はじめに
先日私がブログを執筆したGemini Enterpriseをはじめ、業務の生産性を向上させるツールに興味をお持ちの方は年々増加しています。それと同時に、ツールを活用してDXを推進しようと意気込んだものの、「ツールが現場で定着しておらず形骸化している」「期待をしていた費用対効果が出ない」といったお悩みを多く伺います。
DX化においてツールの活用は大変強力ですが、あくまで一つの手段であるということを認識しなければならないと考えております。どのような課題解決にも共通しますが、適切に課題を把握、整理した上で解決手法を練らなければ効果を最大限発揮することはできません。昨今多様なツールが開発され、我々の目に触れるようになったことで課題解決の本質を見落としてしまうことが増えてしまっている印象があります。
今回は生産性向上において必要不可欠である課題の抽出、整理について取り上げていきます。
課題を明確化する重要性
先述した通り、DXにおいて「手段の目的化」が罠となっていることが多くあります。
「話題のAIを使いたい」「競合が導入したSaaSを取り入れたい」というツールありきの発想をしてしまうと業務の変革にはつながりません。
- 変革の方向性を定めるため:ツールを活用することはあくまで手段であり、現状の課題はどんなものがあり、どのように改善していきたいかが定まっていなければ、最大限の効果を発揮できません。
- 現場の納得感を得た上で継続的な運用に繋げるため:課題や目的が曖昧なままトップダウンでツールを導入しても、現場のメンバーに浸透していきません。もちろん導入前に全員の同意を得る必要はないですが、可能な限り導入する目的や、導入後のメリットを伝えていくことで定着につながります。
表面的な問題と本質的な課題の違い
実際に課題抽出をする際に、気をつけなければならないのは「問題」と「課題」を切り分けることです。
単語だけでは何が違うのか曖昧なので具体例を用いてご説明します。
- 表面的な問題:営業マンの事務作業に要する時間が多い
- 誤った解決策:とりあえずRPAを導入して業務を自動化しよう
上記は解決すべき内容が曖昧で事務作業全体が改善の対象となっております。この場合クリティカルな課題へのアプローチが薄くなり、改善効果が限定的になることや、改善におけるコストが膨らむリスクを生んでしまいます。
一方で下記ではどうでしょうか。
- 根本的な課題:顧客データの管理が複数のシステムに点在しており、入力や情報の確認の重複が起こってしまう
- 正しい解決策:システムの統合や廃止を検討する。もしくはシステム間の連携を行う
このように問題を深掘り、真の課題を見つけることで効果を最大化させることができます。
業務課題の抽出、整理のステップ
ここからは課題抽出、整理をするための具体的なステップをお伝えします。ポイントを押さえて実際の業務に落とし込んでみてください。
ステップ1:現場へのヒアリング、観察
まずは現場の状況を把握します。そのために有効なのは現場メンバーへの直接のヒアリングと現場の観察です。現場で起こっている問題について洗い出していきます。現場のリアルを知るために必要不可欠なステップです。
- おすすめの課題整理方法:「KJ法」
現場のヒアリングで集まったデータをグループ化し、本質的な課題をあぶり出す方法です。
実践方法:現場から出た不満や意見を付箋等に書き出し、類似しているものをグループ化していきます。これにより個人的な主観がグループ化されることで組織全体に共通する客観的な課題となります。
ステップ2:業務プロセスの可視化(As-is分析)
ヒアリングした情報から現在の業務フローをフローチャート等で図解します。
これにより、ヒアリングで浮き彫りになった問題を構造的に捉えることができます。
ステップ3:ロジックツリーによる深掘り
洗い出した問題に対して深掘りをしていき本質的な課題を特定します。先述した表面的な問題を本質的な課題へ変換する大変重要なステップです。このステップをおろそかにすると、解決策が抽象的になり最大限の効果を得ることができません。
- おすすめの深掘り方法:「なぜなぜ分析」
トヨタ生産方式で有名な、なぜを繰り返していく手法です。問題に対して「なぜ?」を5回繰り返すことで根本的な課題を掘り下げていきます。
余談ですが、私は人生設計や中長期的なキャリアプランを考えるときにもよく活用しています。自分の目標や動機を明確にするためにも大変効果的な手法です。
ステップ4:課題の優先順位づけ
ここまでのステップで課題を抽出、整理したもののそれらを同時に全て解決することは現実的ではありません。課題に対して適切に優先順位をつけることで現場からの納得も得られ、生産性向上にもより寄与できます。
私のおすすめは「緊急度」「重要度」の2軸でマトリクスを作成する方法です。
緊急かつ重要なものがインパクトに直結します。ただ、ツールの導入時に見落としてはいけない要素として「実現可能性」があります。現状からコストや人員、技術的なハードルを鑑みて実現ができるものでなければ絵に描いた餅となってしまいます。特に導入の段階ではスモールスタートが推奨されますので、取り組みやすいものという観点も忘れずに持っておいてください。
おわりに
今回はAIをはじめとしたツールを活用する前段階の課題抽出や整理について触れました。
とりあえず最新技術に触れてみるという考え方も重要ですが、より効果的に業務を変革していくためにはツール選びよりも重要なステップかもしれません。今回ご紹介をした考え方や手法を用いて、皆様の業務課題解決の一助になることを願っております。