AI を「使う」から「実装して成果を出す」へ。
KDDIアイレット 代表取締役社長の髙木 秀悟は、10/28(水)に開催された「KDDI SUMMIT 2026」のメインステージで、競争力の源泉は「データの独自性」と「創る力」の2つだと語りました。
本記事では、わずか5人から始まった KDDI グループの内製化の歩みと、AI 駆動開発の実例を交えた講演の内容をレポートします。

セッション概要
| イベント | KDDI SUMMIT 2026(主催:KDDI株式会社) |
| 日時 | 2026年10月28日(水)11:50〜12:20 |
| 会場 | TAKANAWA GATEWAY Convention Center メインステージ(オンライン配信あり) |
| タイトル | AI 時代の競争力を支える『創る力』とは 〜 KDDIグループ内製化10年から見えた実装力 〜 |
| 登壇者 | KDDIアイレット株式会社 代表取締役社長 髙木 秀悟 |
「AI インテグレーター」として始動した KDDIアイレット
講演の冒頭、髙木は KDDI の法人ビジネス戦略の中で、KDDIアイレットが「AI インテグレーション」を担い、通信と一体で AI を実装する役割を持つと位置づけました。
KDDIアイレットは2026年4月1日、アイレットと KDDI Digital Divergence Holdings の合併により始動しました。クラウドインテグレーターとして国内トップクラスの実績を持つアイレットに、KDDIの営業・システムエンジニアリング機能を統合した会社です。
KDDI とアイレットの技術を結集した「KDDIアイレット」が本日始動

1997年に第二電電(現 KDDI)へ入社して以来、長く法人営業に携わってきた髙木は、同日付で社長に就任しました。
講演で紹介された主な強みは次の通りです。
- ハイパースケーラー各社の認定資格保有者数は国内随一
- AWS のプレミアティアサービスパートナーに2013年から連続で認定
- 「cloudpack」によるクラウド総合支援と、「gaipack」による生成 AI 導入・AI 駆動開発支援の2つの事業の柱
- ELYZA(日本語 LLM の研究開発)、KDDIアジャイル開発センター、Scrum Inc. Japan など特徴あるグループ会社5社との連携
AI 本格実装は「海面の下」にある
髙木は AI 活用を氷山に例えました。
普段使っている生成 AI のチャットツールは、海面の上に見えている部分にすぎません。企業の中で AI が本当に実装され、動き続けている状態は海面の下にある、という見立てです。
その状態を実現するキーワードとして、3つが挙げられます。
- 組み込む:企業固有のデータが、自社のシステムに安全に組み込まれている
- 定着する:現場で毎日、実際に使われている
- 成果を出す:効果が確認され、成果が出続けている

では、AI 前提の社会で企業の競争力は何から生まれるのか。髙木の答えは2つです。
1つはデータの独自性、もう1つはデータと AI を組み合わせて実装する「創る力」です。
また、CIO や CEO から寄せられる悩みは、次の5つのフェーズに整理できるといいます。
- オンプレミスのシステムをクラウドへリフトする
- リフトしたシステムをクラウドネイティブにする
- データを AI で活用できる「AI レディ」な状態に整える
- AI エージェントを含むシステムを開発する
- 実装後の運用を高度化する
これらは階段のように順に進むものではなく、多くの企業で並行して存在している、と髙木は指摘しました。
講演はこのうち4つ目、AI エージェントを含むシステム開発に焦点を当てて進めました。
5人の「侍」から始まった KDDI の内製化
「創る力」の原点として語られたのが、KDDI 自身が約13年前から取り組んできたシステム内製化の歴史です。
当時のシステム開発は、すべてを決めきってから作る進め方が中心でした。開発には平均2.5〜3年かかり、完成する頃には前提条件ややりたかったことから大きくずれてしまう。市場の変化のスピードに開発が追いつかないことが大きな壁でした。背景には、日本では IT エンジニアの約7割が IT ベンダー側に所属し、米国とは真逆の構造になっているという事情もあります。
2013年、上司から内製化への挑戦を命じられ、わずか5人の若手「侍」が立ち上がりました。そのとき上司から求められたのは、「失敗しない理由を書け」ということでした。
侍たちが出した答えは、毎週試作品を作り変えて上司に見せ、確認を受けながら実装していくやり方です。こうして、当時まだ一般的ではなかったアジャイル開発へと自然に移行していきました。組織も縦割りの階層型から、企画・開発・運用が一体となったワンチームへと変え、意思決定のスピードを重視しました。
- 2013年:5人でスタート
- 約5年後:300人規模に拡大し、社内に広がる
- さらに約5年後:700人規模に。この手法をお客様に展開するため、アジャイル開発を事業化
- 現在:1,000人を超える体制で、社内100以上のシステムを内製化

