内部統制推進室 兼 クラウドインテグレーション事業部の廣山です。
遅ればせながら、Google Cloud Next 2025 現地参加1日目のイベントレポートをお届けいたします。
セッション情報
セッションタイトル:TELUS and Chrome Enterprise: Secure enterprise browsing for modern endpoint security
はじめに
Google の Chrome Enterprise プロダクトリードである Hakan Killic 氏と、特別ゲストとしてカナダの大手通信企業TELUSのエンタープライズITサービスイネーブルメント担当バイスプレジデントであるSteve Banick 氏をお迎えした対談をもとに、セキュアエンタープライズブラウザ市場の変化と、TELUS 社がどのように課題に対応しているのかをお話しいただけました。
Steve Banick 氏は、IT業界で長年の経験を持つベテランです。対談の中で、彼はTELUS社の変革について語りました。元々カナダ有数の通信会社であったTELUS社は、過去15〜20年で大きく変化し、現在では世界33カ国に13万3千人のチームメンバーを擁するグローバル企業となっています。その事業内容も、従来の通信事業に加え、ITヘルスケア、従業員支援、農業・消費財のサプライチェーン近代化、国際的なデジタルCXビジネスなど、多岐にわたっています。Banick氏は、このようなグローバルで多様な事業展開を支えるエンタープライズITサービスの責任者として、コラボレーションツール、チームメンバーのテクノロジー、ERPバックオフィスなどを統括しています。
グローバル規模で事業を展開するTELUS社は、多くの企業が直面するであろう3つの大きな課題に直面しています。
スケール: 13万3千人という大規模な組織において、テクノロジーと働き方を統一し、シームレスに機能させること。
M&A: 過去10年間で約90件の買収を実施しており、異なる技術環境を持つチームメンバーにポジティブな体験を提供すること。
技術の変化: 運用コストを削減しながら、顧客へのサービス提供を高速化し続けること。
なお、本ブログでの「Chrome Enterprise」の記載のほとんどが、「Chrome Enterprise Premium」の機能になります。対談の言葉に合わせて、前者で記載しておりますが、ここで補足させていただきます。
Chrome Enterprise との出会い
このような課題を抱える中、TELUS 社は包括的なリスク管理戦略の一環として、セキュアブラウザへの移行を検討していました 。Google Workspace を長年利用していた同社は Chrome には馴染みがあったものの、Chrome Enterprise の機能については十分には認識していなかったといいます。
Chrome Enterprise 導入の最大のきっかけは、リモートアクセス(仮想デスクトップ)という具体的なビジネス課題の解決でした。多くのチームメンバーが様々な場所にいる TELUS 社にとって、セキュアなリモートアクセス環境の提供は不可欠であり、既存のソリューションの刷新を検討していました。その過程で、偶然にもChrome Enterprise に出会い、リモートデスクトップ体験の近代化だけでなく、デバイス管理とエンドポイントセキュリティの大幅な改善が、追加のエージェントや複雑さを増やすことなく実現できることに気づいたのです。
Chrome Enterprise 導入のメリット
Chrome Enterpriseの大きな利点の一つは、既存のデバイスにすでにChromeが搭載されていることです。これにより、新たなツールの導入に伴うチームメンバーへの負担や、管理・運用における複雑さを大幅に軽減できます。
TELUS 社では、現在約500名のパイロットユーザーが Chrome Enterprise プラットフォームを利用しており、2025年6月から7月にかけて約2万人のチームメンバーに展開する計画です。最終的には全社への展開を目指しています。
導入後のエンドユーザーの反応は非常にポジティブです。特に、既存の仮想デスクトップ環境から移行したコンタクトセンターの担当者からは、生産性の向上が報告されています。例えば、Chrome OSデバイスとChrome Enterpriseの組み合わせにより、システムの起動から業務開始までの時間が3〜4倍速くなったといいます。また、従来の環境で課題となっていた遅延や、VPN接続といった追加の手順が不要になったことも好評です。
柔軟なポリシー管理
Chrome Enterpriseの柔軟なポリシー管理機能も、多様な事業部門と地域に展開するTELUS社にとって重要なメリットです。法規制やコンプライアンス上の理由、あるいは生産性向上のために、チームごとに異なる設定を一元的に、かつ比較的容易に管理できる点を評価しています。また、管理コンソールの使いやすさや、迅速なポリシー変更やテストが可能になる点も、従来の複雑な管理体制と比較して大きな利点です。
Steve Banick 氏は、TELUS 社のミッションを「チームメンバーの体験を可能な限り最高の状態にし、生産性を高めること」と語ります。Chrome Enterprise の導入は、まさにそのミッションを体現するものであり、ブラウザベースの働き方の実現に向けた大きな一歩と捉えています。買収や新規採用時のオンボーディングの自動化、柔軟性とコントロールのバランスにおいても、すでにポジティブな効果を実感しているとのことです。
AIとウェブブラウジングの未来
対談では、AI の進化とウェブブラウジングの将来についても議論が及びました。TELUS 社は、AI が組織内のあらゆる役割や機能において改善をもたらすと確信しており、早期から AI に積極的に投資してきました。ウェブブラウザを共通のインターフェースとすることで、AI 技術をチームメンバーが利用しやすくなり、セキュリティやプライバシーの管理も容易に行えると期待しています。
この点は、私もすごく同意します。ウェブブラウザにインターフェースを集約することで、効率的なセキュリティ対策を打つことができます。
将来的には、管理コンソールに Gemini の機能が導入されることで、管理者の業務効率化にも貢献すると見込んでいます。ただし、AI 導入による具体的なビジネスメリットの測定はまだ初期段階であり 、今後の課題であることも率直に語られました。
まとめ
TELUS 社によるChrome Enterprise の導入事例は、グローバル規模の企業が直面するエンドポイントセキュリティ、デバイス管理、そしてエンドユーザー体験の向上といった課題に対して、セキュアブラウザ(エンタープライズブラウザ)が有効なソリューションとなり得ることの事例として、非常に参考になりました。
もともと注目していたサービスではありますが、さらに積極的に検証と導入を進めたいと思います!