こんにちは、アイレットデザイン事業部デザイナーの武井です。
デザイン事業部では「inside UI/UX」をテーマに各メンバーの知見や学びを記事にしています。

これは何?

主に「表現」に力を入れすぎてしまうデザイナーに向けて
表現以外に力を入れることが、最終的な売り上げに貢献できるデザイナーへの近道かも!?。と気づかせてくれた、
ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法』の本紹介と啓蒙記事です。

デザイナー 表現を重視しすぎ問題

デザイナーの皆さん、デザイン制作時「素材と原稿はこれです」と構成要素を渡されて、それをいい感じのトンマナで仕上げる事でいい仕事したなーと満足していないだろうか?

最近では「デザイン思考」や「UXデザイン」などという言葉が一般的になり、デザインとは見た目の話だけではなく「設計すること」や「課題解決」全般を指す言葉となったが、
「デザイン=見た目に美しいアウトプットをほどこす事」という元来の表層的な部分にどうしてもこだわってしまうのはデザイナーの性なのかもしれない。

が、こちらの本冒頭でいきなりバッサリと切られる事になる。

Webマーケティングの初心者がクリエイティブを作る際には、いきなり「どう表現するか」を考えて、奇抜な表現方法を必死で考えようとする。
しかし、クリエイティブとは突飛な発想や思いつきで作るものではない。
むしろ、「ロジカルシンキング」に基づいて体系的に作るものである。
(本書の引用)

はい、そんな作り方全然ダメですと。

・デザインの表現を頑張ってしまうデザイナー
・オリエンされたことだけを情報源に、すぐに作業に入るデザイナー
・広告ってウザいからどうせ見てもらえないんでしょ。と思っているデザイナー
・難のある商品であってもいい感じのデザインをほどこして売ることに罪悪感があるデザイナー

そんな方にはとても面白い1冊になると思う。
上記すべて私に当てはまるので、とても面白い本だった。

表現が売り上げに貢献するのは10%

まず知らなければならないのは、クリエイティブの構成要素は以下の3つだということ。

「誰に」×「何を」×「どう」伝えるか

(どんな人に)(どんなことを)(どのように)

このうち「どう」伝えるかの部分(デザイナーがまず考えてしまう「表現」の部分ですね)が商品売り上げに貢献するのは10%に満たないと言う。
10%とはなかなか悲しい数字で、ここをいくら頑張ってもたかが知れているという事に打ちのめされた。

一般的にデザイナーの収入は低いと言われるが、売り上げにあまり貢献できていないとなると納得の数字となる。(そういえば、クライアントの課題を解決するコンサルの収入は高い)

逆を言えば「まだ伸びしろがある」とも言え、残りの「誰に」と「何を」を考えられることになれば、
我々デザイナーにはまだまだポテンシャルがあるということでもある。

「誰に」

・出稿メディアのセグメント機能を理解した上でペルソナ設計をする
※まだよく分かっていないので今回は割愛します

「何を」

・それはUSP(Unique Selling Proposition)「その商品でしか言えない強み」でなければならない。

USP 4分類)
①他社にはない便益を与えられる
②他社製品よりも高い便益を与えられる
③実績、権威性などの付加価値がある
④金銭的なお得感がある

「何を」の部分は依頼者から説明を聞いて作ることが多いのだが、そもそも担当者が「何を」の部分を間違えていたり、自社の強みに気づいていないことがあるため著者は自分で決める(見つける)ことが大事だと言う。
結果を出す人はここを決めるのに大半の時間を割いているとのこと。
また、「④金銭的はお得感がある」をUSPにするのは最後の手段にすべきだと忠告もあった。他のUSPが見つけられていないということであり、他社がすぐに真似できるので本質的なUSPにはなり得ないからである。

何かのデザインを依頼されて、その商品やサービスを「調べる」ということに時間を割けているだろうか?
お客さんが一番知っている。とお客さん任せにしてはいないか。
自分がクライアントが気づいていない強みを見つけれらることは早々にないかもしれないが、少なくともその商品・サービスに愛着がわき、より多くの人に伝えたいというモチベーションや、クライアントとの信頼関係構築においてよい効果をもたらすと思った。
まずは商品・サービスについて自分でも調べることを習慣化し、お願いされたことだけをするデザイナーを脱出したい。

