こんにちは、DX開発事業部の山中です。Google Cloud Next ’26 に現地参加しています!
この記事は Google Cloud Next ’26 の Developer Keynote のレポートです。
テーマは「エージェントを本番で動かす」。ラスベガスで10,000人規模のマラソンを計画するという題材で、Gemini Enterprise Agent Platform のピースを一通り組み立てて見せてくれました。MC は Richard Seroter さんと Emma Twersky さんです。

3つのエージェントで構成
シミュレーターは Planner(ルート生成)、Evaluator Subagent(スコアリング)、Simulator(ランナーを走らせて影響を評価)の 3 体でした。この骨格に ADK、A2A、Memory、Observability、ガバナンスを順に積み上げていく流れです。

Brad Calder さんが冒頭で「Google Cloud の全サービスが MCP-enabled by default になる」と宣言されたのが、地味ですがこのキーノート最大のニュースだと思います。

Planner:ADK + MCP + Agent Runtime
Mofi Rahman さんのデモでは、Agent Designer(ローコード UI)で骨格を作り Python にエクスポートしていました。Planner は Instructions + Skills + Tools の3要素で、Skill は YAML メタデータ + Markdown 本体という構造。既存の Google Docs を Gemini で Skill に変換できる、という説明が実務的でした。
地図アクセスは Google Maps の remote MCP サーバー に繋ぐだけ。Agent Runtime へのデプロイは4〜5分とのことです。
A2A、A2UI、Agent Registry
Ivan Nardini さんと Casey West さんのセクションが個人的に一番刺さりました。
- A2A:エージェント間通信の標準。Google が作って Linux Foundation に donation 済み
- Agent Registry:「インターネット・オブ・エージェントの DNS」。Agent Runtime にデプロイすると自動登録
- A2UI(Agent-to-User Interface):エージェントが UI を動的に組み立てる Google 発のオープン標準
A2UI のデモでは、One-shot のサンプルをプロンプトに入れるだけで Gemini が UI を生成し、地図にルートを描画していました。ダッシュボードを毎回手で作る苦痛への回答だと思います。Flutter GenUI SDK もあわせて使われていました。

Evaluator は Planner と別モデル・限定コンテキストで走らせ、「ルートが26マイル 385ヤード(42.195 km)ジャスト」のような決定的基準を判定します。Planner のコンテキスト汚染を防ぐ設計と受け取りました。
Memory と RAG:20行未満で stateful に
Jack Wotherspoon さんと Lucia Subatin さんのデモでは、ADK のクラスを足すだけで Sessions と Memory Bank が有効化されていました。Jack さんいわく「20行未満のコードで済む」。Memory Bank は完了したシミュレーションから長期記憶を自動生成するマネージドサービスです。
RAG 側の目玉は AlloyDB の Auto Embeddings。ドキュメントを入れるだけで埋め込みを自動生成してくれます。パイプラインは Lightning Engine for Apache Spark と Document AI の組み合わせで、Data Engineering Agent にプロンプトで生成させる流れでした。
ベガスの条文「ラクダは公道を走れない」が検索結果に出てきて会場で笑いが起こっていました。
Cloud Assist でデバッグ
Megan O’Keefe さんのデモは「壊れた後の動線」。原因は Gemini API の100万トークン上限超過で、Simulator の Event Compaction(コンテキスト圧縮)の頻度が足りていませんでした。
- Gemini Cloud Assist が Error Log から1クリックで investigation 起動
- Antigravity(Gemini 3 で動く IDE)から MCP 経由で investigation を継続できる
- 根本原因だけでなく「
token_thresholdを足す」という修正コードまで提示

「インフラのスケールだけでなくトークンのスケールも気にかけないといけない」というフレーズが新鮮でした。
GKE 移行と Gemma 4
Bobby Allen さんは、Cloud Run のランナーコンポーネントを GKE に移行し、同じクラスタに Gemma 4 を同居させる作業を1プロンプトで実行。Cloud Assist が vLLM の serving 設定やスケーリングポリシーまで付けてくれます。
スケール時にモデルロードが間に合わない問題を Cloud Assist が検出し、GCS Fuse から Lustre への切り替えをプロアクティブに提案していました。Bobby さんの締め「autonomous cloud のビジョン」は、今回のキーノート全体を貫く思想だったと思います。
ノーコードと高コードを繋ぐ
Ines Envid さんと Jason Davenport さんのデモでは、Agent Runtime のエージェントが Agent Registry 経由で Gemini Enterprise から discoverable。A2UI の動的 UI が標準化された surface 上でも動くのは気持ちの良い実装です。
さらに Agent Designer に Google Docs を context として投げ込むだけで、メイン + サブエージェントの「チーム」を1プロンプトで生成していました。

ゼロトラストなエージェント運用
最後は Ankur Kotwal さんと Wiz の Yinon Costica さんのセキュリティ回。
Richard さんの「shift left は開発者への丸投げ。代わりに shift down、プラットフォーム側が賢くなるべき」が印象的でした。
- Agent Identity:デプロイ時に自動生成される immutable な資格情報
- Agent Gateway:Egress Policy でエージェント間アクセスを制御
デモでは Planner に「Finance MCP は read-only」ポリシーを追加し、予算を増やそうとする悪意ある依頼をブロックしていました。Ankur さんの「zero-trust には zero-budget policy がついてくる」で締めていました。
Wiz の Red Agent(AI ペンテスター)と Green Agent(修正提案)も実演。修正の実行は Claude Code(Opus)に任せる、というオープンな構成で、Model Garden に Claude が入っている意味をキーノート内で見せてきていました。

まとめ
エージェントが「プロトタイプ止まり」から「本番の運用単位」に昇格するためのピースが揃ってきている、という印象でした。個人的に印象に残ったのは次の 3 つです。
- MCP-enabled by default:1〜2年の運用で効いてくる大きな方向転換
- A2UI:ダッシュボードを毎回作る苦痛への回答
- Cloud Assist のクロスサーフェス:コンソール → IDE → GitHub を MCP でまたぎ、コード修正の diff まで出す動線
あとは、キーノートで使ったシミュレーターが GitHub で OSS 公開されている点もありがたかったです。クローンしてその場で動かせる、というのは単なるメッセージで終わらせない工夫として効くと思います。
Agent Gateway のポリシー反映に5分、Agent Runtime のデプロイに4〜5分という数字は、CI/CD のタイムバジェットを組むときの注意点です。ラクダとポータブルトイレを前面に出した遊び心と、本気の実装が両立した1時間半でした。