クラウドインテグレーション事業部の小谷です。
2025年10月13日〜16日の4日間で開催される「Oracle AI World 2025」に現地参加しています。最新情報を皆さんにお届けするために随時ブログをアップしていきますので、よろしければご覧ください。
今回ご紹介するセッションは、ソリューションキーノートと呼ばれる特定の製品に焦点を当てた基調講演となります。
ソリューションキーノートセッション名:Oracle Cloud Your Way: Multicloud, Dedicated, Alloy, Sovereign
本記事では、この注目のセッションで何が語られたのか、その要点をレポートします。
セッションの概要
Oracle Cloud Infrastructure (OCI)担当SVPのKaran Batta氏がホストを務め、顧客が直面する多様な要件に対し、Oracleがいかに技術面・商業面で柔軟な「選択肢」を提供しているかが、実際の顧客事例と共に語られました。
本セッションで語られた内容は多岐にわたりますが、特に重要だと感じられたポイントは以下の通りです。
- 「選択肢」こそが核心: Oracleの戦略は、技術的な配置(どこで動かすか)と商業的な柔軟性(どう支払うか)の両面で、顧客に究極の選択肢を提供することにある。
- マルチクラウドが標準に: UberやState Streetの事例が示すように、複数のクラウド上でOracleのテクノロジーをネイティブに活用できる。
- 究極のオンプレミス、「Dedicated Region」: Meta社が実践する、自社データセンター内でOCIの全機能を利用する先進的な取り組み。
- 契約の壁を取り払う「Multicloud Universal Credits」: 一度の契約で、どのクラウド上のOracleサービスにも充当できる画期的な支払いモデル。
- パートナーがクラウド事業者になる「Alloy」: ニュージーランドのTEAM Cloud社が、データ主権の課題を解決した方法。
セッション内容の詳細
1. Karan Batta氏によるオープニング:「選択肢」の重要性
セッションは、OCI担当SVPのKaran Batta氏による「選択肢は基本的人権であり、ビジネスにおいてもイノベーションの源泉である」という力強いメッセージから始まりました。
Oracleのデータベースサービスが、AWS、Azure、Google Cloudといった主要なハイパースケーラー全域およびOCIにわたり、200以上のリージョンで利用可能になりました。
Oracleのクラウド戦略の根底には、この「選択肢」の思想が一貫して流れていることが示されました。
2. 技術的な選択肢① マルチクラウド:UberとState Streetの事例
- Uber (登壇者: Sahil Rihan氏, Distinguished Engineer)
月間10億トリップを支えるUberは、OCI、オンプレミス、他社クラウドを組み合わせた複雑なマルチクラウド環境を運用しています。Sahil氏は、この巨大な規模において「信頼性、拡張性、そしてコスト効率」を追求するためには、特定のベンダーにロックインされない「選択肢」がいかに重要であるかを語りました。 - State Street (登壇者: Akshay Sharma氏, Senior Vice President)
250年の歴史を持つ金融機関であるState Streetも、マルチクラウドを推進しています。Akshay氏は、Oracleとの長年のパートナーシップに基づき、Azure上でOracle Databaseサービスを活用するなど、規制の厳しい金融業界でいかに柔軟なクラウド活用を実現しているかを紹介しました。
3. 技術的な選択肢② Dedicated Region & Alloy:MetaとTEAM Cloud社の事例
- Meta (登壇者: Dave Claytor氏, Director, Enterprise Engineering)
セッションで特に注目を集めたのが、Meta社の事例です。Dave氏は、自社のデータセンター内にOCIの全機能を持ち込む「Dedicated Region」を導入したことを明らかにしました。四半期パッチ適用のダウンタイムが12時間から25分へ劇的に短縮されたという具体的な成果も共有されました。 - TEAM Cloud (登壇者: Ian Rogers氏, Chief Executive Officer)
ニュージーランドのTEAM Cloud社CEOであるIan Rogers氏は、パートナーがクラウド事業者になれる「Alloy」プログラムの活用事例を紹介しました。データ主権が重要となる同国で、Alloyを基盤に「国産クラウド」を構築した事例が語られました。
4. 商業的な選択肢:「Multicloud Universal Credits」
Karan Batta氏は、技術的な選択肢に加え、契約やコスト面での柔軟性がいかに重要かを強調しました。そこで紹介されたのが「Multicloud Universal Credits」です。
これは、一度Oracleと契約すれば、そのクレジット(利用権)をOCIだけでなく、AWSやAzure上で利用するOracleサービスにも自由に充当できる、「単一の通貨」のような仕組みです。これにより、顧客は「どのクラウドでどれくらい使うか」を事前に厳密に決める必要がなくなり、ビジネスの状況に応じて最後の瞬間に支出先を決定できるという、これまでにない商業的な柔軟性を手に入れることができます。
5. テクノロジーの進化「MySQL HeatWave」
- Oracle (登壇者: Nipun Agarwal氏, Senior Vice President)
セッション中盤では、MySQL HeatWave担当SVPのNipun Agarwal氏が、マルチクラウド環境で進化するデータベース技術をデモンストレーションしました。AWS上で稼働するMySQL HeatWaveが、Amazon S3上のデータを移動させることなく直接、高速に分析する様子や、自然言語でデータベースと対話する様子が実演され、技術的な選択肢の広がりを示しました。
まとめ
キーノート『Oracle Cloud Your Way』で一貫して示されたのは、Oracleのクラウド戦略が「顧客中心」であり、ビジネスや地域の要件に応じて、マルチクラウド、Dedicated(オンプレミス)、Alloy(パートナー)、そしてSovereign(国家主権)といったあらゆる選択肢を本気で提供しているという事でした。
「Your cloud, run the way you want」というテーマは単なるスローガンではなく、Uber、Meta、State Streetといった世界的な企業が実践する、具体的な戦略として力強く語られました。クラウドの導入や移行を検討する上で、この「選択肢の多様性」は、今後ますます重要な判断基準となると思います。