「どう」

「何を(USP)」が弱い場合は表現方法で工夫するしかないのだが、前提としてどれだけ頑張っても弱い部分にしかならないことを忘れてはならない。

理由-1)仮に表現方法が当たっても、競合に真似されて終わる
理由-2)表現方法に工夫を凝らしても、「誰に」「何を」を外していると結局売れない

なので「どう」伝えるかの部分よりも、その商品でしか言えない、そのユーザーだけに刺さる「何(商品特徴)を」を発掘するほうが数倍重要と説く。

「認知度」「好感度」と「利益」は無関係

例として、そごう・西武が出稿した広告が紹介されており
「凝った表現が面白いとネット上で話題になっていたが、その広告によって売り上げが上がったという話は一切聞かなかった。」としている。

広告好き界隈では絶賛されている中、プロのマーケッターからは「こんなに広告に大金を使って、この会社は大丈夫なのか?」と冷めた目でみられていたそうだ。
その後、そごう・西武は売り上げ不振による売却が決まる。

西武といえば、1980年代の糸井重里氏のコピーが印象的な「おいしい生活」「不思議、大好き。」など、広告史にでてくるようなメジャーポスターが有名である。私も広告雑誌などで目にして知っていたし、その後もメッセージ性の高い広告を次々と出していた印象がある。

百貨店の長期ブランディングとしては機能していたかもしれないが、たとえ見た目のよいクリエイティブを作って「認知度」や「好感度」が上がったとしても「利益」には繋がらないと心得、表現にこだわり過ぎるのはほどほどにしよう。

そのうえで「伝わる」広告をつくるために

① 表示される媒体に適した内容にすることで「伝“わ”る」広告を

まずどの媒体に表示されるのか確認し、ユーザーがどんな意識でこの媒体を見ているのかを理解する必要がある。
そして状況に適した内容にすることで「伝える(一方的な情報発信)」ではなく「伝“わ”る」広告になると言う。

ex.)
・このメディアを見る時はどんなモードなのか?(朝の通勤時/夜リラックスしながら など)
・PC/スマートフォンなのか?
・高級通販情報誌/朝刊のチラシなのか?

② 文章では自分の意見を書いて個性化させる

個人的な視点が入ることで信頼感・親近感が生まれたり、商品イメージが湧きやすくなるそうだ。

少し意外なテクニックだと思ったが、人気のECショップである「北欧、暮らしの道具店」では、店主が「私はこう使っていますよ」と、商品の使用感や工夫を記事にして商品ページに載せたところ、その商品が急に売れるようになり今や絶大な支持を集めるECショップとなっていった。という逸話を思いだした。

文章が個性的か?という観点より、売り手の思いは滲み出てしまうものだということであろう。
よい商品を伝えたいという想いは伝わるものであり、ありきたりな文章しか書けないとしたらありきたりな商品なのだと伝わってしまうのだ。

③ 最初が大事

ファーストビューでの印象と言葉が肝心という話。
文章は最初の1〜2行でユーザーの心をつかめないと、その後にどんな良いことを書いても読まれない。なので絶対に伝えたいことは最初に伝えること。

広告は、表現より商品価値とターゲットのマッチングが全て

最後にとても響いた著者の考え方を紹介させてほしい。

「広告はウザくない」

ターゲティングがきちんとできており、ターゲットに有用なUSPが設定できているとすれば、広告は「ウザいどころか有用な情報」となり得る。
もしも「ウザいもの」になっているとしたら、ターゲットの設定がずれていたり、対象商品の価値理解ができていない可能性がある。

目から鱗である。表現より、商品価値とターゲットのマッチングが全てなのだ。
広告はウザいという認知が広がってしまったのも、自己満足的に表現にこだわった制作物を、引っ掛かればラッキーくらいの発想でやみくもにバラ撒いていることが一因かもしれない。

プロのマーケッターの世界では「“調べる”が9割9分5厘6毛」という考え方をするそうだ。
デザイナーもこの“調べる”にもっと重きを置かねばならない。
まず商品理解をし、ターゲットに共感する。そしてその人たちに向けて「この価値を知って〜〜〜!」
と想いを伝える手段として「どう」の表現の部分を使えばいいのだ。

そうすればきっと人の心を掴めるクリエイティブが作れるはず。
そしてそれは売上にも貢献する上にウザい広告にもならないという、だれも不幸にしない平和な世界。

なんとも希望に満ちた話である。
デザイナーの皆さん、Webマーケティングの世界って希望があります。

参考書籍

『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法』木下 勝寿 (著)
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