプログラミングで整理できたらどうなるだろうと思ったんです。ちょうどその頃、現在の職場を離れて、新たな分野で経験を積みたいと思っていました。

ヘレン:私は銀行でC言語ソフトウェアエンジニアからキャリアをスタートし、その中でビルドテストを行うことが多かったのですが、これが非常にコストと時間がかかっていました。その後、Googleに入社して、開発者の生産性を上げるためにBazelというビルドシステムを作りました。これによって、ソフトウェア開発が格段に早くなり、エラー修正もスムーズになりました。それから、Bazelをオープンソース化し、SpaceXやUberなどの企業にも導入されました。現在、私は共同創業者と一緒に、クラウドを活用してさらに複雑になったソフトウェア開発やモデル構築を加速させる技術に取り組んでいます。

みなさんやはり世界で活躍する女性リーダーなだけあり、経歴がすごいです。
さらに起業のきっかけを聞いて、みんな既存の仕組みに挑戦する姿勢がすごいなと思いました。
会社員時代に感じた問題を「もっと効率よくできるはず!」と考えて、解決策だけでなく、その技術を広めて業界全体に新しい風を吹き込もうとしているところが本当に素晴らしいなと思いました。


– 次に、どうやって起業を実現したのかについて教えてください。女性の資金調達が難しいという状況で、起業にどんな影響やサポートがありましたか?

ベリンダ:新規創業者としての道のりは簡単ではありませんでした。最初は、もう何でもやってみようって感じで、たくさんの共同創業者と一緒に動いていました。その後、戦略を変えて、誰にアプローチするかを意識して考えるようになりました。女性に投資したことがある投資家、同じミッションを共有している投資家をターゲットにして、資金調達に取り組みました。それと、シリコンバレーに拠点を置いていたので、最初はシリコンバレー周辺のVC(ベンチャーキャピタル)にアプローチしていたんですが、戦略を変えてシリコンバレー外にも目を向けました。その結果、アトランタに拠点を置くVCから資金を調達することができました。一人の投資家が引き受けてくれれば、その後、他の投資家も続いてくるんです。

ジェシカ:私はGoogleの経営チームにいたので、VCとの接点自体は得やすかったんですが、最初に驚いたのは、「音楽はお金にならない」と言われたことです。最初はどこでもノーばかりで、なぜダメなのか全然分かりませんでした。でも音楽業界って競争が激しくて、市場も小さいから仕方ない部分もあったのかと思います。でも、時々不意に聞かれる質問に驚くこともあり、「子どもはどうするの?」みたいな。そういう質問が出てくると、「ノーの理由ってこれなんじゃないか?」って思い始めるんです。その後、主に音楽と映画業界のエンジェル投資家と話すようになり、みんなテック業界出身でエンタメ業界出身じゃなかったのに、私たちが作っているものにとてもワクワクしてくれたんです。だから、私はそれ以降VCのミーティングは受けず、エンジェル投資家だけに絞ることに決めました。結果的に2週間ほどで資金調達が決まりました。

ヘレン:私は素晴らしいメンターや友達に恵まれたけど、実際にお金をくれた人は少なかったですね。そういう時に、本当に誰が自分の友達なのか分かるんですよね。最初、ニューヨークでのネットワークを活かして紹介を受けていましたが、当時は開発者向けのプロダクティビティ分野があまり注目されていませんでした。素晴らしいアイデアを生み出すけど、外部で使う形にするのが難しいので、それが投資家には響かなかった。最初はピッチも上手くいかず、アイデアだけでは誰もお金を出してくれませんでした。そこで、自分たちの資金で製品を作り始め、1年半で顧客を獲得。その後、アクセラレーターに応募し、素晴らしいメンターに出会ってピッチの方法を改善すると、投資家の反応が良くなり、その後はお客様の声をスライドに載せたことで一気に注目を集めました。こうして、大手投資家とつながり、無事に資金調達に成功しました。


– お二人はAWSアクセラレーターを経てピッチすることになったんですよね。AWSがどのように助けになったか、詳しく話してもらえますか?

