はじめに

エンタープライズクラウド事業部の磯部です。
10/13~10/16にラスベガスにかけて開催された、Oracle AI World 2025に参加してきました。
本ブログでは、10/16に行われた「Accelerating Your Cloud Journey with the Mission-Critical Sovereign Cloud」のセッション内容について、ご紹介します。

概要

本セッションでは、クラウド移行を加速させるための戦略、特にミッションクリティカルなワークロードに対応するソブリンクラウドの重要性、そしてAI技術の具体的な活用事例について紹介されました

公式サイトから引用

Fujitsu‘s mission-critical sovereign cloud can modernize mission-critical systems and promote customers’ use of AI. Discover how Fujitsu‘s sovereign cloud and Mission Critical Transformation Services, which solidly supports the journey from migration to operation of sovereign cloud, simplify this complexity and enable faster, smarter transformation. Gain real-world insights into strategies that drive innovation, automation, and sustainable growth using the Fujitsu CloudScale approach.

(DeepL翻訳)

富士通のミッションクリティカルなソブリンクラウドは、ミッションクリティカルなシステムの近代化と顧客のAI活用を促進します。移行から運用までのソブリンクラウド導入プロセスを堅牢に支援する富士通のソブリンクラウドとミッションクリティカル変革サービスが、この複雑性をいかに簡素化し、より迅速でスマートな変革を実現するかをご覧ください。富士通のCloudScaleアプローチを活用したイノベーション、自動化、持続可能な成長を推進する戦略について、実世界の知見を得てください。

富士通のクラウドジャーニー戦略

富士通は40年以上にわたりOracleとパートナーシップを結んでおり、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)の領域をカバーしています。

富士通がお客様を成功に導くクラウド移行(ジャーニー)は、以下の4つのステップで構成されています。

  1. Simplify(簡素化): オンプレミスにあるOracleワークロードやE-Business SuiteなどをOCI(Oracle Cloud Infrastructure)へ移行し、ビジネスの一部を簡素化します。
  2. Adopt(採用): カスタマイズに慣れたお客様に対し、Fusion Applicationsのようなパッケージのベストプラクティスを取り入れるよう、意識改革を促します。
  3. Innovate(革新): クラウド移行のどの時点にいるお客様に対しても、APEX(Oracle Application Express)を用いてビジネスアクセラレータやプロセス改善を作成し、アプリケーションを拡張することで支援します。
  4. Decision Intelligence(インテリジェンス): APEXの機能にOracle Database 23aiの機能(ディシジョンインテリジェンスなど)を統合することで、さらなる拡張とイノベーションを実現します。

富士通は、あらかじめ構成された環境や、設定・リリース管理・テストの自動化といったツールと手法を用いて、このクラウド移行を迅速に実現できるよう支援しています。

日本におけるミッションクリティカルなソブリンクラウドの実現

特に重要なテーマとして、ソブリンクラウド(Sovereign Cloud)の展開が取り上げられました。

ソブリンクラウドとは、各国の法律や規制に準拠し、データ主権を確保することを目的としたクラウドサービスを指します。

  • 日本での展開: 日本では、富士通がOracle Alloy(パートナー企業が自社のデータセンターでOCI機能をベースとした自社ブランドのクラウドサービスを提供すること)を採用し、独自のソブリンクラウドを構築・提供しています。このクラウドは、富士通のデータセンター内に設置され、富士通の従業員によって管理されています。
  • データ主権とコンプライアンス: このソリューションにより、日本のお客様は「データが国内に残り、国の主権を持つ従業員によって管理される」という確信を持てます。これは、データの所在地や管理者を懸念するお客様の不安を解消し、日本の経済安全保障など、特定の要件への準拠を可能にします。
  • AIデータの保護: AIの利用においても主権は重要です。このソブリンクラウド内で使われる大規模言語モデル(LLMs)は、学習データが外部に流出することなく、主権の領域内にとどまることが保証されます。
  • 富士通独自のAI技術: このソブリンクラウドのAIソリューションには、富士通が開発したKnowledge Graph(知識グラフ)を活用した拡張RAG(Retrieval-Augmented Generation)や、日本語に特化したLLMである「Takane(タカネ)」が組み込まれています。これにより、信頼性(ハルシネーションの低減)と、お客様の環境への適応性、そして日本語への効率的な対応が実現します。

AIによる業務プロセスと効率の劇的な改善事例

Oracle Database 23aiの機能とAPEXを組み合わせたソリューションは、業務プロセスと効率の改善において大きな効果を発揮しています。

  • 履歴書審査の自動化: ある政府機関では、求人応募が数千通に上り、応募者への対応義務がありました。従来は外部機関が1日約60通しか履歴書を審査できませんでしたが、富士通のソリューションでは、1500通の履歴書をわずか60秒で処理できました。

このソリューションでは、2つの異なるLLMを使用し、両方のモデルが候補者を「良い」と評価しない場合や、評価が食い違った場合のみ、人間の担当者(human in the loop)による介入を求めるフローを組み込んでいます。

  • 危険物保管の最適化(DHL社の事例): DHL社は、ヨーロッパ全体で取り扱う化学製品や危険物を含む新製品について、60ページにも及ぶ文書テンプレートに基づき、保管場所を決定する必要がありました。

このプロセスは長年の経験を持つ一人の担当者に依存していましたが、AIの文書理解機能を使うことで、60ページの文書から必要な情報を要約し、保管基準に基づき「どこに保管すべきか(どこに保管してはいけないか)」を判断するための知識ベースを構築できました。このPoCは、お客様との会話開始からわずか1週間で完了しました。

  • ナレッジベースの自動生成: ある政府機関を支援する組織では、4000ページあるナレッジ文書が様々なフォーマットで存在し、解決策を見つけるのに手間取っていました。

AIを活用してこれら4000の文書を標準フォーマットに変換した結果、質問に回答できるナレッジベースが副産物として生まれました。これにより、ドキュメントの標準化作業(約2年かかるとされていた)を劇的に短縮しつつ、ヘルプデスクの質問に即座に答えられるようになりました。

まとめ

このセッションに参加して印象的だったのは、AI駆動型の新しい働き方が徐々に組織にも取り入れられているということです。

履歴書審査や文書管理の事例では、AIが『人間にしかできない判断』に集中できるように環境を整え、業務の質と速度を両立させていました。

今後はさらに複雑な処理もAIが行い、人間が出来る仕事も変化してくるのではと思いました。

最後までお読みいただきありがとうございました!