この記事は、Google Cloud Next ’26 のセッションレポートです。

セッション情報

  • セッション名: What’s new with data agents
  • 登壇者:
    • Ganesh Kumar Gella 氏(Senior Director of Engineering, Google Cloud)
    • Manikandan Srinivasan 氏(Director of Product Management, Google Cloud)
    • Mauro Flores 氏(EVP of Data Democratisation, Virgin Media O2)

先に30秒でまとめ

  • 発表されたもの: データ業務に AI エージェントを組み込む話の総まとめ回でした。SQL を書く人、データを業務で使うビジネスユーザー、自前で仕組みを組み込みたい開発者、それぞれの役割に合わせたエージェントが一斉に本番利用できるようになりました。
  • 何が変わったか:
    • 役割別エージェント(データパイプラインの構築、機械学習モデルの構築、ビジネスユーザー向けの対話型分析)が Preview から GA になりました
    • 自分のアプリにエージェントを組み込みたい開発者向けの API とツール群も同時に GA になりました
    • Looker Studio が Data Studio に名前を変えて、社内にエージェントを配る入口になりました
  • 具体的に何が嬉しいか: 例えばビジネスユーザーは、SQL を書かずに自然言語で BigQuery のデータを聞けるようになります。「先月の売上は?」のような過去の集計だけでなく、「来月の予測は?」のような問い合わせまで対話で済ませられます。
  • 一番強い主張 / 目玉機能: ビジネスユーザーが自然言語でデータと会話する Conversational Analytics が、Looker でも BigQuery でも本番利用できるようになったこと。

全体像 — 3層で整理

セッションの地図は、以下の「Supercharge analytics with AI」のスライドにきれいに収まっています。Google Cloud の Data Agents への投資は3つの層に分かれていて、本編もこの順序で進みました。

  • 01 Assistive: 既存のデータ業務を横で補助するアシスタント
  • 02 Data Agents: ペルソナ別・タスク別の専門エージェント
  • 03 Build your own agent: 自分でエージェントを組みたい開発者向けの API とツール群

以下、この3層に沿ってサービスを順に見ていきます。

層1:Assistive — 既存業務を横で補助する

データアナリストやデータエンジニアが普段触っている画面の中に AI チャットを組み込んで、生産性を底上げする層です。今回の主役は BigQuery Assistant でした。

BigQuery Assistant(New, Preview)

BigQuery Studio の右ペインに常駐する SQL 補助エージェントです。新しい SQL をゼロから書くのも、既存の SQL を直すのも、遅いクエリを特定して最適化するのも、すべてマルチターンの会話で進められます。

会話の途中でも作業中の環境を覚えていてくれるので、テーブル名やデータセットを何度も貼り直す必要がありません。

ちなみに、Gemini で処理される BigQuery のデータ量が前年比 30 倍に伸びているそうです。アシスタント機能を使う場面がそれだけ広がっています。

層2:Data Agents — 役割別の専門エージェント

ここから先は「誰が何をしたいか」に合わせて作り分けられた専門エージェント群です。ペルソナとタスクで作り分けられていて、今回の発表では多くの GA がこの層に集中していました。

Data Engineering Agent(New, GA)

自然言語からデータパイプラインを組み立てるエージェントです。生成されたスペックを人間がレビューして手を入れられるので、エージェント任せにせず、自分で仕様を確認しながら進められます。

新規構築だけでなく、既存パイプラインのトラブルシュートと修正にも対応します。

Data Science Agent(New, GA)

BigQuery の Colab notebooks 上で動くエージェントで、データの前処理から可視化、特徴量化、モデル訓練・評価までまとめて任せられます。最近の目玉は将来予測の領域で、TimesFM のような最新モデルにも対応しました。

Conversational Analytics

ここからはビジネスユーザー向けの対話型分析エージェント、Conversational Analytics の話に移ります。

受け身の単発クエリから、エージェントが先回りして動くアクションや深い推論へ。これが Conversational Analytics 全体が目指している方向です。

Conversational Analytics for Looker(New, GA)

LookML をセマンティックレイヤとして使うので、売上や解約のような重要指標がどこから聞いても同じ答えを返す、Single Source of Truth が保証されます。Snowflake、Databricks、BigQuery といった複数プラットフォームに横断して使えるのも強みで、最近は Looker のダッシュボードからチャットを開いてそのまま深掘りできるようになりました。

Conversational Analytics for BigQuery(New, GA)

BigQuery 上で直接エージェントを作って、ビジネスユーザーに配れる仕組みです。過去データの集計だけでなく、予測やキードライバー分析まで対話で実行できるのが新しいポイントで、画像や長文テキストといったマルチモーダルなデータにも対応しています。

Data Studio へのリブランド

Looker Studio が Data Studio(Free)と Data Studio Pro にリブランドされました。Agentic Data Cloud のデータ資産をまたいで探索したり、必要に応じてその場で分析したりするための入口です。