ベリンダ:私たちにとって、AWSは本当に大きなサポートでした。忘れられないのは、エンジェル投資家や家族、友人から資金を調達しても、銀行口座に残ったのは1万ドルだけだった時、AWSインパクトアクセラレーターに選ばれたこと。これは私たちにとって命綱でした。AWSのアクセラレータープログラムでは、クラウドクレジットや助成金がもらえ、MVPを作成して市場に出るための資金が確保できました。さらに、投資家とのネットワークやエンジニアへのアクセスも得られ、プロトタイプ開発にとても助かりました。

ジェシカ:私たちはAWSアクセラレーターに参加してから3年半が経ちました。最初は他のスタートアップと同じように、AWSからクレジットをもらうことから始めましたが、その後もどんどんAWSを活用し、特に技術サポートは大きな助けになりました。例えば、SageMakerについて全く知らなかったのですが、AWSからのサポートを受けられました。AWSアクセラレーターは、株式を取られずにとても多くのサポートを提供してくれるので、マーケットに出るための支援やさまざまなツール、リソースにアクセスできるのは本当にありがたかったです。また、同じような課題を持つAI系のスタートアップ創業者たちと交流できる点も大きなメリットでした。

スタートアップの、特に女性の資金調達の難しさについては、大きなハードルがあることがわかりました。
紹介やネットワーキングの大切さもありますが、そもそもそのネットワークにアクセスしにくいということが大きな問題なんですね、、、それでも、最近は女性向けの投資ファンドやネットワークも増えて、AWSのスタートアップ支援プログラムなどがあり少しずつ状況は改善しつつあるんですね。

AWSアクセラレーターとは

初期段階のスタートアップ企業に、成長を加速させるための技術的専門知識、メンターシップ、投資家との接触、クレジット、リソースを提供する、期間限定のコホートベースのプログラムです。アクセラレーターは、スタートアップが数週間にわたって大きな進歩を遂げるのを支援する体系的なサポートを提供します。(AWS スタートアッププログラムより引用)

– 話をAIに切り替えて、今後AIに一番期待していること、またAIが各業界をどのように変えると思いますか?

ヘレン:開発では、特にコードを書く人たちは、AIに対して懐疑的な声が多いのもわかります。AIを使ったツール(例えばGitHubのCopilot)がどんどん増えてきていて、効率は上がるけど、その分悪いコードもたくさん生成されるようになっています。最近、Uberのエンジニアと話したときに、AIを使ってコードの質を向上させる取り組みを聞きました。AIでコードを作成しても、質が伴わないと意味がないからです。こういったトレンドに対応するため、生成されたコードを処理するためのインフラが必要です。私たちEngFlowは、コード生成を複数のクラウドサーバーに分散して、インフラを効率化しています。低コードソリューションはビルド時間が長くなりがちですが、プロセスを分散化することで効率よく開発を進めています。

ジェシカ:私もCopilotのようなツールにワクワクしています。特に創造的な作業には大きな可能性を感じています。私たちのサービスは、メディアやエンタメ業界で使えるAI技術を提供しています。例えば、大手メディアに音声分割ツールを提供して、ダイアログ編集など様々な仕事をサポートしています。複数の話者の音声を分けたり、あいづちや笑い声を取り除いたりして、コンピューターに人間の会話がどうなっているかを理解させる技術を開発しています。音声が重要な役割を果たす中で、私たちの技術は大きな意味があると思っています。

ベリンダ:私たちはAIがITサポートを効率化し、問題が大きくなる前に解決できることに期待しています。現在私たちのサービスは、ユーザーが自分で解決できるような支援をしていますが、将来的にはAIが自動で問題を発見して修復できるようにしたいと考えています。AIでコード生成効率が上がる一方で悪いコードも増えているのは共感でき、AIに対して慎重にならざるを得ません。でも、AIを使って効率化する動きは確実に進んでおり、特にITサポートの進化にはワクワクしていて、AIが自動で問題を解決する未来が来るとサポートの効率が劇的に向上するはず。全体的に、AI活用が広がる中で、開発やサポートの効率化に貢献できるツールがどんどん進化していくのは、とても楽しみです。

やはり、開発作業の効率化やユーザーの問題解決を助けるための実用的なAI活用がトレンドになってくるようですね。
指摘されているように、AI導入には質的な問題でまだ慎重な意見も多いですが、さらにそこを解決するためのAIの取り組みも考えられているということで、期待大です。
また全員もれなく自社のサービスを宣伝している点もさすがだなと思いました。

おわりに

スタートアップで活躍する女性創業者の話にとても刺激を受けました。それぞれが問題解決のため、AIの可能性を活かしながらビジネスチャンスを見出していく過程が素晴らしいなと思いました。
資金調達の苦労やネットワークの作り方についても興味深かったです。最初はうまくいかなくても諦めない姿勢は本当に尊敬します。
また、AWSはクラウドサービスだけでなく、スタートアップへの支援もしていることを初めて知りました。
今後、ますます女性リーダーがIT業界で活躍していくのが楽しみです。