はじめに

  • こんにちは、エンタープライズクラウド事業部の新川です。今週は Oracle AI World 2026 に参加するため、ラスベガスに来ています。
  • 今回は「MySQL Goes Full Stack: AI, Cloud Scale, and Open Source [LRN2416]」のセッション内容をお伝えします。OCI の MySQL について、クラウドでの拡張性と AI に関する、次の 2 つが紹介されました。
    • MySQL Elastic Database:計算(コンピュート)とストレージを分けた新しい構成(限定提供)。
    • MySQL AI:データベースの中で AI を使う機能群(すでに提供されているものを含みます)と、その画面の MySQL Studio(2026 年提供)。

MySQL の概要

  • MySQL は、スライドでは「開発者向けの DB で第 1 位(#1 DB for developers)」「世界で 10 億以上のインストール(1B+ installations worldwide)」「30 年の実績(30 yr)」とされる、オープンソースのデータベースです。
  • セッションでは、MySQL の機能を次の 4 つの層で説明していました。
    • Open Source:オープンソース版の MySQL。
    • Enterprise Edition:セルフマネージド MySQL 向けのセキュリティ、管理、サポート。
    • AI:ドキュメントへのQ&A と要約、予測、自然言語からの SQL変換。
    • Cloud:柔軟な拡張、HeatWave の分析と AI。クラウド部分に Elastic Database や HeatWave が位置づけられる。
  • さらに、SQL、AI のチャット、ノートブックを 1 つにまとめた画面として、MySQL Studio が示されました。

用語をおさらい

  • HA(高可用性):複数のノードを用意して、障害が起きてもサービスを続けられるようにする仕組みです。
  • フェイルオーバー:障害が起きたときに、別のノードに処理を切り替えることです。
  • リードノード:読み取りの処理を受け持つノードです。増やすと読み取りの性能が上がります。
  • 計算とストレージの分離:データベースの処理を行う部分(コンピュート)と、データを置く部分(ストレージ)を別々の構成にして、それぞれ独立して増減できるようにすることです。
  • RAG(検索拡張生成):AI が答えるときに、手元のドキュメントを検索して、その内容にもとづいて答えさせる方法です。
  • ベクトル化:文章を意味の近さで探せる数字の並びに変えることです。
  • AutoML:データから、予測のモデルを自動で作る機能です。
  • LA(Limited Availability、限定提供):一般提供の前に、一部の利用者に限って提供する段階です。

3 行まとめ

  • Elastic Database は、計算とストレージを分けた構成で、2 ノードから HA を組み、読み取りノードを足して拡張できる。
  • MySQL AI は、ドキュメントにもとづく回答(RAG)、AutoML、自然言語からの SQL 生成をデータベースの中で使える機能群で、MySQL Studio からも使える。
  • AI に見せるデータは、自分で承認する。SQL を実行する承認と、値を AI に渡す承認は別になっている。

Elastic Database:計算とストレージを分ける

何が変わるのか

  • スライドでは、Elastic Database(LA)の特長が次の 4 つで示されていました。
    • 計算とストレージを別々に増減できる(Independent compute and storage scaling):ワークロードに合わせて、別々に大きさを決める。
    • 設計から高可用性(High availability by design):2 ノード以上で、読み取りを続けながらフェイルオーバーできる。
    • 読み取り性能を拡張できる(Scale read performance):すべてのノードが読み取りを受け持てて、需要に合わせて追加できる。
    • 設計から復旧の範囲を決める(Bounded recovery by design):復旧の作業が、データベースの大きさに比例しない設計になっている。
  • セッションの冒頭では、テストや開発から本番へ広げるときに、効率と性能を求める声が多いことが、この構成の出発点として説明されました。

構成

  • 図では、次の構成になっていました。
    • Primary(書き込み)とRead nodes(読み取りを増やすノード)がある。
    • どちらも同じ共有ストレージ層につながる。この層は、データページ、REDO ログ、システムのメタデータを置き、リージョン全体で耐久性と可用性を持つ。
    • その下に、クラスタの管理、監視、可用性の管理、ライフサイクルの管理をするコントロールプレーンがある。
  • 設定と課金は、スライドの右側に次の 5 つで整理されていました。
    • 柔軟なコンピュート:ワークロードに合わせて、コンピュートの容量を選ぶ。
    • リードレプリカの容量:需要に合わせて、読み取りノードを足す。
    • 共有ストレージ:コンピュートとは別に、ストレージの大きさを決める。
    • 独立したスケール:コンピュート、リードノード、ストレージを別々に選ぶ。
    • 使用量の計測:コンピュートとストレージを別々に計測する。
  • コンソールの画面は今の MySQL HeatWave と同じで、「DB システム」の考え方から「DB クラスタ」の考え方に変わる、と説明されました。

これまでと何が違うのか

  • セッションでは、次の点が特に強調されました。
    • 2 ノードで HA 構成になる。
    • 2 つ目のノードも読み取りを受け持てる。これまでは、読み取りのレプリカを足さないとできなかった。
    • 読み取りノードを足してもプライマリの性能に影響しない。
    • プライマリを別のノードに切り替えるときに、データベースを作り直す必要がない。共有ストレージがあるため、すぐに処理を受けられる。
    • 待機しているだけのノードに、費用を払わなくてよい。