髙木は「自分たちで開発できるスピード感こそが、これからの競争優位になる」と強調しました。そこに AI 駆動開発が加わることで、内製化はより多くの企業にとって身近なものになっている、と続けました。
要件定義の作業時間を約80%削減
「AI が効くのは実装やテストの工程だけでは」という質問をよく受ける、と髙木。会場では、上流工程の要件定義に AI を活用する様子を動画で紹介しました。
- Gemini などが多様なインプットから、プロジェクトの前提情報やサイトマップを自動生成
- Gemini Notebook(旧 NotebookLM)などが、アジャイル開発に準拠した要件定義書を短時間で作成。アウトプットはユーザーストーリーと受け入れ基準の形式に統一
- 作業時間を約80%削減し、開発側への差し戻しを3回から1回に低減
- 生成した要件は Figma Make や GitHub とシームレスに連携し、属人化を解消
実際には、戦略企画から要件定義、設計、実装、テスト、リリース、運用まで、すべての工程で AI を活用できると説明しました。
事例:リードタイム3分の1、AI コスト40%削減
講演では、AI 駆動開発による内製化を実践している2社の事例が紹介されました。
| 企業 | 課題 | 取り組みと成果 |
|---|---|---|
| 食品メーカー | 開発完了までのリードタイムが長い | アジャイル開発と AI 活用で、リリースまでのリードタイムを3分の1に短縮。バグ数も減少。AI で潜在的な脆弱性を事前に検出し、解消してからリリースすることで、速さと品質を両立 |
| 企業システム関連企業(クラウド移行チーム) | AI によるコード変換を導入済みだが、成果が伸び悩んでいた | AI への「丸投げ」をやめ、仕様書を起こしてから変換する手順に変更。用途に応じて AI モデルを使い分け、品質の合格基準を変えずに AI コストを40%削減。手順書化と API 管理で、開発関係者以外への展開も実現 |
設計・実装・テストにとどまらず、上流から下流までさまざまな場面で AI が使えることが、これらの事例からわかります。
「創る力」を育てる3つのステージ
KDDIアイレットの支援は3本柱です。
1つ目はお客様のデータを AI レディな資産に変えること、2つ目は「創る力」を育てるサポート、3つ目は KDDI の通信基盤を生かしたセキュアで安定した運用基盤の提供です。
このうち「創る力」の支援は、次の3つのステージで進めます。
- AIDD キャンプ:エンジニアだけでなく、管理職や営業部門の方も対象に、AI 駆動開発で何ができるかを最初から最後まで体験してもらう
- 伴走から自走へ:実際のプロジェクトを題材に、最初は KDDIアイレットが一緒に作り、次第にお客様が主体となり、最終的には自立して開発できる状態を目指す。ポイントは「どこまでを AI に任せ、どこを人が確かめるか」の線引きを、企業ごと・スキルごとに一緒に設計すること
- 継続的なアップデート:3〜4週間に一度は新しい AI モデルが登場する中で、最新技術のキャッチアップを支援。さらに、作ったシステムをビジネスとして成長させる事業化まで支援する
「内製化が進んだら、KDDIアイレットの仕事がなくなるのでは」と聞かれることもあるそうです。それでも髙木は、お客様が自分たちでしっかり作っていけることが何より大切だと語りました。

まとめ:13年間で培った「創る力」を、お客様の競争力へ
講演の終盤、髙木は、KDDI グループが2013年から積み重ねてきたシステム内製化の経験について振り返りました。
わずか5人で始まった挑戦は、アジャイル開発の実践、組織変革、事業化を経て、現在の AI 駆動開発へとつながっています。
その過程で培ってきたのは、単なる開発技術だけではありません。
変化に合わせて開発手法を見直すこと、企画と開発が一体となって意思決定すること、そして新しい技術を自ら実践し、その知見をお客様に提供することです。
KDDIアイレットは、こうした経験とグループ各社の専門性を組み合わせ、AI-Ready なデータ基盤の整備から AI エージェントの開発、セキュアな運用基盤の構築までを一貫して支援しています。
AI 時代に求められるのは、AI ツールを導入することだけではなく、企業独自のデータや知見を活かし、自ら新しい価値を生み出していく力です。
「代わりに作るのではなく、皆様が創れるように。そして、創り続けられるように」
KDDIアイレットは、これからもお客様の理想を実現するための「実装力」を提供し、AI を活用した事業変革を支援してまいります。
その理想に、実装力を。

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