アイレットのデザイン事業部でディレクターをしているやなせと申します。
ディレクターという仕事柄、出来上がったデザインをお客様へ提出する前に確認する役割を担っており、配色なども含めて確認しております。
私事ではありますが、昨年の年末に叔母の家に行った時のことです。何気ない話の中で、従兄弟が色覚異常だということを打ち明けられました。
大学で色覚異常について学んでいたこともあり、親族に色弱者がいる自体には別段驚きもしませんでした。
どちらかといえば、小学・中学あたりで行う健康診断で発見されず、後天的の中でも特に遅くに発症したと考えられることに驚きました。
そんな私が今この仕事をしていて、ユニバーサルデザインについてお伝えできることを記していきたいと思います。
色覚異常の人口は少なくない
何年も前に通っていた大学の講義で、色覚異常は日本人男性の約5%、女性でも約0.2%存在すると習っていました。これは1979年に行われた調査でありますが、現在も同じくらいの割合で存在すると考えると、20人に1人くらい、学校のクラスに1〜2人は存在する計算となります。
近代の研究では、「自画像」で有名な画家のゴッホもおそらく色覚異常だったのではと推測されています。
ゴッホの絵は筆のタッチが独特とされていますが、配色もまた少し独特です。その絵を色覚シミュレータを通じて見てみると、よりゴッホが有名になった理由が理解できると思います。
認知されにくい・配慮されにくい障害である
色覚異常は他人から見て外見的な変化がないことが多数です。さらに、色以外は正常に見えていることが大半なので日常生活に支障がないことが多いのですが、何気ないもので大変苦戦するケースがあります。
具体的には、
- 鉄道の路線図や地図などの色分けが分かりにくい
- オレンジの街灯と信号機の赤が見分けにくい
- カレンダーの祝日の赤色が分かりにくい
などです。
引用元:具体的に色弱者が困ることは?|北海道カラーユニバーサルデザイン機構
何気ないものを掲載しましたが、実際には上記以外のシーンでも色の判別に苦戦していることでしょう。
そんな彼ら彼女らにも配慮ができる、それがユニバーサルデザインの一つです。
色覚異常に対するアプローチ
正常色覚の方も世界観を損なわず、色弱者へアプローチし共存できる方法がいくつかあります。
間違えやすい色は塗りに柄を加える
よく取り上げられるのは東京近郊の路線図です。都内は様々な路線が入り組んでいますが、色により区別されています。
正常色覚にとっては分かりやすいのですが、色覚正常にとっては色の交差を繰り返す路線図は特に分かりにくくなっています。
例:
そんな路線図では、塗りに柄を加えることで色が似通っていても区別できるようになります。
色だけの区別ではなく、文字や形状も合わせて区別する
よくあるカレンダーの表現として、日曜日と祝日は赤文字で表示していますが、1型色覚にとっては黒(特に少し灰色の黒)との区別がつきません。
そこで、祝日の区別をつきやすくするために背景に赤丸、白文字を追加して形状から変えてしまう。
更に、「昭和の日」の文字を追加することで祝日であることが分かりやすくなりました。
成果物を色覚シミュレータで確認し、調整する
近年、色覚異常への認知が広まり、各種OSやアプリで動作するシミュレータや補助ツールが登場しました。
私はよくFigmaを使うので、確認する時には2種類(同名でややこしいのですが)のプラグインで確認したりします。
上記以外にも、PhotoshopやIllustratorにもプラグインが存在します。
以上は一例で、デザインを施す側にとっては様々なアプローチが存在します。
普遍の中にある特殊を表す、もしくはそれぞれが独立したものを区別して表す場合には、色以外も合わせて変えるとより共存できる未来が見えるはずです。
色覚異常は「個性」
ユニバーサルデザインは上記のような普遍的なものだけが必要とされているわけではありません。
例えば、Nintendo Switchの人気ゲーム「Splatoon」では、色覚サポートモードとして、区別しやすい色を固定で使用できるモードが備わっています。
老若男女問わず存在する色弱者ですが、色覚異常はいわば「個性」だと、大学の教授が仰っていました。
個性だと捉えると、彼ら彼女らの色覚も、とても素敵だと思いませんか?