BigQuery 側で作った Conversational Analytics エージェントを Data Studio から直接呼び出せるほか、BigQuery、Colab notebooks、各種データソースを一箇所から探せる Discovery Portal として整備されていきます。

Gemini Enterprise への公開(Preview, allowlist)

もう一つの配布先が Gemini Enterprise です。流れは大きく3ステップ。アナリストが BQ Studio でエージェントを作り、Gemini Enterprise の管理者がプロビジョンし、ビジネスユーザーが Gemini Enterprise のチャット画面から使います。

現在は allowlist 付きの Preview なので、使いたい場合はリクエストが必要です。

Deep Research for enterprise data(New, Preview)

Knowledge Catalog を使って、社内ドキュメントや BigQuery、Looker をまたいで深掘り調査を実行する機能です。1つの質問に1つの答えを返すのではなく、長時間動いて包括的なレポートを返してくる、というのがこれまでの Conversational Analytics との大きな違いです。

Gemini Enterprise から呼び出せます。

Agentic workflows(New, Preview)

エージェントを Proactive(自発的な提案)、Adaptive(継続学習)、Autonomous(複雑な調査を自律遂行)の3要素で動かすための仕組みです。イベント駆動やスケジュール駆動でエージェントを自動的に回せるので、人が呼びかけなくても先に動き出します。

Conversational Agents everywhere

ここまでの対話エージェントは、Looker、BigQuery、Databases、Data Studio、Conversational Analytics API という5つの入口から利用できます。Gemini Enterprise を入口にすると、それらすべてが繋がる、という全体像です。

層3:Build your own agent — 自分で組みたい開発者向け

3層目は、ここまでの Conversational Analytics や BigQuery のエージェント機能を、API やツールの形で個別に使えるようにした領域です。自社プロダクトに組み込みたい開発者や、ADK や LangGraph で独自エージェントを組んでいるチーム向けです。

Conversational Analytics API(New, GA)

層2の対話エージェント機能をそのまま API として呼び出せるようになり、自社アプリやチャットアプリに埋め込めます。BigQuery、Looker、AlloyDB、Spanner、Cloud SQL、Managed Spark など対応データソースの幅が広く、Looker のセマンティックレイヤに直接接続して精度を上げられるのも特徴です。

BigQuery tools for custom agents

3つすべて New, GA で発表されました。

  • BigQuery ADK Integration: Google ADK から BigQuery のツールセットを直接呼べるようになり、SQL を書かずに自然言語で扱えます
  • BigQuery MCP Server: フルマネージドのリモート MCP サーバ。カスタムの接続コードを書かずに済みます
  • MCP Toolbox: オープンソース版の MCP サーバで、コネクションプール、認証、可観測性が組み込み済みです

利用も伸びていて、BigQuery MCP Server の使用量は直近6ヶ月で20倍、現在は数百万ジョブが流れる規模になっています。

BigQuery Agent Analytics Plugin(New, GA)

ADK や LangGraph で作った自前エージェントの動作ログを、コード1行で BigQuery に書き出せるプラグインです(ADK 用は GA、LangGraph 用は Preview)。トークン数、レイテンシ、ツール使用分布、センチメントといった指標を可視化できて、書き出したデータには Conversational Analytics でさらに対話的に切り込めます。

Google Cloud Data Agent Kit(New, Preview)

開発者の手元、つまり VS Code、Codex、Claude Code、Gemini CLI といった環境からデータ業務を回すためのキットです。VS Code 拡張と CLI 用プラグインとして提供されていて、スキルや MCP ツールはオープンソースなので用途に合わせてカスタマイズできます。

パイプライン構築、モデル訓練、データ探索を IDE の中だけで完結させられるのが特徴です。

ステータス表

本編で紹介した機能のステータスを最後にまとめておきます。

機能 ステータス
BigQuery Assistant Preview
Data Engineering Agent GA
Data Science Agent GA
Conversational Analytics for Looker GA
Conversational Analytics for BigQuery GA
Looker Studio → Data Studio リブランド 発表(Next ’26)
BigQuery Conversational Analytics の Gemini Enterprise 公開 Preview(allowlist)
Deep Research for enterprise data Preview
Agentic workflows Preview
Conversational Analytics API GA
BigQuery ADK Integration GA
BigQuery MCP Server GA
MCP Toolbox GA
BigQuery Agent Analytics Plugin GA(ADK)/ Preview(LangGraph)
Google Cloud Data Agent Kit Preview

おわりに

開発者向けプロダクトに関わる立場から眺めると、今回一番ありがたかったのは、自前でエージェントを組むための API やツールが揃ったことでした。

自社アプリにデータ分析機能を組み込むのに、これまではプロンプトや SQL 生成のロジックを自前で持つ必要がありましたが、Conversational Analytics API、BigQuery MCP Server、ADK Integration が GA になったことで、その大半が標準部品で済むようになります。自社プロダクトに組み込むことを考えている開発者にとっても、自分の手元の技術選定の幅が広がる発表でした。

頭の中で「あの機能、これで作れるじゃん!」と次々アイデアが浮かんでくる、そんなワクワクする発表でした!