はじめに

最近携わっている案件で、お客様からの修正指示をうけて作業者がデザインを直し、そのデザインを私が確認してフィードバック(以下、FB)を返し、改めて修正指示を出すという一連のフローを何度も繰り返す機会がありました。

元のデザインは私が作成したもので、それに対する修正作業は別の人が担当するという体制になっています。そのため、自分自身が手を動かして直すのではなく、お客様の意図を汲み取りながら作業者に「何を、なぜ直してほしいか」を伝える立場になります。この間に立つ役割を続けるうちに、改めて実感したのが「言葉を伝える難しさ」です。

自分の中では明確に伝えたつもりでも、相手には全く違う形で届いていたり、一部しか反映されていなかったりしました。何度もそういう場面に出会ううちに、伝え方そのものを見直す必要があるのではないかと思うようになりました。今回はその試行錯誤の過程を記録として残しておきたいと思います。

ミーティングだけでは伝わらない

最初はシンプルに、ミーティングの場で作業者にFBを口頭で伝えていました。画面を見ながらその場で「ここはお客様の意図とずれている」「ここはこう直してほしい」と指摘し認識をすり合わせる。一見これで十分なはずです。

ところが、いざ修正版が上がってくると、指摘した内容の一部が反映されていないことがありました。これは決して作業者が手を抜いているわけではなく、単純に「伝えたつもり」「伝わった」の間にずれが生じていたのだと思います。

口頭でのやり取りは、その場では通じた気になりやすい分、細かいニュアンスや修正箇所の抜け漏れが起きやすいのだと気づかされました。特に複数の画面や項目にまたがる指摘があると、どうしても記憶だけに頼る部分が出てきてしまいます。

文字にしても、それだけでは足りなかった

そこで次に試したのが、FB内容を文字に起こして作業者に伝えることでした。ミーティングの記憶だけに頼らず、テキストとして残すことで抜け漏れを防げるはずだと考えたからです。

しかし、これだけでも完全には解決せず、文章にした指摘事項がこちらの意図どおりに解釈されていないケースがありました。箇条書きにしてもどの画面のどの部分を指しているのかが曖昧だったり、お客様がなぜその修正を求めているのかという背景が伝わりきっていなかったりしました。文字にすること自体は有効でしたが、それだけでは「伝わる」ところまでは到達できていませんでした。

振り返ると、テキストだけのFBは、書いた本人にとっては文脈がすべて頭の中にあるため十分に見えてしまいます。しかし、受け取る側にはその文脈が見えていないという、当たり前だけど見落としがちな課題があったのだと思います。

Geminiを活用して議事録という第三者の記録を挟んでみる

そこで次にとった方法が、ミーティング後にGeminiで議事録を作成してもらい、その内容を整理してメモとして作業者に送るというやり方でした。

口頭での指摘をその場限りのものにせず、AIというある種の第三者に記録してもらうことで、自分の主観だけに依存しない形で内容を残せるようになりました。ミーティング中に交わされた発言をそのまま文字起こしすることで、抜け漏れなく、かつ発言の背景も含めて記録に残せます。

その上で議事録をそのまま送るのではなく、修正が必要な項目を整理し直し、メモとしてわかりやすくまとめてから作業者に送るようにしました。ここでポイントだったのは「何を直してほしいか」だけでなく「お客様がなぜそれを求めているか」もセットで伝えることです。理由が伴っていると修正の方向性そのものへの理解が深まり、結果として意図に近い形で反映されやすくなる感覚がありました。

「終わったら一言ください」と、感謝を添える

さらに、メモを送る際には「修正が終わったら一言ください」という一文を添えるようにしました。

これは単なる確認依頼のようで、実はコミュニケーションの丁寧さを底上げする効果があったように思います。修正内容を送りっぱなしにするのではなく、完了の報告という小さなキャッチボールを組み込むことで、こちらも作業者の作業状況を把握しやすくなりました。作業者にとっても「ここまでやれば完了」というゴールが明確になったのではないかと感じています。

そしてもう一つ、忘れてはいけないと思ったのが感謝の言葉です。

修正が終わったという報告をもらったら、必ず「ありがとうございます!」と一言添えるようにしました。どんなに小さな修正であっても、対応してくれたこと自体への感謝を伝えることは、丁寧なコミュニケーションの土台になります。指摘や指示ばかりが並ぶやり取りは、どうしても事務的で冷たい印象になりがちですが、そこに感謝が一言入るだけで空気がやわらぎますし、次のFBも受け取ってもらいやすくなる気がしています。

丁寧に伝えることは、決して過剰な気遣いではなく、相手が迷わず動けるようにするための道しるべを用意することなのだと、この経験を通して感じました。

自分が丁寧に伝えると、相手も丁寧に応えてくれる

一連の試行錯誤を経て感じたのは、自分が丁寧に伝えることで、相手も丁寧に修正してくれる気がするということです。

これは科学的な裏付けがあるわけではなくあくまで実感としての話ですが、雑に投げたFBには雑な返答が返ってきやすく、逆に背景や意図まで丁寧に添えたFBには、それに応じるように丁寧な修正が返ってくることが多かったように思います。

コミュニケーションは一方通行ではなく、こちらの姿勢がそのまま相手の姿勢に反映される、ある種の鏡のような関係にあるのかもしれません。

伝わらないのは、相手のせいではなく自分の伝え方の問題

今回の一連の経験を通じて一番強く感じたのはここです。

修正が反映されていない、意図と違う形で仕上がってくる。そういった場面に直面したとき、つい「なぜ汲み取ってくれないのか」「もっとちゃんと確認してほしい」と作業者の修正力や理解力の問題として捉えてしまいがちです。

でも実際にはそうではなく、作業者のミスは自分の伝え方のミスなのだと思うようになりました。作業者の修正力や汲み取る力に期待するのではなく、誰が読んでも同じように理解でき、同じように動けるような伝え方を自分の側で用意する必要があるのだと思います。

ミーティングだけでは足りず、文字にしても足りず、議事録を挟んでようやく形になった今回のプロセスは、まさにその「伝え方を自分の責任として設計し直す」作業だったのだと思います。

終わりに

言葉を伝えるというのは思っている以上に難しいことだと、改めて実感した経験でした。

ミーティング→文字起こし→議事録の整理→メモとしての送付→完了報告と感謝の言葉。この一連の流れは手間がかかるように見えて、実は「伝わらない」ことによる手戻りやすれ違いを減らすための、遠回りに見えて一番の近道だったように思います。

相手に伝わらないのは作業者のせいではなく自分の伝え方の問題である。この視点と、どんな作業にも感謝を忘れないという姿勢を持つことで、これからのFBのやり取りも少しずつ良い形にアップデートしていけるのではないかと感じています!