提供状況

  • Elastic Database は限定提供(LA)の段階で、試したい人はサインアップできると説明されました。今後は、コンピュートの垂直スケールにも対応する予定です。ただし、将来の予定は変更される可能性があります。

MySQL AI:データベースの中で AI を使う

  • MySQL AI は、MySQL HeatWave の GenAI、ベクトルストア、AutoML、自然言語からの SQL 生成(NL2SQL)などの AI の機能をまとめた呼び名で、mysql.com でも紹介されています。HeatWave GenAI は 2024 年 6 月に、AutoML は 2022 年に、一般提供が始まっています。ここでは、セッションで示された現在の全体像を、機能ごとに見ていきます。

構成要素

  • MySQL AI は、スライドで次の 6 つで示されていました。
    • GenAI
    • In-database LLMs(データベースの中の LLM)
    • AutoML
    • Documents in file system(ファイルシステムのドキュメント)
    • Similarity search(類似検索)
    • MySQL Studio
  • LLM は MySQL HeatWave の CPU の上で動くため、GPU の環境を別に用意する必要がない、と説明されました。

GenAI(ドキュメントにもとづいた回答)

  • スライドの図では、オブジェクトストレージなどに置いたドキュメント(Word、PDF、PowerPoint、テキスト、HTML)をベクトルストアに取り込み、MySQL の中で検索と回答の生成を行います。セッションでは、オブジェクトストレージ上のパスを指定できると説明されました。ベクトル化は、システムが行います。
  • スライドの説明は、「Search supported documents with vectors and generate grounded answers(対応するドキュメントをベクトルで検索して、根拠のある回答を作る)」でした。データベースの表にある情報だけでなく、ドキュメントの内容も使って答えられます。

AutoML(予測)

  • AutoML は、次の 3 つの段階で示されていました。
    • 学ぶ(Train):業務データのパターンから学習する。
    • 理解する(Understand):本番に入れる前に、モデルの質を確認する。
    • 使う(Act):予測を業務の流れに入れる。
  • 予測に使う列の選択と最適なモデルの選択は、システムが行うと説明されました。例として、需要を予測して在庫を計画し、欠品を減らす小売の例が示されました。

自然言語から SQL

  • 図の流れは、次の通りです。
    • 質問を入れる(例:「どの商品が、クリックあたりのコストが最も低いか」)。
    • スキーマの取得:関係する表や列を自動で探す。
    • 質問をスキーマの情報で補う(Augmented Prompt)。
    • データベースの中の LLM が、SQL を作る。
    • SQL の構文を自分で確かめて直す(Self-Reflection)。
    • SQL を実行して、結果を返す。
  • できた SQL は、そのまま実行することも自分で確認することもできると説明されました。

MySQL Studio

  • MySQL Studio は、SQL、AI のチャット、ノートブックを 1 つにまとめた画面です。AutoML は、Jupyter ノートブックのような画面で、手順に沿ってモデルを選び、予測を試せると紹介されました。Studio は、すでに利用可能と説明されました。

AI に何を見せるか:承認を分ける

デモの流れ

  • デモは、小売の粗利が下がった原因を質問を重ねて探す流れでした。ここで大事なのは、AI に渡す情報の扱いです。

承認を分ける仕組み

  • SQL を実行する承認と結果の値を AI に渡す承認は、別になっている。
  • 最初は、AI には結果の構造だけが渡る。グラフは、手元の画面で作られる。
  • 値を渡すときは、列や行の内容を確認する画面が出て、自分で許可する。
  • 許可しなくてもグラフを使った分析は続けられる。
  • 調査の流れは、ノートブックとして保存できる。
  • スライドには、「Review and approve the data to be shared with AI(AI に渡すデータを確認して、承認する)」という確認画面のイメージが示されていました。信頼と管理(AI が何を見るかを自分で管理できること)が、セッションで強調されていました。

まとめ

  • 今回のセッションで学んだことを3 点にまとめます。
    • 計算とストレージを分ける:Elastic Database は、共有ストレージの上に、書き込みと読み取りのノードを置く。2 ノードで HA を組め、読み取りノードを足して拡張できる。今は限定提供の段階。
    • データベースの中で AI を使う:MySQL AI は、ドキュメントにもとづく回答、AutoML、自然言語からの SQL 生成を、MySQL の中で使える機能群。GPU の環境は不要で、MySQL Studio からも使える。
    • AI に見せるものを決める:SQL の実行の承認と値を AI に渡す承認は別になっている。

おわりに

  • オープンソースの MySQL を選択した場合でも、大規模環境で使おうとするとコストと性能の両立が課題になります。今回のセッションの内容から、計算とストレージを分けて、読み取りノードを足していける Elastic Database は、その課題への 1 つの答えになりうると感じました。

  • また、MySQL AI で AI に見せるデータを自分で決められる点は、業務のデータを扱う現場で AI を使うときの安心につながると思います。

  • Oracle の AI というと Oracle Database が中心と思われがちですが、MySQL も Oracle の製品であり、AI の機能が拡充され続けている点は、大変魅力的だと感じました。MySQL は Oracle の製品のため、他のクラウドベンダーが提供する MySQL とは、使える機能に差があります。データベースの中で LLM が動き、GPU を別に用意しなくても使える点など、その差が差別化のポイントの 1 つになると感じます。